第十七話 悪鬼VS剣闘士Ⅱ
氷雨の身長は百七十九センチだ。人の中ではそれなりに高いが、昇はそんな彼よりも身長は高く百八十六センチの巨漢だ。
筋肉も見かけだけなら、昇のほうが大きいだろう。
腕の太さが違う。
また、胸板や太腿の太さも、氷雨よりか昇のほうが大きかった。
ならば、氷雨は筋肉量で昇に負けているのか、と問われれば、そうではなかった。
氷雨は今日のために身体を絞って、ほんのりと脂肪を残している。それは氷雨が考えるに、最もスピードが出て、パワーも出るベストコンディションに身体を調整したのである。
逆に昇はそうではない。パワーは氷雨よりもあるだろうが、スピードは数段と落ちているだろう。昇は確かに筋肉量も多くて腹筋も出ているが、氷雨のように脂肪は落としていない。
いや、冒険者としての行持で、脂肪は落とさないようにしていた。
冒険者は、基本的に迷宮に潜る際に、食料は全て自分で持ち込む。水も同じだ。なぜならモンスターは死ぬと結晶石だけ残して、他には何も残らないからだ。
だからダンジョンに置いては荷物などを持つサポーターが重要になる。
しかし、だからと言って、いつも万全に戦えるかというと、そうではない。むしろ連戦ばかりで休憩を挟めないことも多い。
従って、冒険者は脂肪が多い者が多かった。ロードレーサーのように大きな背中にエネルギーを貯めなければ、数時間という長時間の冒険に耐えられないのである。
それに比べて氷雨は、長時間の戦闘と見ても、数十分しか耐えられるスタミナしか蓄えていない。必要ないからだ。人と人が一対一に戦う場合に置いて、小一時間も戦うなんてことはありえない。多くても数十分程度だろう。
それよりも先に集中力が落ちて、どちらかが先に大きな失敗をするからだ。
よって、今日の身体の差は、格闘技者と冒険者の違いが顕著に現れていた。
「――はあ」
氷雨は溜息をついた。
まだ完成していない技術ではあるが、『浮雲』を使おうとして、体全体をいつもの灰色のマントで隠す。相手には顔しか見せない。
氷雨は相手を観察する。
隙を、探す。
だが、昇には隙が無かった。
雪のように半身になって、盾で身体の殆どを隠しているからではない。
むしろそれに比べると構えとしては未熟だ。身体は前を向いて、右足を少しだけ下げる。そして胸元を大きな盾で隠す。
その盾は円形で、ラウンドシールドと呼ばれる盾だ。もちろん、金属製だ。殴ればいたいだろう。だが、その大きさは雪と比べると大きい。広い昇の胸を隠すほどはある。重たい盾を持つほどの筋力が昇るにはあるのだろう。
また胸や腰などの重要な位置だけに、鉄製の鎧が付けられている。重装備では無いのだが、急所を狙うのを一困難であった。だが、兜だけは付けていないようだ。
「……待ち、か」
氷雨は攻めてこない昇を見て、典型的なカウンタータイプの戦士だと思った。
なら、攻めるしかない。
元より、氷雨は攻めるのが得意だ。
先手必勝。体勢を低くして、昇まで一瞬で距離を詰めた。
マントを両手で大きくたなびかせて、相手の視界を奪う。そして相手から見えない位置である後ろから、大きく右足を回した。
胴回し回転蹴りだった。
「はあっ!」
だが、それも昇の盾が防いだ。
スキルが、発動していた。
自動防御だ。
昇が持っている“名”の剣闘士専用スキルだ。
また、続けざまに昇のスキルが発動。
抗受。
足を、弾いた。
氷雨の身体が右足から浮いた。
それと同時に、氷雨は左足で大きく飛んで、後ろへと下がる。
昇はそんな氷雨を追いかけるように盾で体当たりをした。氷雨も重心を落として、左肩で防ぐように迎撃をする。だが、体重は昇のほうが重い。氷雨のブーツが土の上を引きずる。昇のグラディウスが畳み掛けるように氷雨へ。氷雨はそれをあざやかに少しだけ下がって、毛の先ほどの距離で躱す。すぐに反撃するように地面から伸びるような上段蹴り。これも昇は盾で見事に受け流した。
また、昇のスキルが発動する。
今度は反撃だ。
盾で防ぎながら、鉄の刃が氷雨の顔面へと積んだ。氷雨は、右差しをすぐさま地面につけて、今度は左足を上げる。前蹴りだ。見事に開脚した氷雨のブーツと、昇のグラディウスを下から上へと跳ね上げた。
小気味のいい金属音。
そして、昇は氷雨の力を利用して、今度は氷雨へと剣を落とす。渾身の唐竹割りだ。
氷雨はまた右足を回転させて威力と早さを上げて、足の裏でグラディウスを受けた。
また、金属音。
拮抗、した。
氷雨のブーツと昇のグラディウスが。
お互いにその攻撃が一歩も惹かぬことを知ると、両者ともがすぐに後ろへと下がった。
「金属、ですね。そのブーツ――」
すぐに昇るが相手の戦力を確認した。
何度か盾で受けたから、また先程の攻防に置いて異常な氷雨の攻撃の重さを感じ取っていた。
「ああ。足裏に仕込んでいるんだ。いい小細工だろう?」
氷雨は顔が笑っていたが、内心は冷や冷やとしていた。
やはり、『浮雲』から始点となって発動する技は通用しないと確信する。自分のような間合いの誤魔化しでは、昇は全て受けきっていたからだ。
これでは、まだ駄目だ。
もう、浮雲に頼るのは止めよう、と氷雨はマントから両腕を出した。
攻撃の手を広めた。
昇はそんな氷雨を気にせずに、間を詰める。
今度は昇が攻撃をした斜めからの袈裟斬りだ。氷雨はそれを掻い潜るように、より昇へと近づいて、ガラ空きの鳩尾へと左足の膝で突き上げようとしたが、それも左手が大きく伸びて盾が防いだ。氷雨は膝からの痛みで眉根を潜めた。動きが一瞬だけ止まる。その隙を、昇は見逃さない。昇は左手を氷雨の膝から守るために大きく伸ばし力を利用して、身体を反転させる。その勢いのまま、裏拳のようにグラディウスの大きな柄頭が氷雨を襲う。氷雨は身を固めた。ダメージは減るが、衝撃は無くならない。顔を歪めたまま、昇の首を片手で取った。氷雨は首を前方に押しながら、『驟雨変形内股』を行う。横に流れるように、昇は頭から草原の上に落ちた。昇は脳がぐらぐらと揺れた。
だが、その間に、氷雨は重い一撃を二つも貰っていた。まずは盾で胴体を殴られ、グラディウスで太腿も強打されている。ダメージの総量としては、氷雨のほうが多いだろう。
だが、ダメージが少なくとも、地面に倒れている昇はまだ脳震盪でまともに動けない。逆に氷雨はまだ動ける。氷雨がそんな昇を見逃すはずが無かった。
右の拳を大きく振りかぶって、無防備な昇の腹部を狙う。顔面は硬いので、拳が壊れる可能性があるので安定して相手に損傷を与えられる場所を狙ったのだ。
しかし、昇の大きな身体と地面に挟まれた左手が、まるで彼の意志と関係がないように動いた。
スキルが、発動する。
――オートガード。
氷雨は盾を殴ったためか、拳を痛めた。
そんな氷雨への追撃のスキルも発動した。
――カウンター。
昇が草原に横たわったまま、豪腕が振るわれた。スキルアシストで、筋力も増加した技が、氷雨の脇腹を横薙ぎにする。だが、それは真剣ではない。氷雨の胴は切れない。だが無防備な氷雨を数メートルも吹っ飛ばした。
「……その程度かよ?」
氷雨は強気に言ったが、脇腹を片手で押さえるように立ち上がる仕草が昇の一撃がいかに強烈だったかを物語っている。そのマントの下の部分は見えないが、おそらく大きな一本の痣になっているだろう。
「……兜も、被って来れば良かったです。素手なので、少しでも身軽にしたのは間違いでしたか」
昇も、剣を持った方の腕で頭を押さえながら呟いた。その足取りはまだ脳震盪が治っていないのか、ふらふらとしている。
両方共まともに動ける状態ではなかった。
そして、先に体勢を整えたのは氷雨だ。
深く息を吸って、ゆっくりとまるで地響きのような声を出す独特の呼吸法で、内部から肉体を戦えるように戻す。
すぐに昇へと近づいた。
下から上に体を飛んで、左足を天高く上げる。もちろん、フェイントとして、左拳を握ってわざと体から隠すように動く。昇は氷雨の素早い動きに翻弄されていた。まだ目は拳に引きつけられて離さない。
氷雨は決まったと、口元を嬉しそうに歪めた。
――踵落とし。
だが、それも昇の盾が防いだ。
スキルが発動したからだ。
氷雨は見ている。昇の目が自分の踵に全く向いていないことを。それなのに、昇が防いだことに対して呆気にとられた。それも今回だけではない。以前にも一度、人体では不可解な行動を繰り広げている。
そこで、氷雨は姉の言葉を思い出した。
――昇君はスキルでね、オートガードを持っているの。グラディエーター特有のスキルね。これは相手の攻撃に対して、体が勝手に盾で防いでくれるらしいわ。
ということは、氷雨がどれだけ相手の視覚外から攻撃をしようが、あの盾に防がれることになる。
そのことを自覚した。
だが、後悔をしてももう遅い。
昇のスキルが続けざまに発動。
パリイ。
氷雨は空中に体が浮いて、昇は頭上高く剣を振り上げた
だがスキルはそれだけでは終わらない。
――四つ目、覇断。
昇の必殺技だった。
ここぞという時に使う技だ。
それは振り下ろしにしか効かないという使い勝手の悪いスキルであるが、一振りだけ筋肉アシストでスピードとパワーを一般的なスキルよりも格段に上げるという隠し技だ。
氷雨の身体はもう地面へとついたが、これまでとは違う圧倒的な早さで襲ってくる刃を避ける事は敵わない。また足が地面へと完全についており、それを上げて防ぐことも敵わない。
だから、もう使い物にならない右腕で防いだ。
それは前腕から折れ曲がる。
氷雨は久しぶりに骨が完璧に折れた痛みを耐えるかのように、歯を悔いしめて拳を握った。それを昇るまで近づけるとご丁寧にオートガードのスキルで、盾が近づいてきた。そこで、拳を止める。盾にぴったりと拳を付けて、思考停止で烈風を行うが、やはり姉が事前に行っていたとおり、発動する前に盾で弾かれた。
それと同時に、また昇のスキルが発動。
カウンター。
盾の外から飛んでくる刃先を氷雨は後ろへ飛ぶように避けて、ゆっくりと息を整えた。
「……それにしても……『浮雲』、あいつに使ってもあまり意味が無いぞ。ちっ、本当に無駄な時間を過ごした」
そして氷雨は悪態をつきながら、一瞬だけ姉を睨んだ。
『浮雲』は相手の経験から間合いを錯覚させて、相手の隙へと攻撃する技だ。だが、昇はどうやらどれが虚の攻撃で、どれが実の攻撃かなんて、頭でも経験でも、ましてや目でも判断していない。それは全てスキルがしてくれる。
もし『浮雲』が完成していたら、オートガードを剥がして、スキルを騙して攻撃が通じたのか、と氷雨は一瞬だけ姉を信じるような気持ちになるが、どちらにしても意味はない。自分は『浮雲』を完璧に行えないし、不完全な『浮雲』では昇には通用しない。
氷雨はそんな言い訳をするような思考をすぐに捨てて、一陣の疾風となった。
氷雨は右足を上げてハイキック。
昇の盾に防がれる。
今度は左足を上げてハイキック。
それも盾に防がれた。
まだ、氷雨は回転力を上げた。右の足をハイキックから盾の上を滑るように地面へと下ろし、今度は左足を後ろ回し蹴り。それを防がれてパリイされると、その推進力を利用して、今度は逆方向にギアを上げて、左拳を握った。それをフックで昇のこめかみを狙う。
氷雨はこれも防がれると踏んでいたのだが、昇は一枚上手を行く。頭を逸らして氷雨の攻撃を躱したのだ。全力の一撃を躱された氷雨は、次の行動に移りがたい。
昇はそんな氷雨を前蹴りで、距離を測る。
昇は前へと大きく踏み出して、スキルを発動する。
覇断だ。
氷雨はそれを何とか蹴りの勢いを借りながら、紙一重で下がりながら避ける。
今度は昇が覇断の勢いによって前のめりに体重が偏り、一瞬だけ氷雨に反撃のチャンスが生まれた。
氷雨が狙ったのは、盾でもガードできないような技だった。身を大きく飛んで、相手の剣を持った右腕に絡みついて、上腕部を自分の両脚で挟んで固定する。同時に両手で掴んだ小手返しのように横に捻って、身体を大きく捻る。
『竜巻』だった。
だが、昇はそれを耐える。
地面に投げられない。
大木のような両足で踏ん張った。
氷雨はそんな昇へと無慈悲に関節を極めようとするが、それよりも昇が決死の行動を開始する。右腕ごと地面に倒れ込んだのだ。もちろん、氷雨を下にして。氷雨はそれを感じたのか、一歩早く、昇の腕を離した。折れなかったものの、昇の顔が痛そうに歪んだので、少しは右腕にダメージを与えたと判断したのだ。
氷雨と昇は地面へとほぼ時を同じくして倒れこんだ。
もちろん氷雨は受け身を取って、以外にも昇も受け身を取っていた。
二人の視線が混じりあった。
お互いに引きはしない。
すぐに二体の獣が交差する。
まずは氷雨だ。少しでも距離を稼ごうと左手の指が伸びて、貫手が昇の眼前へと迫る。昇はそれを盾で防ごうとしない。大振りだったので、首を捻って避ける事を選んだ。すぐに氷雨のむき出しになった腹部へ、膝を突き立てた。氷雨の身体がくの字に折れ曲がって、口から声を履いた。だが氷雨もすぐに左腕を戻すようにして、露わとなった背骨に肘打ちで対抗した。昇の背がぴんと伸びる。口からは絶叫が伸びたまま氷雨の背中へグラディウスの柄頭を叩き込む。氷雨はその間に何度も何度も肘打ちを仕掛ける。
最初に身を逃れようとしたのが、昇であった。盾を持った左手で払うように氷雨を転がして、何とか崩れそうな膝を立て直す。
氷雨は地面へと横に転がりながら痛みを我慢して、呻き声を上げながら立ち上がった。
昇は立ち上がった氷雨へ、苦し紛れに盾を押し込んだ。氷雨は強引に左腕を振り回して昇の顔を殴る。だが、昇もこれを見逃したくないのか、すぐさまスキルを発動。覇断。体重移動も無いが、スキルによる筋肉アシストによって、それは強力な一撃となる。
氷雨はこれまで盾で視界が塞がっていたので、昇の剣が見えなかった。
だから、昇の盾を視界から退けて、剣が頭上高く上げられた時には、もう避ける猶予など無い。また、右腕は痛みでもう感覚が無く、動きそうにもなかった。
「っ!!」
だが、それを無様に受ける氷雨ではない。
悲鳴を口から堪えながら、口から血が出るほど歯を噛み締めながら、攻撃のカードでもあった左腕で、昇の一撃を防いだ。骨が折れる鈍い音がまた聞こえた。氷雨の左腕も折れた。
そしてすぐさま、氷雨は転がるように昇の攻撃圏から逃げ出した。
昇も連続の攻撃で酸素が足りなくて動けないのか、深呼吸をしながら逃げ出す氷雨を見つめていた。
「……まだ……続けますか?」
昇の口から出たのは、降参の勧告だった。
「そうだ……な。どうしようか――」
氷雨は珍しく弱気になりながら地面へと体を投げ出していた。
その姿は昇と比べると、明らかに差がついていた。悲惨だった。氷雨の武器である両腕は昇の攻撃を防いだことにより、右腕は醜く折れ曲がって、左腕は青白くなって大きく腫れ上がっている。肉も避けていた。血が滴り出る。元に戻るかどうかも分からないような惨劇だった。
「これ以上すると……僕は君の命の……保証が出来ませんよ?」
「だろうな――」
「この状況を見て、勝者はどちらと思うでしょうか?」
「……お前、だろうな」
氷雨は言い難そうだった。
「降参、してくれますか?」
昇は喋りながら息を整えて、また立ち上がった。
その目は獰猛な獣のように鋭い。
氷雨が頷かなければ、本気で殺気でいるような目に見えた。
「なあ――」
氷雨はまだ立ち上がるような体力も無いのか、そんな昇の目を力の無い瞳で見つめる。
「何で……しょうか?」
「もし、お前は――勝利よりも大切な物があると思うか?」
「勝利よりも大切なものですか?」
「ああ。もしお前が使うのが嫌いな武器でしか、相手に勝てないとしたら、お前はどうする?」
「僕なら――多分、迷わず使いますよ。死んだら人は終わりです。将来的に、その武器に頼らない男になりたいですね」
昇は氷雨の質問の意図が分からなかったが、そこは本音だった。
「――だよな。俺もそう思う」
氷雨は嬉しそうに昇へと返事をして、立ち上がった。
「……まだ、戦るのですか?」
昇は冷たい目で聞いた。
「ああ。どうやら、俺も、他の何よりも、一つの勝利に貪欲に進みたいみたいだ……」
氷雨は浅い呼吸が続いていた。
どう見ても、その姿は既に満身創痍だ。身体は傷だらけで、武器も満足に機能しない。もう一秒でも動けば倒れそうな雰囲気さえ見える。
「分かりました。僕もそれを断ち切って、勝とうと思います――」
昇は、もう一度最初の構えを取った。
こちらは氷雨に比べるとまだ余裕がある。何度か氷雨にいい一撃を貰ったが、巨漢である昇にとってはまだ何とか耐えられるダメージだ。だが、後それを数発貰えば危ない、ということは本人も自覚していた。
「俺も、お前に勝ちたいよ――」
氷雨は、子供のように笑いながら宣言をする。
そして、最後の力を振り絞って、マントを脱いで、顔を顰めながら折れた左手を動かしてブーツを脱いだ。さらには上半身に着ていた服も脱ぐと、その下には晒の巻かれた腹部が見える。そこからは血が滲み出ていて、損傷の大きさを伺える。
昇はその行動に違和感を覚えた。一番厄介だったブーツを脱ぐなんて、と。
あの鉄板が仕込まれたブーツは剣を防ぐ役割をして、さらにはその重さで足を攻撃力まで上げていたはずだ。それを脱ぐ意味なんてあるのだろうか、と分からなかった。スピードは確かに少し上がるだろうが、それよりも履いているアドバンテージのほうが大きいようにも感じるのだ。
だが、氷雨はそんな風に戸惑っている昇へ、意地の悪い笑みを浮かべてぼそりと呟いた。
「――『強化』」