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初恋で恩師で上司な彼  作者: 洟 華夏瀧
初恋で恩師なアナタ
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第三話 先に立たないから後悔です

当分紫苑の高校時代の話が続きます。

「し~おんせんぱぁ~い?どっこに行かれるんですかぁ?」

「……今回だけは見逃してっ!」


放課後、さっさと帰るべく廊下を急いでいたあたしの背後から“怒り”を含んだソプラノボイスが聞こえてきた。


「却下です!さ、貴方達、先輩を捕獲しなさい!」

「「「ラジャー」」」


後輩ちゃんの命令直後、掛け声とともにあたしを担ぎ上げるぼくちゃん達。


「ちょっと!!男三人がかりは酷くない?!」

「だって先輩モデル体型なんだもん。さ、行くわよ?」

「「「イエス・マム!」」」


お前らどこぞの軍隊か?何そのこたえ方!

しかも声をぴったりと揃えて……いつの間にどんな練習してんだか……


後輩ちゃんこと、現吹奏楽部部長は成績が学年1位な才女であるばかりでなく、あたしと真逆なルックスだからか学内に親衛隊なるモノが存在する。

今あたしを神輿のように担いでいる“三匹”がその幹部らしい(幹部になるのと引き換えに吹奏楽部に強制入部させられたらしい)


今日は確かに“私が指導する日”だよ?

でもね、今日はあの御仁が部員にお披露目される日でもあるんだよ?

出来れば、いや、極力あのお方に関わりたくないんだよ!あたしは!!


だから、昨日メールで指導の日を来週のこの曜日……ご学友様は大学に用事があって部活に出られないらしい(←ヒロキ様情報)…に変更させてくれとお願いしたのに、ものの数秒で返事が返ってきたかと思ったら…


『不可』


何だその短い返事は!

ってか、せめて理由を聞いてはくれんのか?!

……まぁ、喩え聞かれてもまともに答えられないけどさ……

だから、今日、強行突破しようと思ったのに……後輩ちゃんのいけずっ!


「紫苑先輩、“相棒”はいつものところですよね?」

「………はい」


彼女はそう言うと、あたしのロッカーからサキソフォンをケース毎取り出すと嬉々として音楽室に向かったのだった。



*********



「ん~と、ちょっと音が下がってないかな?」

「はい!」

「貴方はブレスの位置をちゃんと確認してね?」

「ありがとうございます!」

「…そこ、もすこしテンポあげてみようか?」

「わかりました!」


自分の担当楽器以外にも、部員一人一人の音や演奏の様子をチェックし、指示をする。


因みに、あたしだけじゃなくて、引退した3年が皆同じことをやっている。但し、既に引退している為、当番制で指導しに来る日を決めているのだ。


「先輩、折角だからアレやって下さいよ」

「え?」

「俺も久しぶりに聴きたいっす!」

「私も!」


そう言って後輩君があたしに渡したのは銀色のトランペットで……


『紫苑先輩の“ファンダン”が聴きたい!!』


誰かが合図したのかピタリとそろった後輩部員達の声。

……実はこの銀のペットは、かつてヒロキ様とご学友様率いる吹奏楽部が全国優勝した際、その記念にと区からプレゼントされた逸品らしい。

お兄の演奏を聴いたあの日、あたしはヒロキ様に「あたしも吹奏楽やりたいっ!」なんて、命知らずな事を言ってしまったのだ。

それから転校するまでの数か月と、英国に行ってからもサマーホリデーなどの長期休みの時は強制帰国させられ、ヒロキ様直々の特訓を受けた。

ただ、向こうのジュニアハイスクールでもブラスバンド部に所属はしていたけど、顧問の先生からはサックスを勧められた。

その為、こっちに帰ってきてこの学校の吹奏楽部に入部してからも、担当楽器はサックスにしていたのだ。

しかし、部室を掃除している時に偶然それを見つけて、気まぐれに吹いていたら、いつの間にか後輩達が聴きつけて……コンクールやコンサートでは絶対に演奏しないというのを条件に、あたしが気が向いた時だけ演奏する事を約束したのだった。


「暫くぶりだから音がくるってるかもよ?それでも良い?」

『いいで~す♪』


これまた見事に調和した返事が返ってきた。

コレを構えると、あの、かつての地獄のスパルタレッスンを思い出す。

でも、後輩達の可愛い反応に気分を良くしていたあたしはイントロを奏で始めた。


♪♪♪♪♪♪♪


軽快なリズムで始まる出だし。シーンと静まり返る部室内。

響き渡るのはあたしの吹くトランペットの音色だけ…。


ああ!この緊張感ってくせになるよね?


そんな事を思いながら演奏していたら……


♪♪♪♪♪♪♪♪


突然誰かの2ndペットが聞こえてきたのだ。

あたしがたたきこまれた“ファンダンゴの1stペット”はお兄独特の癖とアレンジがある為、楽譜を見ただけでは合わせる事が難しい。

おそらくプロだって相当な練習が必要だろう。


………コレが出来るペット奏者って“この世でたった一人”しかいないじゃん


あたしの推測通り、ご学友様が“マイ・トランペット”で演奏しながらこちらに向かってお歩きあそばされているのだ。


この演奏、確実に“ヒロキ様仕様”だってバレてるだろうなぁ…何て誤魔化そう…


次で漸くご学友様のフルネームが出る予定です。いや、出します!

自分のトランペットを「マイ・トランペット」と呼ぶのかはわかりません。作者、吹奏楽を聴くのは大好きですが所属した経験はありません。

だからって「マイ・ペット」はおかしいですよ…ね?


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