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嘘つきな彼

作者: 夢叶


「愛ちゃん好きだよ。」

「彼方、わたしも~」


誤解しないでいただきたい。

この言葉は彼方かなたの彼女である私に向けられているものではない。


「美穂、大丈夫?」

「うん、もう慣れた、」


小学校からの親友の里奈りな


「慣れたってあんた…。」

「だって、いつもの事じゃん。」


そう、彼方はいつも私に見せびらかすように他の女の子といる。


「もう別れようかな。」

「そんなこと言っても別れないでしょあんた。」

「だってそれは…」


別れないじゃなく別れられないのだ。

その言葉は彼方によってかき消された。


「美穂、俺はお前とは別れないぞ!」

「そら来た。」


里奈は意地悪そうに笑った。

はあっと、ため息をはく。

このやり取りを何度やった事だろう。


「美穂、俺はお前が一番好きだ!」


この言葉を何度聞いた事だろう。

思わず涙線がゆるくなる。

さっきまで彼方がいたところでは”愛ちゃん”がポカーンとこちらを見ている。

当たり前の反応だ。


「彼方の嘘つき。」


こういうと彼方はハハっと笑った。

こんなやり取りも何回もやった。

そしていつも私が折れた。

我慢した。

彼方が好きだから。


チャイムが鳴り私は無言で席に着いた。

里奈はまだ笑っている。

彼方は隣の席の友ちゃんと話している。

自然と彼方に嫌気がさした。


それから目から涙が一粒こぼれ出た。

それに気づいた隣の席の裕也ゆうやが黙って涙をブレザーの袖で拭ってくれた。


「ブレザーよごれちゃうよ…っ。」

「女の子が泣いてるのに放っておく男がいるかよ。」

「キザ男ぉ…っ」

「ハハハ、なんとでも言え。」


ほんのりと顔が赤くなった気がした。

裕也は昔から結構仲のいい友達。

女扱いもうまい。らしい。

顔も少し整っている、がナルシストな為あまりモテない。

でも好きになった子にはとことん一筋。

そこは彼方とは全然違う。

そんな性格が私的には好きだ。


二人で笑っていると教室が一瞬にしてザワついた。


「なに?」

「しらね、」


後ろを振り向くとそこには倒れた机と私の彼氏、彼方がいた。


「彼方?」


里奈はまた笑いはじめた。

裕也も笑っている。

涙はとまった。


「美穂のばあぁぁあか!!」


その代わり、彼方の顔には涙がこぼれおちていた。

ていうか、なんで?


「は?ちょっと彼方?」

「ばかばかばーか!」

「意味分かんないし、バカはあんたでしょ。この浮気男!」

「浮気なんてしてないし!ばか美穂!」

「はあ!?このうそつき!」

「嘘なんかついてねえし!!」


「まあまあ二人とも落ち着いて。」

「「裕也|(お前)はだまってて!|(黙ってろ!)」」


間に入ってきた裕也の言葉を蹴散らして、私たち二人の口論は続く。


「ていうかいっつもいっつも、彼方は勝手すぎるの!」

「は?知るかよ!」

「知るかよってなに?自覚しろよ!」

「そういう美穂だって自己中なところあるじゃん!」

「あんたほどではないわよ!」

「さっきだって、あいつと話してたじゃん」


彼方の指の先には裕也がいた。


「は?俺ぇ?」

「そうだよおまえだよ!」

「ちょっと彼方!裕也は関係ないでしょ!?」

「なんでそいつかばうんだよ!」

「あんただって友ちゃんと話してたじゃない!」


私の指の先には友ちゃんがいる、


「え、あたし?」

「そうだよあなたよ!あと愛ちゃんも!」

「え、わたしもー!?」

「その二人は関係ないだろ」

「あんただってかばってんじゃん!」


ハーハーハ-、と二人とも肩で息をする。

授業中にもかかわらずこんなにも叫んでしまった。

羞恥が私を襲った。


「っぅ…!」

「おい!美穂!?」


教室を抜け出した。

他の教室の人は走っている私を窓から不思議そうに見ている。

でもそんな事はもはや今の私には関係ない。


自慢の栗色のロングヘアーが邪魔だ。

切ってやりたい。

靴箱に行ったところで後ろからガシリと手首をつかまれた。


「っはなして!!!!」

「いやだよ!」


後ろを見るとなぜか頬が赤くなった彼方がいた。

思わず涙がこぼれる。


「な、何で泣くんだよ!」


ふわっとシトラスの香りに包まれる。

ああ彼方の匂いだ。

そのままギュウっと彼方に抱きついた。


「彼方…彼方ぁ」

「なに??」


彼方は私に優しく問いかける。

その優しい言葉にまた涙が出てくる。


「ぅうー…彼方彼方彼方彼方彼方!」

「はいはいはいはい。もう泣くなよ美穂ぉ」

「っなんで、彼方まで泣いてんのよ!」

「だって俺涙線ゆるいんだもん」

「うー」

「唸るなうなるな」


彼方が少し私の身体を彼方の身体から離した。

シトラスの香りはここからじゃにおわない。


「ねえ、美穂俺を信じてよ」

「彼方の……嘘つきっ」


彼方はハハっと笑った。

でもねでもね、それと同じくらいに


「信じてる…っ」

「うん。」

「信じてるから彼方っ」

「うん、」


シトラスの香りがまたにおった。

鼻いっぱいに広がる。


「彼方が女の子と一緒にいても、女の子に好きとか言ってても、

 信じてる!!」

「えー。」

「何でえーなのよ!」

「だってさあ」


”それは美穂に嫉妬して欲しくてやってただけだもん”



嘘つきな彼は私の耳元でそうっとつぶやいた。



END





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