第18話 ドナー
遺跡発掘のアルバイトってあんなにしんどいんだなぁ……。夢想家からも人員を多く派遣している(専門家やら、重機の操縦者とかそういうの)から多めに休憩取れたけど、それでも疲労は凄まじい。腰痛を患わなかったのは、奇跡かもしれない。
あとアイツ、心の母親! 隙を見つけては、心のお母さんがぶっ飛んだ話を聞かせてくるのも、精神の疲労に大きく関わっていると思うんだよね。っていうかあの人、生殖器って言いたいだけだろ。上品な顔して下品なんだよねぇ!
しかも痛みがどうだの精神がどうだの、人類の歴史だの、性と生の結びつきがどうだの、よくわからんことを延々と……ああ、無駄に疲れた。
とりあえず心のためにプレゼント買いに行くか……。いや、勘違いするなよ。給料に色を付けてもらったから、それをプレゼント代に回すだけだぞ。適当に安いアクセサリーを買っておしまいだ。いや、髪留めでいっか。多分安いだろ。
「あら、アンタ……」
「……? なんでしょう」
「…………いえ、ごめんなさい、なんでもないわ」
……? なんか近所のオバさんが謎絡みをしてきたけど、いったいなんだったんだろう。亡霊を見たかのような顔だったけど、失礼しちゃうな。
ああ、頭がボーッとする。やっぱり一日寝たぐらいじゃ疲労回復しきらないな。
ん……? なんか変な音が近づ……。
んっ……。
「あっ! 慎一!」
……? 心……?
あれ、ここは……俺は何を……。うぐっ……!? 全身が……バラバラになりそうなぐらい痛い……。
「動いちゃダメだよ! 今お医者さん呼んでくるから! あっ、ナースコール!」
状況が飲み込めていない俺以上にテンパってるが、いったい何が起きてる? 見たところ病室のようだが……。
「もうすぐお医者さんが来るから、とりあえず落ち着いてね」
……何があったんだ? 俺は買い物に行って……。
「慎一をはねたドライバーは捕まったけど、本当に許せないよ。飲酒運転にスピード超過、挙句の果てに歩道に突っ込むなんて」
え……俺、車にひかれたん? ボーッとしてたのもあるけど、よっぽどスピード出してたんだろうな。多分、脳の処理が追いついてない。もしくは記憶が飛んでる。
「臓器も骨も、運良く移植できて良かったよ。ドナー様々だねぇ」
……え、骨はまだしも臓器やられたの? 待って、頭が追いつかないんだけど。あれから何日経った? どこの臓器を移植した? っていうか骨って移植できるもんなんだな。よくドナーが見つかったな。手術費ヤバいんじゃ……。拒否反応? 的なの起きないかな、大丈夫かな。
「慎一が車にはねられたって聞いた時は意識が飛びかけたよ」
そりゃ悪いことをしたな……実際に意識が飛んだのは俺だが。
「で、慎一の容態を見た時、実際に意識が飛んだよ。お医者さんが支えてくれなかったら、後頭部強打で私も昏睡してたかも」
あっ、お前も意識飛んだんだ。俺に非はないけど、申し訳ないことを……。
いや、それはさておき臓器移植ってマジ? 嘘だよな? 俺の体に知らない人の臓器が……。助けてもらっておいてなんだが、高校生が受け止めるには重すぎるぞ。
「臓器が適合することは実験済みだし、後はリハビリだけだね。私も学校が終わり次第すぐ駆けつけるから、頑張るんだよ? 本当……一日でも、いや、一秒でも早く良くなってね?」
いや、リハビリに付き合うのは休日だけでいいよ。嬉しいけども、自分の人生を優先して……ああ、コイツにとっての人生って俺なのか。自分で言うのもなんだが。
「あっ、今のところ後遺症の心配とかはないみたいだから安心してね」
そりゃありがたい話だ……。まあこういうのって後から発生することもあるだろうし、まだまだ油断は禁物なんだろうけど。
「じゃあ後の詳しいことはお医者さんから聞いてね。ここ一週間、睡眠も食事もまともに取れてないから……休んでくるね……」
えっ……。
めっちゃフラフラしてるけど、大丈夫なのか? 俺なんかのために……なんて無茶なことを……。いや、無茶するのはいつものことなんだけど……。
その後、医者から色々説明を受けた。大体、心から聞いたとおりだったな。
とりあえず脊椎や頭にダメージはなかったらしい(あるといえばあるが、無視しても問題ないレベルとのこと)。
で、胃と腸を移植したらしい。本来であれば一生人工肛門だったらしいが、夢想家のおかげでなんとかなったらしいよ。
……本当に正規ルートの臓器か? 完全に適合する臓器が、二つも都合よく手に入るものか? 闇ブローカーってヤツ? だとしても奇跡的な気が……。
まあ無事だったんだから、文句を言っちゃいけないよな。とりあえず今は、ゆっくりと眠ろう。そのうちリハビリ地獄が待ってるわけだし、少しでも休まないと。
……臓器移植かぁ。ちくしょう、昼間っから飲酒運転しやがって馬鹿野郎。
なんだよ、飲酒運転プラス速度超過プラス脇見運転(スマホ弄りながら且つ、助手席の女に口淫させていたんだと)って。まあ、口淫させていたのが運の尽きと言うべきか、事故の衝撃で……。はは、ざまあないぜ。




