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遺跡の目  作者: 朝倉新五郎
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発掘の日々に

 それは妙に心惹かれる石だった。


 男は遺跡発掘の作業員をしており、紀元前5世紀と思われる墳墓を掘り返す、現代でこそ科学調査と呼ばれるがしょせんは墓泥棒の片棒を担ぐような肉体労働者である。


 あと5メートルも掘れば目的の遺物が出てくる、とはいってもすでに10メートル以上は掘っているのだが、教授とか博士とか呼ばれている連中は時々作業の進捗状況を見に来ては汗まみれの男共を無視し、地層の変化がなんだのと訳の分からぬことをほざいては帰っていく。その繰り返しだった。


 その日の終わりに男は土の中からよく見てきた石のかけらを掘り出した。


 いつもと同じただの石だったのだが、何故か男には運命めいたものを感じさせるような奇妙な感覚をおぼえ、土砂を引き上げるバケツには放り込まずそっとポケットにしまった。

 その行為は当たり前のようであり、また奇異な動作のように男には思えた。


 その晩に男はいつもの酒場「辺境亭」へと入っていった。やはり一日の疲れを拭い取るには酒に限る。

 少し生ぬるい黒ビールを数杯とクライルジャムをたっぷり塗ったパン、それと分厚目のステーキを時間をかけ胃に流し込む。明日の作業のためには十分なカロリーだ。


 ふと男はポケットに入れた石のことを思い出した。くしゃくしゃの紙幣と数枚のコインにまぎれて出てきたそれを見ると、やはり何がしかの感情を刺激される。不思議というより恐怖に似た感情。


 そんなことより明日の仕事だ。いや、今週の仕事か。

 その後はどうするかな、次の穴でも掘るか、他の仕事もあるがやはり穴堀りが向いてるな。


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