第14話 猟奇事件
未解決事件って調べてるだけで陰鬱な気持ちになってくるし、不気味な要素がありすぎて背筋が凍りそうになる。なんというか、現実離れしてるというか、別世界の出来事に感じるんだよな。
この流れで大体察してくれたと思うけど、俺ん家の近所で猟奇事件が発生してしまったんだよね。言っておくけど、いつものアレじゃないぞ? 心の奇行じゃなくて、純粋な猟奇事件だ。それもネットで一生語り継がれるレベルの大事件だ。
俺の家のすぐ近所で、白髪で老け顔の人が倒れていたらしい。それだけ聞くとお年寄りのように思えるけど、目撃者の証言によると〝若者が異常なストレスや奇病で、急速に老けたような印象を受けた〟とのことだ。
まあ、そこまではありうる話だよ。心曰く『漫画みたいに一瞬で老けることはないだろうけど、数週間で急激に老けるとかはあるかな。交感神経ってのがあってね、それがストレスによって……』ってな感じで、科学的にあり得るらしいし。ちょっと小難しい話だったから、詳しくはわかんないけど。
んで、何が問題、猟奇的かっていうと……急にグチャグチャになったらしい。心配して駆け寄ってきた人に何かを打ち明けようとした瞬間、体が急に崩れだしたらしいんだよ。その時点で現実離れしてるんだけど、宇宙服のような物を着た人達がその死体を持ち去ったというのだから、現実味がなさすぎる。
目撃者が複数いるが、物理的な証拠はゼロ。今時こういう事件が起こると、動画の一つでも出てきそうなもんだが、残念ながら撮影した人間はゼロ。
……これが作り話じゃないとしたら、撮影しなくて正解だったんだろうな。口封じに殺されてた可能性も……。いや、そもそも目撃者達はこれから先も無事なのか?
「慎一、ずいぶんと暗い顔してるね」
「ははっ、そりゃご近所で都市伝説みたいな事件が起きたら……誰でも暗くなるさ」
常識的に考えたら頭のおかしい人達のでっち上げ、狂言だろう。でも良い歳した大人達がそんなことするか? いや、でもそれ以外に説明がつかないよな。
「まっ、白昼夢か何かだと思えばいいんじゃない? 写真もなければ、死体もないんだよ? その死体を持ち去った男達も見つかってないし、警察も捜査本部を設けない方向で決まったし、深入りしちゃダメだよ」
「それもそうだな。狂言だったら調査するだけ無駄だし、事実だったらそれはそれで関わっちゃいけない気がする」
とは言ったものの心配だなぁ、ガチで近所だもん。凶悪事件が起きた地域に住んでる人も似たような心境なのかね。
「もし不安だったら、ボディガードつけよっか?」
「………………いや、大丈夫だ、ありがとう」
正直魅力的な提案なので少し迷ったが、申し訳ないし断っておいた。
……とりあえず暗い時間に出歩かないようにしよう。
「よしっ! 元気萎え萎えの慎一を、パーフェクト幼馴染の私が元気づけてあげようじゃないか!」
頼もしさのアピールなのか、胸をドンっと叩く。その勢いで胸を叩いて、痛くないのかな? 今のは男でも結構痛いと思うんだけど。
「けほっ……。私の家の屋内プールにご案内しようじゃ……けほっ……」
ほら、言わんこっちゃない。危険だからやめな?
んで、なんだって? 屋内プールだぁ?
「俺そこまで泳ぎ得意じゃないんだが……」
「それは気にしなくていいよ。それより、幼馴染とプールだよ? 想像しただけで、ワクワクしてこない?」
……いや、別に? 一般的な幼馴染よりベッタリだから、正直あんまり異性として見れないというか……何よりも奇行がな? 妹のような存在であり、近所に住んでる関わっちゃいけないタイプのオジさんのような存在だよ。そして税金のように一生つきまとってくる存在だ。なんなんだお前は、正体が掴めねえよ。
「お前が色仕掛けとは珍しいな」
現実で女子高生が色仕掛けしてくることってあんまりないのかもしれんけど、コイツが普段しているアプローチを考えると、一般的な手法に思えてくる。普通この手のヤツって、性欲を揺さぶってきそうなもんだけど、妙にピュアなんだよね。
「だってぇ、水着って恥ずかしいでしょ? 体型とか誤魔化せる水着もあるけど、そういうのって色気が犠牲になるっていうかぁ」
今時珍しいくらい羞恥心を持っているのに、なんで奇行に走れるんだろうね。髪に芋けんぴ百本以上刺して歩くほうが、よっぽど恥ずかしいと思うんだけど。
「ダイエットとか筋トレ上手くいってるし、そろそろお披露目してもいいかなぁなんて思ったりして……あはは」
よほど恥ずかしいのか、視線そらしながら手遊びをしている。下手な計算さえしなければ本当に可愛いヤツだよ、お前は。
「慎一が好きな、花柄のフリルビキニも用意してるし……次の土曜日一緒に遊ぼ?」
「土曜か、今のところ空いてるよ」
……俺の趣味なんか教えたっけ? っていうか花柄のフリルって何? 俺別にそういうの好きじゃないというか、いまいちイメージ湧かないんだけど……。
まあいっか。コイツの言動が意味不明なのはいつものことだし、深く考えるだけ無駄だろう。せっかくのお誘いだし、遊びたおして嫌なことは全部忘れよう。うん、それがいい。




