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遺跡の目  作者: 朝倉新五郎
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異邦人

 女性の話では、その父親が自分の論文に興味を持っていたらしく書斎の片隅に置いてあったという。


 「ずいぶんと酔狂なおやじさんだな」と男は女性の話を聞いていた。


 「もし貴方の研究が十分に理解されていれば、発掘されるべきではない遺跡はかなりの数にのぼるはずです、この街の郊外で発掘中の遺跡ももしかすると」


 「いや、あの論文は否定されたんだ、多分に常識的な意見でね。言い返すにも選べる言葉は無かった。


今でも学者連中を納得させるだけの証拠は見つけていないよ」女性の言葉を遮るように男は否定した。覆しようの無い程度の強さを持たせて。


 「わかりました」女性は諦めたかのような口調で話を閉じようとした。が

 「でも、一つだけ教えて下さい。運命の外側とは、時間の外側とは何を指しているのですか?」すがるような目で口から出る問いは一言一言を間違えないようにゆっくりとだった。


 すでに読んでるのならわかるだろうに、他の何を知りたいと言うのか。


この世界この時間そしてこのろくでもない人生にも外側が在り、何かしらの存在がゲームのように遊んでいるだけだ。そして時折それらは知ってか知らずか落し物をする。


権力者の下へ辿り着くように。それだけの話しだ。


 「書いてある以上の答えは俺にはわからんよ。新しい発見に酔って馬鹿な研究に無駄な時間を掛けて屑のような論文を出しただけだ。どうせ酔うならコイツで酔いたいね。」男は黒ビールのジョッキを女性の目の前に突き出し「話すことはない」と不機嫌そうな態度を取ってみせた。


 こういった輩の執着心の強さは昔の自分と同じようにどうしようもなくなるまで失われない。


面倒なことなどもう忘れたいと思っていたのに。

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