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物語集

夏の終わりの花火大会は心拍数が爆上がり?【広島弁増量Ver.】

作者: 辻堂安古市
掲載日:2026/08/27



原作は恋愛物語短編集「すきま時間のShort Love Stories」に掲載されています。


求む地元民監修。

誤字報告で受け付けます。










「ねえ早よ来んさいやー!」

「浴衣でそがぁに早よぉ走ると転ぶでー」



 毎年夏の終わりに開催される花火大会。塾の地獄の夏期講習を乗り切ったご褒美に、少しだけでもええから羽根を伸ばしたい!と悶えている受験生にとって、唯一のイベントじゃ。俺と奏音(かのん)も当然行くことになったんよ。



 それはまあいいんじゃけどな。


 ……二人きりじゃのーて、俺達の友達の恵士(けいじ)とサクラも一緒に、じゃけえのー。


「みんなで行こーやぁ!きっと楽しいけぇ!」って奏音が言い出したもんじゃから、嫌とは言えんでのぉ。二人きりで出かけられなかったんは、少しだけ……ほんのすこーしだけ不満じゃったけど、まぁしゃあない。これはこれで楽しいけぇの。







 ………。






 良しとしよう。







 Q、本音は?


 すまんウソをついとるわ!ちくしょー来年こそは二人きりで来てやるんじゃー!


 いや別にシタゴコロとかはないんよ?ただのぉ……ほら、友達おると、どうしても同性同士で話すじゃろ?歩くじゃろ?ほいじゃけえ例えば………例えば!手ぇつないで歩くとかなんか、こうしにくくなるじゃろ?恵士とサクラは別に付き合っとらんけえ、尚更なんよなあ。そう、俺だって純粋に二人きりの時間というものを大切にしとぉてだな……ゴニョゴニョ



蒼矢(そうや)、さっきから何言っとるん?」

「い、いや?ナンデモナイヨ?」

「ほーなん?それじゃ早く席取ろうよ!それから屋台じゃけえね!」

「うぃっーす」


 まぁ奏音は喜んでるけえ、これはこれで良いかぁ。




 この太田川花火大会は、駅のホームを降りると目の前の河川敷が会場になっとる。宮島の水中花火大会に比べれば小さな規模じゃけど、アクセスの良さで結構人気がある花火大会なんじゃ。


「相変わらず多いねえ」

「く〜!あの屋台の灯り!祭りはやっぱこれじゃのう」

「ちょっと!場所取りが先じゃけえね?」

「分かっとるって」


 ここの花火は小さい頃から来とったけど、カノジョと来るのは初めてなんじゃ。浴衣姿の奏音は、またいつもと違った雰囲気がこう……


ぶち良いのぉ!


 じゃけど、花火を見た方が良いのか、奏音を見た方が良いのか分かんなくなるんが困ったもんじゃあや。


「あ、ねえねえ、イチゴ飴!」


 それにしても、来年はどうなるんじゃろう。大学は一応一緒のところ目指してるけど、どうなるか分からん。というか、今のところ自信ないわ。


 ないけど、イマイチやる気起こらんのよなあ。


「ねえ?さっきから何考えとるん?」

「え、あ、いや、なんでも?どうした?」

「もー。イチゴ飴、じゃんけんで勝ったら2つ貰えるんじゃって」

「よっしゃ任せろ」


 オッチャン、走ってるバスに乗ってても奏音を見つけ出せる俺の動体視力を舐めるなよ?


 はい、最初はグー!

 じゃーんけーんぽい!


「オラァ勝ったぁぁ!」

「やったねー!」

「くっ、やるのぉ少年!じゃが、この倍々チャンス、受けてみんか?」


 おっとオッチャン、ソイツは悪手じゃあ。


「その挑発、受けて立とう!」

「ちょっとぉ!?」


 止めてくれるな!

 避けては通れない時があるんじゃ!


 はい、最初はグー!

 じゃぁぁーんけーん!ぽぉぉーい!





☆☆☆



「………イチゴ飴、16個ってどーすんのよ」

「オッチャン、悔しがっとったなー」

「かわいそー」

「原価100円もしねーから大丈夫じゃろ。おーいサクラ、恵士…………ってお前ら、その手……なんで繋いどるんじゃーや?」


 えーっと?

 コイツら付き合ってなかった……よな?


「さっき告白されたんよ」

「さっき告白したんじゃ」


 はぁぁぁぁ?

 いつの間に?


「わぁサクラおめでとうー!」

「ありがとー!」


 さては奏音、これ狙っとったんか?

 やるのぉ。


「おう、おめでとう。お祝いにコレやろう」

「ありがとう?てかなんじゃソレ。イチゴ飴多くね?」

「戦利品じゃけえの」


 まだ行けたけどな。オッチャン、泣きが入り始めたから………あ。


「花火!」 

「上がり始めたね。早く行こぉや!」


 オープニングの連続花火が川面に映って辺りを一際明るく照らし始める中、奏音が俺の手を掴んで観覧席へと引っ張る。小さく柔らかな手に、ドキッとすると共に手汗をかいてないか心配になる。



「………ちょっと待てや。そーいやお前らに託したたこ焼きはどこにあるん?」


「手が足りなくてー♡」

「と、いうことじゃ♡」


「ほいじゃあ、その手を離せやぁあ!」






 。o○。o○゜・*:.。. .。.:*・゜。o○。o○゜・*:.。. .。.:*・゜



「綺麗だったねー」

「そうじゃのぉ。やっぱ近くで見れるって良えよな。………じゃけど、帰りのこの人の多さがのぉ」



 帰りの電車は超混雑中。


 他のヤツラに奏音を触らせないために、なるべく隅っこの方に行ってガード!うーん……体勢的には「壁ドン」なんじゃが、ちっともそんな雰囲気じゃない。周りの物理的な「圧」に負けんように体を支えるのが精一杯じゃ。



 ガンバレ俺の上腕三頭筋ー!




「……ねぇ あのね」

「ん?」



 満員電車の中、奏音が背伸びして、耳元で囁く。列車内に充満している屋台の匂いを打ち消す奏音が着けてる香りがハッキリとする。


 コレはヤバイ。

 心臓の音がバレそうじゃ……!



「来年は()()()()()来ようね?」

「………! モチロン!」



 ちょっと顔が赤くなってる奏音。カワイすぎて思わず抱きしめたくなるのを必死にこらえる。でも今しちゃうと二人とも潰れちゃうし!人前だし!


 ガンバレ俺の上腕三頭筋と理性ー! 




 ……でもよし、来年の約束の為にお勉強頑張るとするかの。ちぃと気合い入れるか!


 それにしても、もう少し人数減ってくれんかのぉ?これじゃ雰囲気も何もあったもんじゃないわぁ!


 ええぃ!ガンバレ俺の上腕三頭筋と大胸筋と前鋸筋ンンンー!






「次はー〇〇駅にぃーとまりーます」


 どわ!増えたじゃと⁉

 いかん!これでは()()してしまう! 


「んっ…押しつぶされちゃったね……なんか抱きしめられてるみたいじゃねぇ」

「~~~~~‼」






 だめだ!

 これはアカーン!

 筋肉以上に理性の耐久力が保たんわぁ!

 

 浴衣越しに伝わる柔らかさと鼓動が!

 ほいで目の前で頬をほのかに染めて上目遣いしてくる奏音が可愛すぎる!



 というか神様アリガトウゴザイマス!

 明日から死ぬ気でガンバリマス!



 

 









太田川花火大会は、もうやっとらんのじゃ。

残念。


ちなみに小さい子達もこんな感じでしゃべります。






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