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初恋で恩師で上司な彼  作者: 洟 華夏瀧
初恋で恩師なアナタ
8/21

第八話 ご学友様はやっぱり“先生”でした

今回もイジメ表記が冒頭から出ます。辛い方はスルーしても構いません。但しその分後半は極甘テイストを目指してみました。

「あっれ~?天音さん随分派手なケース持ってるじゃん?」

「くすくす……“装飾”がなかなかおっしゃれ~」

「ホント。良い趣味してんじゃん?さっさとソレ持って音楽室行ったら?」


……油断したか。

あきらかに蹴とばしたであろう後が残るあたしのロッカー。ご丁寧に鍵も粉々に壊されていた(……技術室から金槌でも勝手に失敬させたんだろうな)

“彼女達”は幹部なのであくまでも指示するだけ。従って、あたしのロッカーを壊したのは会員の誰かで、“相棒”のケースに落書きをしたのも会員の誰か。

多分複数による犯行だろうな……


黒いケースに、ご丁寧にも目立つ白色で書かれた言葉は『日本から出ていけ!!』と『いい気になるな白熊女!』。


“相棒”は無事だったからまだいいけどね……ってか、自分達は何もせずにあたしにイヤミを言うだけか?どこまで美味しいとこ取りしてるんだろう……

あたしは半分呆れながら、煩い三人娘を無視して音楽室に向かった。

あの日……ファンダンをデュオした日…から1週間、再びあたしの指導日がやってきたのだ。


「今日は確か大学の用事とかで、いないんだよね……」


そう呟いていつの間にかたどり着いた音楽室のドアを開けて中に入った。

まだ後輩達がいない部室はガラン……としていて、あたしは鞄の中から楽譜を取り出したのだが……


「っ……!!」


墨で真っ黒に塗りつぶされた楽譜。今日、みんなで合わせようって言っていた『A列車で行こう』と『sing sing sing』。


「……楽譜って只じゃないんだぞっ!……」


あたしの両目からこらえ切れずに零れ落ちた滴で、真っ黒な楽譜がにじむ。


「……もう、向こうに行っちゃおっかな……」


所詮日本にいればあたしはどうしたってこんな目にあうんだ。

それなら、まだ入学試験を受けていないけど早めに英国に行って向こうで受験しても良いんじゃないか……。


「あ~~りゃりゃりゃ。これはまた派手にやられたね…」

「……………」

「楽譜の価値がわかってない人間っているんだね。困ったもんだ」

「……………」

「どうしたの?君は口が聞けないのかな?天音さん、いや、紫苑ちゃん」


正直どうしていいかわからなかった。

どうして貴方様がここにいるんですか?!大学に用事があるんじゃなかったんですか?


そう言いたいのに顔があげられない。……だって、涙を見られたくないから……

いつまでも俯いたままのあたし。

すると…


くしゃ……なでなで…


突然頭を撫で始めたご学友様。そして頭上から降り注がれたお声は……


「ね、顔をあげて?」

「……………」

「それと、“お背中ピン”もしようね?」

「……………」

「何より、人が話しかけてきたらその人の方を向く。そしてその人の目を見る事!ほら」


ぐいっ


「っ………!!」

「あ~あ。可愛い顔が涙でぐしゃぐしゃだ。」


スッ…。ちゅっ。ペロっ


「~~~~~~~~っ!!」

「うん。しょっぱいね」


いいいいい今、何があったの?やけにやわらかい感触が、まままま瞼にあったと思ったら

ほほほほほっぺに『ヌメ』って!!!


「ごっ…ご学友様っ!何をなさっ……」

「っぷ!何それ!紫苑ちゃんは俺の事そう呼んでたの?」


くっくっくっくと身体をくの字に折り曲げて笑い転げるご学友様…いや…飯崎先生。

ヒロキ様が無表情な分、この方が周りを和ませていらしたのだろうか……

確かにさっきまであたしの中にあった“逃走願望”がさっきのショックで綺麗さっぱりなくなっている。

そんなあたしの前には、けたけた笑いながら「これは僕が預かっておくね」と言って真っ黒楽譜を取り上げる飯崎先生。


「部活の前に、ちょこっとだけ“先生”と話そうか?」


結局あたしは、何時まで経っても一人も入ってこない部員に、変だと思いつつも先生に促されるままに隣の“音研”にケースをかかえたまま入った。



**********



「ね、天音さん…いや、二人きりのときは名前で呼ぶよ?

紫苑ちゃん、君は別に疾しいことなんてしてないんだからもっと堂々とするべきだよ?」

「え?」


音研にあるイスに腰掛けて、ご学友様が御自ら入れて下さった甘々なホットカフェオレを飲んでいるあたし。

ここにある“喫茶セット”は、ヒロキ様の要望で彼が勝手に持ち込んだものらしい。

ご学友様は慣れた様子でパイプイスを組み立てるとあたしの隣に座った。


うん。相変わらず脚がはみ出してるよ。


「こんなに可愛い顔を下を向いて隠すなんて勿体無いと思わない?」

「………全然可愛くなんてないです」

「俺は十分可愛いと思うよ。それに、背筋もきちんと伸ばして歩こうね?」

「………だって、あたし…」

「モデル体型って言われたことない?」

「そっ…そんな!あたしなんか「ソレだめ!」って?……」


飯崎先生は突然あたしの言葉に割り込んだかと思ったら、人差し指をたててあたしの顔の前でふった。


「自分で自分を卑下しちゃだめだよ?」

「……ごがくゆ…じゃない…飯崎先生…」

「くすくす…もしかしてソレって俺がヒロの友人だから?でもさ、そんな変な呼び名じゃなくて、二人だけの時は颯馬ソウマって呼んでほしいなぁ」

「めっ…滅相もないですっ!謹んでご辞退致しますっ!」


そんなあたしの返しに先生様イケメン様ご学友様は「今はまだ……ね?」と意味深な台詞をおはきになられた。

……結局“相棒”のケースも中身ごとご学友様に持っていかれてしまい…


「これも俺が何とかするからね?大丈夫。明日楽譜と一緒に返すから」

「//////っ…………!!////////」


ピロリロリーーーーーー。

シオンはソウマの“チャーム”に5000のダメージを受けた。


ご学友様の瞬殺スマイルを裸眼で見てしまったあたしの頭の中に、RPGではおなじみのフレーズが流れたのだった。


腹黒颯馬にいつの間にか伊達眼鏡を取られている事に気が付かない紫苑です(笑)

少しは甘々になったでしょうか?

ちなみに部員達は“後輩ちゃん”の命により、廊下で静かに待機中です。(二人が隣室に移動した事に気づいていない為……笑)


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