お盆
これは、私が実際に体験したお話。
ある夏のセミがけたたましく鳴き喚く日でした。
私は、いつものように、駅でバスが来るのを待っていた。
そこへ、見慣れない一台のバスがロータリーへ入ってきた。
行き先の表示は
冥界――
扉が開くと、そのバスへ乗ろうとするたくさんのヒトが並んだ。
その中に見知った顔を見つけた。
隣に住むおじさんだった。
「おじさん。このバスはなに?」
私はそう、問いかけた。だが、おじさんは私を手で追い払った。
まるで、虫を追い払うように
そして、おじさんら、乗客をバスに乗せ出て行ってしまった。
また、しばらく待っていると同じデザインのバスがやってきた。
私の目の前で止まり、乗客が降りてくる。
その乗客の中に去年、死んだ友達の母親を見つけた。
「おばさん……?」
その声が聞こえなかったのか、一瞬こちらに視線をやったかと思われたが、そのまま行ってしまった。
ガチャン
友達の母親が降りてきたバスの行き先が変わった。
また冥界。
そして、またひとり、ひとりと乗客がバスへ乗り込んでいく。
その様子を見送っていれば、バスの運転手に声をかけられた。
「お嬢ちゃん。乗らないのかい?」
私は大きく、首を横に振った。
このバスに乗れば、誰だったか大切な人に会えないような気がして。
「そうかい」
運転手はそれ以上なにも言わず、扉を閉め、バスは出発した。
現世行きのバスが到着し、行き先が冥界に変わり出発する。
その光景を何度も見た。
だが、先に冥界に行ったおじさんは到着するバスからは降りてこなかった。
友達の母親は、何本か後にやってきた、冥界行きに乗って行ったようだった。
やがて、蝉の声が遠のき、現世行きのバスも、冥界行きのバスもやって来なくなった。
こうして、私は――
「地縛霊」になった
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畸人0.1号




