第十五話 とあるエータルでの一日
次の日の朝。
氷雨が冒険者になって、五日目の朝である。
朝なので気温は低く、日光は木で作られた窓で閉ざされていた。部屋の薄い壁の向こう側では鳥がさえずり、早朝から商人達の活気のいい声が聞こえている。
きっと窓を開ければ、いい町の情景が広がっているのだろう。
「うぉおおおお………………!!」
だが、そんな本来なら、爽やかな朝を迎えるはずだった氷雨は、固いベットの上で悶えていた。体の体勢は横向きで、両手をプルプルと震わしながら、ただ一心に両手の激痛から耐える。
もし、氷雨が目も見張るような大怪我を煩っていたなら、その激痛のあまりに叫ぶのは分かる。
「……アニキ、大丈夫か?」
「……おにいちゃん、だいじょうぶ?」
だが、そんな大怪我もないのに、氷雨は苦しんでいた。
そんな彼の情けない姿は、同じ部屋の隣のベットで仲良く寝ていたカイトとユウが起き、カイトがジト目で注目するほどの悲鳴である。
「いや……全然……大丈夫じゃない……」
「じゃあ、なにがだいじょうぶじゃないの?」
半信半疑で氷雨を演技ではないかと勘ぐっているカイトとは逆に、ユウは純粋に心から氷雨を心配していた。
ユウは子供だ。齢は六以下で、精神的にも肉体的にも幼い。人の気持ちも分からず、疑うこともできない。
だからだろう。
ユウはその純粋さゆえに、氷雨を気遣い、左腕を――触ってしまったのだ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
彼のうずきの原因は、昨日ベルが放った『衝波』だ。
そして、『衝波』の特徴である衝撃を、両腕に受けてしまったために起きた筋肉の断裂。つまり、――筋肉痛が激痛の起因となっている。
もし、動かさなくても叫ぶほどの筋肉痛が起こっている箇所に、人の手が触れれば想像しなくても結果は分かる。
あの痺れるような痛みが、両腕全体に広がっているのだ。それも際限などなく。
「え!? おにいちゃん!?」
「あ、そういうことか。アニキ、ドンマイ!」
ユウは見ず知らずの内に、氷雨にとって地獄となる行動を、自然にしていたのだ。
カイトは昨日の戦いの一部始終を見ていたので、氷雨が何故大声を出したのかが理解できた。あれは痛い、と。
◆◆◆
「お、おにいちゃん! ごめんね! きんにくつう? だとは、おもわなかったんだよ!」
夜とは勝手が違ったメインストリートを、三人は歩いていた。
空には太陽が今日も燦燦と日差しを注いでおり、露天は熱気で満ち溢れている。
獣人やドワーフなど様々な人種がいたが、その中には鎧を着込んだ者もいた。分厚い鉄に体を守られ、刃物で威嚇する冒険者たちだろう。
「……もう、いいから。とりあえず、“ギルド”行くぞ」
氷雨は片腕をぷらんぷらんと振って、ユウに大丈夫と意思表示していた。
朝と比べると、痛みはマシにはなっている。だが、あくまで頂点を朝と考えたら、だ。やっぱり何かに接すると痛いし、強い風が吹くだけで叫びたくなる。
しかし、それを不屈の精神だけで屈してるだけだ。
理由は、氷雨が苦しんでる理由を理解できないユウを困らせないためだ。仮に、困らせたら、氷雨に近づき体を擦って怪我の安否を確かめようと、体にさわる。
しかも、その時に限って、腕である。
彼はそんな更なる災禍から身を守るため、筋肉痛を断腸の思いで、耐え続けているのである。
それは氷雨も自分の身を案じてくれる子供に、強く言うことなどできないからだ。むさい男には無類の強さを誇る彼も、世間知らずなお子様には弱いのであった。
「アニキ、痩せ我慢が上手いな! オレなら絶叫してるぜ!」
「カイト……少し黙れ」
氷雨の右側にいるカイトは、軽口で彼に喋りかけた。
現在のカイトは黒い靴も履き、薄い布製の服の上から、氷雨と同じような灰色のマントを羽織っている。昨日、あの後、氷雨が買い与えた物であった。
それに顔についた泥も綺麗さっぱり無くなっており、男らしい、いや、わんぱく小僧そのままでだ。
「ねえねえ、おにいちゃん! これからわたしたち、どこいくの?」
その声の主はユウだ。
氷雨を真似した格好はカイトと同じだが、砂で汚れた髪は黒色ではなく深い藍色。氷雨も分からなかったが、少年ではなく少女で、肩で揃えたショートカットはじゃじゃ馬娘そのものだろう。
ちなみに、氷雨の天敵である。
「違えよ。今日行くのはギルドだよ」
「ギルドって、あのギルドなのか?」
「ギルドって……ぼうけんしゃになるとこでしょ? だれがなるの?」
氷雨のギルドという単語に、カイトは目を輝かせ、ユウは疑問の色を瞳に宿したまま彼を見上げる。
「お前等が冒険者になりに行くんだよ。ついでの用事もあるしな」
「えっ!? オレが!?」
「ああ、迷宮に行くんだろ? なら冒険者じゃないと、あそこは入れねえからな」
氷雨にはその経験がある。
あの日、通行証を持っていないばかりに、門前払いを喰らったのだ。その経験を活かして、氷雨はギルドに出向いてるのである。
「おにいちゃん、それってわたしもなれるの?」
「さあ、知らねえ。丁度ついたし、聞いたほうが早いだろうが?」
「……アニキ、行き当たりばったりだな」
「けっ、ほっとけ。それより……ついたぞ」
冒険者ギルドの扉は、肉厚で取っ手がない。頑丈さを優先して作られているのだ。
カイトは、ギルドの中から聞こえてくる男達の蛮声に少し怖気づく。しかし、人を気遣わない氷雨が、少年の繊細な心の動きを分かるはずもない。
バッタン!!
腕が筋肉痛のため、足で鍵のついてない扉を開けたのだ。
反動のついたドアは、反対側の壁に大きな音を立てて激突する。
その派手な登場には、中で酒に呑まれてた冒険者たちも注目し、目を丸くした。
「お、おい、アニキ! 本気かよ!」
「さっすが、おにいちゃん! かっこいい~~!!」
氷雨の横を、アルコール臭に顔をしかめたカイトとユウが歩き、その動向を一瞬も冒険者は見逃さない。
「生意気な小僧め!」
「ガキ二人つれてるぜ、あいつ! ここは子供の遊び場じゃねえんだよ!」
「いや、武器を持ってないのだから、単なる馬鹿じゃないのか?」
「あははっ!! 違いねえ!」
多くの罵声を浴びながらも、氷雨は歩みを止めなかった。
「こいつらの迷宮の通行証をくれ。二人分だ」
「……あっ、はい、通行証ですね。もちろん新規……ですよね?」
「ああ、分かってるじゃねえか」
向かった先はカウンターだった。
そこに座ってたのは数日前と同じ、アッシュブロンドの短髪の受付嬢だ。印象はお互いに強かったため、よく覚えていた。
「しょ、少々、お待ちください。すぐにご用意いたしますので……」
受付嬢に数日前の焦りはなかった。
あの氷雨の件があってから、新規の入る時期以外にも、新規の登録者に迅速に対応できるよう準備していたのだ。
だが、そんな受付嬢にも驚きはあった。
新規登録者が――幼児なのだ。
これまでの最年少は十二歳だったので、大幅に記録更新である。いや、幼児のような歳で
「では、こちらに生体情報として血を垂らしてください。ところで、ナイフはお持ちでしょうか?」
受付嬢は石を二つ机の上に置いてから、氷雨に“しか”しない質問をした。
「アニキ、オレ一本だけなら持ってるぜ!」
「わたしはもってないよ!」
「じゃあ、一本だけ頼む」
「ええ、かしこまりました」
彼女は氷雨におどおどとナイフを渡した。前回のナイフと同じナイフである。
カイトは自分の指を傷つけるのに軽く呼吸を置いてから、少しだけ切る。
ユウもナイフを怖がっていたが、ここで泣かれると氷雨は厄介と思ったのだろう。筋肉痛を我慢しながら、ユウの手を刃物に驚いて目を瞑っている間に切った。
すると、
「お、お、お、おにいちゃ……ん……手が……手が……」
ユウが手を見て泣きそうになっていた。
目に涙を浮かべ、瞳をうるうるとさせる。
痛みは殆ど無かった。薄皮一枚だけを綺麗に氷雨が切ったことにより、痛みは少なかったのだが、手から“血”が出るという現状に、ユウは泣きそうになったのだ。
「ユウ、ほら、泣くんじゃねえ。急に切ったのは悪かったって」
彼はユウの方を向き、泣き出さないよう説得しようとするが、黒真珠のような目に浮かべる涙は大きくなるばかり。
そして両手を前に差し出し、一言。
「……だっこ……」
「はあ……ぐっ、すいません、許可証を頼む」
氷雨は呆然とする受付嬢に登録を急ぐよう急かしてから、ユウを泣き止ますため、抱っこした。そして体を軽く上下をしながら、あやしている。親子にも兄妹にも見えなくはない。
だが、この時、氷雨は必死に耐えていただろう。――激痛を。
「う、う……うう……」
「アニキ、なんかごめんな。ユウが」
「い、いや、大丈夫だ……痩せ我慢も根性の内だからな……」
彼女は子供らしく、氷雨の肩に顔を擦りつけながら静かに泣いていた。
カイトはそれに兄として、痙攣してる両腕を我慢している彼に謝罪した。
受付嬢が、時計のような機械をカウンターの上に置くまでの数分間。氷雨は地獄のような苦しみを味わっていた。それは、祖父の拳よりも格段に痛いのであった。
「では、こちらが通行証となっております。子供なのでサイズが合わないかもしれませんが、持ってさえいれば迷宮に入れるので問題ありません。何か聞きたいことはございますか?」
「ユウ、とりあえず降りろ。また今度抱っこしてやるから――」
「ヒック、エッグ、うん……わかった。こんどはじゃ、だめ……だよ。ここからでたら、だよ」
氷雨はユウを下ろし、カウンターの上に銀貨を二枚払って、通行証を二つ受け取った。
「はいはい。分かったよ。――それで……結晶石の換金はどこになるんだ?」
「少しなら、こちらでできますよ。大量なら手続きが必要ですが……。ご存知の通り、冒険者には一定期間内に、力量に応じた量の結晶石の換金が必要となっています。もし遅れれば、一度目は三月の間迷宮に入れなくなります。二度目からは冒険者の権利剥奪か、10万ギルの罰金となっています。――お気をつけくださいませ」
受付嬢はとってつけたような挨拶を、氷雨に述べた。
これが――このギルドのシステムである。
最新技術満載の腕時計や、便利な機能が沢山あるギルドへの入会金が安いのは、結晶石の利益のみで十分元が取れるからだ。
どんな凄腕の冒険者であろうと、税金などとして引かれる四割の数字は変わらない。それこそ、力量が高い一流の冒険者ほど、多くの金を搾り取れる。
しかも、迷宮を牛耳っているのはギルドだ。
つまり冒険者からは抗議の声が挙げたくとも、稼ぎがなくなるのは嫌なので、挙げられないのだった。
「これだけ頼む。量は少ないから大丈夫だろ?」
「ぶはっ! 少ねえ!」
「駆け出し冒険者か!? いや、子連れ冒険者だな!!」
「いやいや、駄目駄目冒険者だろ!! それにしても、よくあんなので冒険者になろうと思ったな!!」
氷雨が巾着から出した結晶石が、小指の爪ほどの大きさもなく、数も十個に満たなかった。この結晶石は、氷雨がルウなどを斃して手に入れた結晶石である。
つまり、自分の力で怪物を討伐した唯一の成果なのだ。
だが、ごつい冒険者はこの有様を見て笑った。
大いに笑った。
こんな結晶石、冒険者なら拾わない者も多い、とても価値が低い俗に云う“屑”結晶だからだ。
「ええ、ではお待ちください。ついでにその『デバイス』をお貸しください。現在の力量と比較して、後どれぐらいの量で期間が伸びるかお伝えしますので」
「ああ、分かった」
数十人いる冒険者達は、奥の受付嬢が帰ってくるまで、じっと三人のことを見ていた。
そして、戻ってくると、
「す、すいません! 遅れてしまいました! ええっと、貴方の現在の力量では、三月は収めなくて大丈夫ですね! 今後とも当ギルドを便利にご活用ください」
受付嬢は、氷雨に数枚の銅貨を渡した。一人の冒険者が、一日程度しか生きられない程の銅貨であった。氷雨はそれを結晶石が入っていた別の巾着に入れる。
冒険者達に想像していたよりも氷雨の力量が低いことが知られると、一気に吹き出し、大声で笑う。
「あいつ、一体どれだけ低いんだよ! あれだけの量で基準量を満たすなんて……最弱だろ?」
「お、オレ見たぞ! 力量は5だ! 最弱記録更新じゃないか?」
「だな! 弱っえぇー冒険者だな。あいつと俺達を同類と思われたくないぜ!
三人はそんな冒険者の嘲笑の中、ギルドから出て行った。
カイトが去り際に言った、アニキは本当は強い、は聞こえずじまいである。
少年の心の中には、あんな飲んだくれに言い返さない氷雨に対して、苦い思いばかりが募っていたのだった。
◆◆◆
「アニキぃ、なんで言い返さなかったんだよ?」
ギルドを出てから数分後、メインストリートを歩いていた時のことだ。
カイトは先ほどの氷雨の態度について、聞いてみた。声質はふてぶてしく、馴れ馴れしいものである。
「なんでって、言いかえしたところで俺に何の得があるんだよ?」
「得って、さ。そう言われると何も無いけど……それでも……あの“名”を持っているベル様に勝ったんだぜ? もうちょっと堂々とするとかさ、俺は強い、って必要以上に示すとかさ、色々あるじゃん。アニキにそういう誇示欲? そんなの無いの?」
「誇示欲なんて俺にあるわけねえだろ。あったとしても“戦闘欲”ぐらいだろうが」
苦笑いをした氷雨はカイトの横でユウを抱っこしながら、カイトに返事した。
ユウはあれからもう一回彼に抱っこをせがんだ。それを氷雨は“約束”だと素直に従った。氷雨にも、その程度の常識はあるらしい。
「おにいちゃん……」
それから、ユウは離れようとしないのであった。氷雨のマントの端をぎゅっと掴み、口を真一文字に結びながら、一向に氷雨をはなさなかったのだ。
だから氷雨とカイトはユウが自力で歩くのを諦め、人ごみに紛れていたのであった。
「戦闘欲って、アニキはそんなに戦いたいの?」
「ああ、当然だろ。食欲、睡眠欲、戦闘欲が、人間の三大欲求だろ?」
「アニキ、それ本当か……? いや、似たようなの聞いたことあるけどさ……」
人と人の間をすり抜けながら、三人は歩いていた。
目指す場所は、あの宿だ。今日は氷雨の調子が悪いから迷宮に潜るのは不可能なので、早々と帰ってしっかりと体を休めることを選んだのである。
カイトはメインストリートを歩きながら、周りを興味津津に見渡していた。
例えば、数メートル先に見える出店では、焼いた肉の香ばしい匂いが食欲をそそる。その隣の出店では、果物の甘い匂いが空腹を進めた。ここの出店は、料理を出しているなところの他に、貴金属や武具などを売っている出店さえある。
「うっわ!」
感激の声が漏れるほど、カイトはこの光景に歓迎していた。
この町の裏で貧しい生活しかしてなかった彼だからこそ、この眩しい様子を目をキラキラさせながら見ていたのだ。
「あっ、すいません……」
と、そんな時であった。
ユウを持った氷雨に、カイトと同じぐらいの子供がぶつかったのは。おそらく、その子供は少女だろう。深く黒い外套で全身を覆っているため分からなかったが、声から少女だと分かりえたのである。
その少女は氷雨にぶつかったのを謝りながら、また、人ごみの中へ消えていった。
「おにいちゃん……だいじょうぶ?」
「……ああ」
ユウは氷雨を気遣ってか労わりの言葉をかけるが、氷雨の返事は曖昧なものであった。
(まあ、人が沢山いるし……ぶつかるのは当たり前……だよな?)
カイトは先ほどの少女の行動に何の疑問を持たなかった。
数百人の者が歩くこのメインストリート。無論、こんな場所では犯罪などの少ない。目立った場所で犯行がばれると、次の日から“色々”と目を付けられるからだ。
だから、こういった場所では、陰湿な犯行がよく行われるのであった。
(……っ!!)
だが、カイトは町中に歩きだして数分後思い出した。
こんな場所でよく行われる一つに、窃盗があったのだ。普通なら貧相な格好をしている氷雨など、狙うに値しない獲物だろうが、
「アニキ、実はさ、オレたちがこの町のストリートチルドレンの奴らに嫌われてるんだ。あいつらの大切な金に、オレが手をつけたおかげで、さ」
カイトやユウがいるとなれば話は別だろう。だから、カイトは氷雨に最初から説明し始めた。
「で、それがどうかしたのか?」
「うん。それでさ、奴らのすりの常套手段の一つにさ、わざと体をあてて財布を盗むってのがあるんだけど……アニキは何か盗られなかったか?」
この方法は、カイトやユウも仕込まれた技術の一つであった。親も、身内もいない、ストリートチルドレンたちが生き残るのに編み出したのである。
そんな技術の一つに先ほどの少女の行動がとても酷似していたから、カイトは氷雨に訪ねたのだ。
「よく分かったな、その通り盗られたぞ」
「ええっ!? アニキ本当かよ!!」
氷雨はその問いに、少しも動揺もしなかった。ユウも「わたしもむねのあたりさわられた!」と元気に返事をしている。
「アニキ、なんで金を盗られて、そんなに冷静なんだよ!」
少年は欠伸をしながら歩いている彼に、大きく怒鳴った。
だが、氷雨は全く動じなかった。ピクリ、とも眉を動かさない。代わりにカイトの大きな声に反応したユウが、氷雨の胸元をあさる。
何が盗られたか、確かめるためだろう。
「だいじょうぶだよ、カイにい。とられたのは“おかねのはいったきんちゃく”じゃなくて“なにもはいってないきんちゃく”だから!」
「そういうことだ」
ユウの言ったことに、氷雨は深く頷いた。
先ほどの少女との邂逅。実は、少女の少しだけ感じられた“悪意”に反応した氷雨は、反射的に少女の手を何も入っていない巾着へと誘導していた。
少女もそんな長い間相手の懐をあされないので、不意に掴んだ巾着を手に、この場所から逃げたのだろう。
それが氷雨の意図したこととは知らずに――。
「なんだ。そういうことかよ……心配して損したじゃないか?」
カイトが安堵の声を漏らす。
そこからは特に何もなく、宿へと帰れた。
途中に恐喝にあっている者や、ひったくりにあっている者などがいたが、氷雨たち三人は特に気にもとめなかった。
流石不法都市だと、慣れていたようだ。
そして、次の日。
三人はやっと、――迷宮へ潜っていたのであった。
今回の話は、天敵に少し付け足す形となりました。
もしよろしければこれらについてのご感想、ご評価などをいただけると、とても嬉しいです。よろしくお願いいたしします。