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戦人の迷宮探索(改訂版)  作者: 乙黒
第二章 円舞曲
36/88

第十六話 ネズミ狩りⅥ

 高い屋根の上。

 レンが氷雨に倒された時、又してもワルツはそこにいた。だが、顔は嗤っていない。わざわざ自分が動いてまで仕掛けた駒を、簡単に破り、屠った彼へ、カリカリした感情を抱いたのだ。


「全く――ヒサメ君は私の手札を全て破りますねえ!」


 ワルツは憤怒に身を任せ、中身の入ったグラスを握力だけで握り割った。赤いワインは血のように右手を滴り、やがて地面へと落ちる。ぽたぽたと流れるワインを、彼は懐から取り出したスカーフで拭き取った。


「これはあつ~~いお灸をすえなければ――ねえ???」


 誰にではなく、自分に聞いた。

 確認であった。火照った自分の頭を冷やすため、冷静な考えへと戻るための。それはどんな冷たい水よりも効いた。

 風が吹いた。冷たい夜風であった。からんからんと、足元のガラスが屋根を滑り落ち、地面に衝突。そして、ぱりんと、ガラスは粉々になった。


 ワルツは、きゅっと目を細める。

 彼が睨むは、遠い自分の城。

 氷雨との最後の決戦場であるそこに、ワルツは濁った思いをはせた。


「さて――行きましょうか」


 そして数秒後、ワルツは――決めた。持っているジョーカーの内、どの一枚を切るのかを。

 時は黎明。少し夜空が明るくなり、空が深い蒼に染まった頃であった。

 ――本日は、この時より始まる。



 ◆◆◆



「おにいちゃん……ほんとうにだいじょうぶなの?」 


「ああ――」


 ワルツの屋敷を目指す一行。商人達は大通りで開店の準備を始めており、その真ん中を一向は進んでいた。

 その道中、氷雨はユウに怪我の大小を尋ねられるが、生返事しか出来なかった。


 歩くたび、肋骨がきしむ。

 腕を動かすたび、肋骨がきしむ。

 顔を上げるたび、肋骨がきしむ

 呼吸のたび、肋骨がきしんだ。

 氷雨が訴える痛みは、これだけでは無い。青く染まった右肩。今も血が出ている脇腹。そして、レンとの戦闘で開いた、数日前の迷宮(ダンジョン)での裂傷。負傷の具合は、おそらく負けたレンよりも酷いだろう。赤く染まった灰色のマントが、それを物語っている。

 氷雨の無理な戦いが、祟った結果だった。


 本来なら、戦闘を行えるような体調ではなかった。

 だが、今の彼はワルツに対する闘争心だけで動いている。

 純粋な――穢れもない戦闘欲。氷雨はまさに、鬼よりも鬼らしい人間であった。


「ヒサメさん……どうしてそこまで……?」


 思わず、クリスは尋ねた。


「ああ――」


 だが、深く答える余裕など今の彼には無い。

 気を抜けば倒れてしまう状況で、他に意識など向けられないのである。睨むは目の前に立った屋敷。彼にとっての決戦の舞台で、ワルツにとっての城だ。


「アニキ……本当に行くのか?」


「ああ――」


 目の前に広がるは、巨大な門。カイトがそれを前にして、ひっそりと確認のように聞く。

 だが、返ってきた彼の返事は同じ。ただ、にたあ、と嗤っていた以外は――

 そして、氷雨は、門を蹴飛ばして開けたのだった。



 ◆◆◆



「やあやあやあ! ようこそ、御出で下さいました! ご存知の通り、私がユビキタス商会のエータル支部奴隷部門所長のワルツであります!!!!」


 長い通路を抜けた先だ。

 その間、何人たりとも四人は会っていない。替わりに、レッドカーペットに赤い点々の染みがあった。血ではない。上質なアロマの香りがしたからだ。氷雨はこれをワルツからの案内状だと思い、染みの赴くままに進んだ。


 そこは広い空間だった。

 二階、三階などが無く、天井は高い。部屋の端にはピアノもあり、ダンスホールだったことが伺える。

 赤い染みはそこで途絶えており、ワルツもそこにいた。ワルツの隣には、一人の大男もいる。

 ワルツが、氷雨に会った第一声が“それ”なのであった。


「お前があいつらを……」


「ガキは黙りなさい……!!!!」


 意気揚々と前に出て啖呵を切ろうとしたカイトを、ワルツが静かな声で制した。カイトはそれに身を縮こませ、氷雨の後ろへと引き下がる。

 普段明るい人間が静かに激昂すると、恐ろしいほどの迫力が出た。

 大気を震わすワルツの殺気。それにカイトは戦慄したのである。


「ヒサメさん、貴方は本当にやってくれますよね???」


 話は、ワルツが切り出した。

 カイトを黙らせてから、数秒後のことであった。


「何が、だ?」


 氷雨は、ワルツの殺気にたった一人怯えず、軽口で返答する。これまでまともに口を開けなかった彼が、だ。

 彼の向上する興奮は、いい痛み止めになるのであった。


「いえいえ、私の部下を斃して下さって、手間をかけて仕掛けた手札を斃してくれて、ありがとうといいたいんです!」


「それには、どういたしまして、と言ったほうがいいか?」


「ええ! そっちの方が、私に心残りが出来ませんからね!!」


「どういたしまして、それは良かったな」


「本当に、ね!」


 嗤う鬼――氷雨と、これまた嗤うピエロ――ワルツ。

 不気味な会話だった。幽霊の一人や二人、逃げ出すような不気味な会話であった。

 それに、震えている者も居る。ユウであったり、カイトであったり。クリスも、僅かに震えていた。


「そう言えば、私が手塩にかけて統一された兵士たちはどうだったでしょうか??? 今夜合わせて二度。随分と楽しんでおられてましたね???」


 本心に迫る会話ではなく、表面だけを触る会話。

 切り出すきっかけは幾らでもあるのに、攻撃を仕掛けるタイミングは幾らでもあるのに、狂喜に染まった二人は、似たような会話を続ける。


「ああ、意外と苦戦したな」


「でも、逃げ切ったじゃありませんか???」


「だって幾ら統率がよくても個々の実力が伴っていなければ、わりかし何とかなるもんだぜ?」


「その意見は、今後の参考にさせてもらいます! いい話が聞けました!!」


 お辞儀を、ワルツはした。手の位置も、足の位置も、雑な場所である。

 単なる社交辞令であった。氷雨に対する挑発――とも取れるだろう。それはワルツが嘗めきった態度だからである。

 だが、氷雨はこんな安い挑発には乗らない。


「ところで、ワルツ、一つばかし聴きたいことがあるんだが――いいか?」


 ふと、今度は氷雨が話を切り出した。

 

「いいでしょう! どうぞ! ここまで辿り着けたお礼に、答えて差し上げますよ!!」


「へえ、中々太っ腹じゃねえか――」


 氷雨は、ふっと鼻を鳴らした。

 ワルツが、それにくすっと嗤う。

 

「――で、どうしてこんなまどろっこしい方法で、金を集めようと思ったんだ?」


 今度は――逆に氷雨が挑発した。


「……」


 衝撃が、ワルツの体内を奔った。

 クリスの有効利用と説明すれば、これまでは大概の言い訳にはなっていたのだ。このクリスを安値で売って、取り返すという方法には。


「金の為、いや違うな。金の為だけなら、こんな遠回りな方法面倒だしな。俺なら、金を手っ取り早く得る為なら、そうだな。その辺りの冒険者を、兵士で襲うからな。で、教えてもらおうか。――お前の本心はなんなんだ?」


「えっ!?」


 氷雨が、核心に迫る。

 これはクリスさえも知らないことだ。クリスはてっきり、ワルツは金を稼ぐために自分を使っていると考えていた。っでも、氷雨の言葉を聞けば、それがどれだけ手間がかかるか分かる。

 

「……あはっ――」


 対するワルツの返事は無言。肯定であることを明かしていた。

 やがて、ワルツは身体を徐々に震わした。

 そして、大きく笑い出した。


「――あはっ! あーはっはっははははははははは!!!! ヒサメさん! 貴方が初めてですよ! それに気づいたのは!! どうして分かったんですか??? 私が“金を狙いにクリスを使った”わけではなく、“ただ上げて落とされて行く者の顔がゆっくり見たい”がゆえに、これを始めたって!!!!」


 腹を抱え、笑い出すワルツ。

 ワルツはつくづく思っていた。ただ、相手の顔を絶望に変えるだけなら物足りない。ただ、相手の全てを根こそぎ奪っても芸が無い。

 ――だったら、一旦幸福を味あわせてから、全てを奪ったら、愉しいのではないか、と。発想としては狂っているため、常人には理解されず、分からなかった考えだ。


「まあ、なんとなく――だな」


 語尾を誇らしげに上げて、氷雨はニヤッと笑う。

 だが、彼も常人ではない。同じ穴のむじなであるワルツから、感じ取ったのだ。その真意の奥に秘められた狂気を。喜びを。

 ゆえにワルツの考えが、何となくだが分かった。誰かに聞いたわけではない。小耳に挟んだわけでもなく、ほぼ直観として分かった。


「いえいえ! 実に私と貴方は意見が合いそうです!! まあ、気が合うとは限りませんけど!!」


 だな、と氷雨はワルツに頷いた。

 氷雨も、ワルツと同じ考えだった。

 

「じゃ、そろそろ無駄話は置いといて――俺と()ろうぜ。ワルツ――」


 氷雨はワルツと一戦を迎えるため、一歩距離を詰めた。

 右拳は強く握っている。左拳は緩く握っていた。目には闘志が滾っている。痛みは欲望で押さえ、体力は根気で補った。

 氷雨にとって戦う準備は万全であった。

 だが――




「えっ!? 嫌ですけど!! だって私、部下が戦っているのを見るのが好きですし! 自ら戦うなんて――下の人間がすることでしょう???」




 ――ワルツがそれに応じるわけ無かった。気が合うわけない。その言葉は、的を射ていたのだ。

 ワルツは空中から注射器を取り出し、隣に居る鎧を着た大男に刺した。そして、中に入っていた緑色の液体を注入する。


「ひ、ヒサメさん……あいつ――ワルツは、力量(レベル)が1です!」


 クリスはこれまで黙っていたのは、氷雨とワルツの会話から溢れ出す異様な空気。それに怖気づいたのもあるが、ふとワルツに『力量(レベル)読み』を使った際の、“低すぎる”力量(レベル)に驚いたのもあった。


「もしかして……あの噂は本当だったのか!」


 カイトがクリスの言葉に反応してから、大声で叫んだ。

 ――力量(レベル)の偽造。クリスの頭には浮かばなかったが、この町の情報に詳しいカイトならではの考え。今、巷に多く広がる都市伝説の一つであった。


「おい……!」


「おや、ばれてしまいましたか!」


「やっぱし! そうだったんだな!」


 氷雨は興奮しているカイトの声など気にも止めず、歩みを速め、ワルツまで走る。ワルツを殴れないという危機感からである。

 だが、時既に遅し。

 彼の手にあった注射器の中身は、全て男の中に注ぎ込まれた。注視しなければ分からないほどの変化だが、男は一回り大きくなっている。全身の筋肉が、膨れたのであった。

 ドーピング。筋肉増強剤。言い方は色々あるが、ワルツが注射した中身は“それ”であった。


「ヒサメさん! 私のジョーカーに勝てたなら、また、お会いしましょう! それではまた!!!!」


 バン、とワルツが空になった注射器を地面へと叩きつける。

 すると、灰色の煙が、ワルツを包むように出た。

 そんな煙を掻き消すように、ワルツを屠るように氷雨は上段蹴りを放つが、虚空を通り過ぎるだけであった。

 足に感触の無かったことから、氷雨はワルツが逃げ去ったことを感じ取った。ただ、後にその足に、赤い染みがついてはいたのだが――。


 歯をぎりぎりと、悔しそうに氷雨は擦る。

 やがて膝が折れ、左の拳を地面へと叩きつけた。だが、それだけでは氷雨の虚無感は消えない。次に大きな地団駄のように、右足を大きく地面へと振りかぶった。何度も何度も。


「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 やがて、氷雨の足音がやんだ屋敷に、慟哭が木霊した。

 氷雨がある意味、敗北した瞬間でもあった。


「――あ、そうそう、言い忘れていたことがありました! 私はワルツ! “名”は奇術師(トリックスター)!! 珍しい“名”なので、よ~~く覚えて置いて下さいね!!!!」


 氷雨の慟哭はまだ止まない。

 捨て台詞のようなワルツの発言は、様々な意味を含み、四人を驚かせる結果となる。これを最後にワルツの声は聞こえなくなる。

 彼は場を引っ掻き回して、去ったのであった。


「あ……あぁああああああああああああああああああああああああああ!!」


 だが、彼等に驚いている暇は無い。

 ドーピングを打たれた大男が、大きく耳に響くような叫び声を上げたからだ。氷雨もそんな金切り声が聞こえると、口を閉じ、目だけを大男へ向けた。


 太い左腕には注射痕がかさぶた状に連なり、目は大きく見開いて“イッ”ていた。

 体長はおそらく二メートル。膂力は見た目だけで言えば、圧倒的に氷雨が下。装備は胸と頭部などの重要箇所を守る鉄の防具。武器はモーニングスターで、棘を備えた星玉が柄頭に付けられた棒状の殴打武器だ。


力量(レベル)は9……でも……!」


 『力量(レベル)読み』を使ったクリス。今目の前にいるのは、普通ならば戦うに値しない敵だった。

 だがワルツがそんな薬を、たかが興奮剤だけを打つはずが無い。それは、クリスが一番良く分かっていた。


「あぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 大男は、大きく氷雨に向けてモーニングスターを振りかぶる。

 モーションが大きいため、後ろに躱すのは楽な動作だったが、問題はその“次”であった。

 重力を受け、スピードに乗ったモーニングスターは、屋敷の床へと当たる。そして、床に敷かれた石を破壊し、そのつぶての幾つかが氷雨へと飛んだ。


(ちっ、馬鹿力め)


 思わず、氷雨は悪態づく。

 厄介だった。当たれば一撃で戦闘不能になる敵の筋力。それも連発可能。今のところ、弱点さえ見当たらない。


 金切り声を上げる大男が、氷雨へ向けて様々にモーニングスターを振るう。

 横。縦。斜め。

 どれもが空を切り、避けるのは簡単であったが、問題はその“後”だ。


 地面を砕いて氷雨まで跳ぶつぶて。それは数十にも及び、避けることさえ適わない。だが、鋭いつぶてはは氷雨の身を切り、肉を切った。

 ジリ貧は確実。氷雨の負けは――このまま行くと確定であった。


 何故なら、体力が尽きるのはおそらく氷雨が速い。身体に“がた”が来るのも、氷雨が速いからだ。

 ドーピングを打たれた大男にも、おそらく制限時間はあるだろう。しかし、大怪我を負っている氷雨と比べる――

 既に氷雨は避けるだけで精一杯。反撃など、できる状況ではなかった。


「アニキ……!!」


 背後から、仲間の応援が氷雨に飛ぶ。

 モーニングスターは、氷雨への追撃をやめない。まるで疲労感も、乳酸漬けも、知らぬような戦い方であった。


「おにいちゃん!!」


 まだ駆け巡るモーニングスター。

 その内、モーニングスターに備えられた棘が、氷雨のマントを引っ掛けた。彼の動きが、少し鈍ったからであった。

 それも、棘の切れ味が悪いため、マントに刺さるだけ。そして大男はモーニングスターを思いっきり引くと――


「うっ……!」


 ――氷雨の身体を引っ張る羽目となり、彼はこけた。いや、引きづられたと、云ったほうが正しいだろう。

 次に大男は本能のまま、モーニングスターを空中に上げ、氷雨の体の中心へと振り落とした。彼もなんとか体を地面に転がして避けるが、氷雨の脇腹を――それも兵士に刺された右脇腹の端を――抉る。傷口に塩を練り込まれたような激痛により、氷雨は顔を歪めた。


 幸い肉には刺さっていなかった為、氷雨は即座に大男から離れた。

 右手で、これまたレンとの戦闘で負傷している手で、脇腹から溢れ出る血を止めようとする。だが、止まらない。血は止め処も無く溢れ出る。

 

(ちっ……)


 再度、氷雨は舌打ち。

 止血さえ出来れば、布で縛りさえすれば、命は助かる怪我なのに、モーニングスターの嵐が止まないことにより、止血はできない。

 

「くっそ……くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 吠える。モーニングスターを避けながら、氷雨は吠えた。

 氷雨は気絶しないように、意識を、気合と雄たけびで繋ぎとめたのだ。

 そんな時、氷雨は歩こうとしたら、足元の砕けた瓦礫に足を取られた。ぐらっ、と身にふらつきがきた。

 また、氷雨は舌打ちした。

 残り時間は少ない。今、彼が持っている力では、全快時のたかだか一割程度の力しか出ない状況で、勝てるような甘い敵ではなかったのだ。


「――アニキ!!」


 そんな氷雨へ、救いの矢が飛んだ。カイトのナイフである。懐からカイトはナイフを取り出し、大男に向かって投げたのだ。

 大男は、そんな投げつけられたナイフへと意識が向く。

 ――好機であった。

 氷雨は根性だけで、戦い抜くという気概だけで、足を強く踏みしめた。この際、横槍がどうとか、言っている場合ではない。


(決める……決める……決めろ!)


 安いプライドを、氷雨は捨てた。この際、一対一とか言ってられない。

 氷雨は、大男まで距離を詰めると、真正面から左手で相手の首を取り、氷雨は首を前方に押した。そのまま左太ももで、相手の右内ももを跳ね上げる。片足になった大男は、自ら作ったがれきに足を取られ、グラッ、と大きくバランスを崩す。

 肩に、大男の反抗として、モーニングスターの柄が何度も何度も当たる。痛みに顔をしかめるが、業はそのまま――流れるように発動した。


 横に流れるように、頭を下に足を上になった大男は、氷雨に首を掴まれ、鋭いがれきの上へと叩きつけられる。その後、跳ねられ上げた足が地面へとついた。

 形としては柔道の内股に近い。だが、襟ではなく首を取り、頭を叩きつけるので、より凶悪な業といえるだろう。


 技名は、『驟雨(しゅうう)変形内股』

 この技は基本的に相手を地面へと叩きつける業のことを言うので、これもまた、『驟雨(しゅうう)』なのであった。


 頭を尖ったがれきに叩きつけられた男は、兜の上から受けた衝撃により脳震盪。立つことはできず、武器を振るうこともできない。

 そして、氷雨はトドメとして、地面に横たわる男の首を取り――廻した。ゴキッという音で、男は――死亡したのであった。


 ピコーン、力量(レベル)が15になりました。


 氷雨の長いワルツとの戦いが、一旦ついた瞬間である。

 窓から差し掛かる光は、既にオレンジ色になっていた。

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