第98話 妹への提案
宇宙真理国から日本に帰国して。
俺は妹に連絡を入れた。
自宅でベッドに腰を掛けて、携帯端末でメールを入れた。
『ちょっと電話したい。掛けても良い時間帯を教えてくれ』
メール一本で終わる内容ではあるけどね。
こういうときは通話だろ。
……あとは返事が来るまで待つだけか
携帯端末を食卓や書き物机に使ってるローデスクに放り出し、俺は煙草に火をつける。
返事が来たらどう話を切り出そうか……?
パッと聞いただけだと、怖いだろうしな。
セルフクローン治療は……
その恐怖をクリアできるような話し方……
そのために近況を訊ねるのはまぁ、するとして。
……宇宙真理国に行っていたという話はするべきかな?
驚くだろうけどさ。
煙草の煙を吐き出して、思案。
……していたら。
ブーッと俺の携帯端末が震え。
電話が掛かって来た。
……妹からだった。
「もしもし?」
俺が通話に出ると
『お兄ちゃん、用件は何?』
……向こうから話を切り出しやすくしてくれた。
俺は火をつけたばかりの煙草を灰皿に置き
「実は数日前に有給取って宇宙真理国に行ってきたんだ。そこで取って来たものがある」
……用件をいきなり言ったんだよ。
そして次の土曜日。
会社の休みの日に、茉莉の自家用車で妹が住む町に向かった。
「いよいよだね」
妹の住んでる実家のマンション前まで行ってもらい、近くにあるパーキングに駐車して。
2人でマンションに入って、エントランス前の自動ドアで、マンションの部屋番号を入力した。
少し待つ。
すると
『……はい』
……入力キー上部に設置されたモニタに妹の顔が映り。
そこから妹の声がした。
「急に帰って来て、ホント一体何の用なの?」
部屋まで行って実家に上げて貰った。
元々は俺たちの家だったけど、今は妹しか住んでいない。
だから今は、妹の家。
俺は
「まあ、リビングに行こう。大事な話なんだ」
こんな玄関や廊下でする話じゃない。
……実はセルフクローン治療のことはまだ言ってない。
この前の電話では、近況報告を聞いて、彼氏との仲について訊ねたり、勉強の調子を訊ねたりしたんだよ……。
でも、そこまでで。
核心の核心は話すべきじゃないと思ったんだよな。
やっぱ、対面して話さないといけない気がする。
こういうことは
「うん。何か分からないけど、そういうことなら」
龍子は少し怪訝そうな表情を浮かべたけど。
そのまま歩いていき
リビングに入る。
妹は俺たちに顔を向け
「インスタントコーヒーでも淹れようか?」
そう訊いて来た。
俺は
「いや、それは後で良い」
すぐに話したかったんだ。
それで、安心させてやりたかったんだ。
「まあまあ、座ってくれ。茉莉も」
俺の言葉で
まず龍子がテーブルの席に座り。
次に俺がその向かいに座り。
茉莉は、俺たち兄妹を2人とも見れるように、俺たちのサイドポジに座った。
全員、席に着く。
そして
「……単刀直入に言う。龍子」
宇宙真理国に行って、身体をそっくり新品に入れ替えよう。
そのことを切り出したんだ。
直球で。




