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遺跡の目  作者: 朝倉新五郎
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深まる謎

 長い休暇も終わり、積もっていると思っていた問題も片付けた男は早々に教授の研究室に向かった。詳細はブラハムから聞いていたので古代の案件に集中して掛かれる、と気分良く道を急いだ。

 研究室に到着すると、やはりほとんど進展しておらず各国からのFAXが大量に届いており、資料の仕分けのためもう一人助手を雇ったようだった。

 教授は男の顔を見るなり「おぉ、もう済ませてきたのか?レトロガ君から話は聞いていると思うが、進捗は殆ど無くてのぅどうしたもんかと考え中じゃよ」と世紀の発見かも知れぬ古代の遺物を前にして屈託のない笑顔で出迎えてくれた。

 「さて、プライベートの報告は後で話すとして、だ。少々進展と言うか、恐らく君の分野に関する謎が出たんじゃが調べてくれるかの?これじゃ。」と小さな石を渡された。

 男は「前の2つと同じ大きさですね、素材は珪岩?これはどこから?」と教授に尋ねると「革袋に金や銀と混じっておった」と答えられた。

 「金銀が出たんですか?一体どこから?いや、しかし・・・」と男が考えていると「そうじゃな、こちらでも謎が一つ増えたことになる。アメジストとラピスラズリもな。」と教授は答えた。

 「この一団の出自はエジプトでしょうか様式にかなり疑問が残りますが。」男は石を眺めながら話を続けた。

 「この辺りや近くの国家の者達ではないと考えておったが、交易に関係しておるかもしれんな。可能性としては省いていたがエドム人かもしれん、ペトラからもそう遠くないしのぅ。」確かに近いと言われれば近いだろう、古代人の移動距離を考えれば遠いとは言えない。

 教授は「さて、とりあえずはこんなところじゃ、その石と後二つ。調べてみて何かわかったら報告を作成してくれれば良い。今のままじゃと資料にすら残せんからの。」と、その不可解な石を預けられた。

 男は「わかりました」と石をポケットに仕舞い、棺の文様と格闘中のブラハムのところへ行った。

 「なんだ?もう説明は聞いてきたのか?」とブラハムに訊かれ「ああ」とだけ答えてブラハムの作業を観ることにした。視点を変えれば何かに気がつくかもしれない。

 男は旧友ととりとめのない話を続けながら、ふとブラハムの手元をみて気がついた。ルーペで見ている箇所に違和感を感じたのだった。

 おい、そこ・・・と男が指差すと、ブラハムは男の方へ振り向き「どこだ?何か気が付いたのか?」と聞いてきた。

 「鏡面模様になってない。微妙に違ってるぞ?」と棺に近づき「ここだ。先の棺はこの部分が無かったんじゃねぇか?比較してみろよ」ブラハムに指摘した。

 「確かに微妙な違いだが貴重な発見だ。何故気がついた?」と訊かれたが「何故か気になっただけだが、お前が気付かないことに気付くのはおかしいよな?」とひとりごとのように呟いた。

 「取っ掛かりになるかもしれない、これは重要な発見だな。他にも無いかもう一度精査してみよう」とブラハムははしゃぐように言った。

 「気が済むまでやりゃいいが、無理はするなよ?」と男は言ったが、ブラハムが徹夜することはわかっていたので「それじゃ俺は俺でやることがあるんで、今日のところは一旦宿に戻ることにするぜ?かまわんだろ?」と言い残し、3個目の石を前の2つと比較するためアパートに帰ることにした。


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