第91話 御前試合開始
身体は解した。
リチャードの差し入れで腹にモノを入れた。
よし。
時間だ。
行くか。
俺は控室を出た。
俺は1人で会場に行くつもりだったんだけど
「ミスターコクショウ。ジカンデスゾ」
……日本語の出来る人が来たんだ。
会場までの案内人。
控室を出た直後だったんだけど。
タキシードを着用した初老男性だった。
俺に対して恭しく礼をして
「ドウゾ。アンナイシマスデス」
「……ありがとう」
素直に礼を言う。
こういうのは素直に嬉しい。
日本人の俺に合わせて、案内人に日本語出来る人を寄越してくれた。
俺に対しての敬意だな。
敬意には感謝するべきだ。
そのまま2人で無言で歩き。
会場に繋がる大扉の前まで案内される。
「ココデス」
「どうも。助かった。ありがとう」
手で扉を示す案内人。
そんな案内人に俺は礼を言い。
そして案内人は扉に手を掛けて
俺に向かって最後の言葉を掛ける。
それは
「ガンバッテクダサイ」
戦いに向かう俺にエール。
それは無論嬉しい。
……だけど、言葉選びがな。
申し訳ない。
エール、気持ちは嬉しいけどさ。
こういう場合は「ご武運を」って言うんだよ。
分かんないか? ……分かんないよね。
何か日本語カタコトっぽいし。
まあ、だから
「ありがとうございます」
……この人への最後の礼なので。
少し丁寧に言った。
扉を潜って、会場に出る。
そこは……
前に、テレビで見た場所だった。
あれだ。
永久死刑囚を死なせて愉しむ残虐番組「鶏小屋ゲーム」の会場。
白い砂の円形フィールド。
闘技場。
観客席には人が少し入ってる。
客層は知的な風貌の男女が多かった。
怪人兵器を製造している兵器会社の研究者だろうか?
で、俺の真正面の一段高い席に、豪奢な椅子があり。
そこに骨格の太い、がっしりした老人が腰掛けていた。
着てる服はどう見ても周囲より数段上。バッジも沢山ついていて。
……多分あの人が宇宙真理国の大統領なんだろうな。
その人はニコリともしないで、俺を見つめていた。
「リューイチ!」
そこに、聞き慣れた声が飛んできた。
振り向く。
予想通り、茉莉だった。
客席から彼女は手でメガホンを作って、大声で叫ぶ。
「絶対に勝ってね! 信じてるから!」
ああ。
「リューイチ! お前なら絶対に勝てるでございます!」
え?
意外な声も聞こえて来て。
よく見ると、茉莉の隣に金髪の美人系白人女性がいた。
……リンフィルト。
……何で居るの?
叫んだ後、彼女は茉莉と睨み合いになって
「Go back to America crazy girl!」
「Shut up, parasite!」
……なんか言い合ってる。
聞こえないけど。
まあ、いいや。
気にしてる場合じゃないしな。
俺は正面を向いた。
向こうにも出入り口があって、多分そこから出てくる。
俺の対戦相手。
そのとき、英語のアナウンスが流れた。
『Ladies and gentlemen, thank you for waiting! The match is about to start!』
レディースエンドジェントルメン、は聞き取れた。
多分仕合開始のアナウンスだろう。
アナウンスは続けた。
『The name of the challenger is Ryuichi Kokusho! His martial arts style is Abyss Ryuken!』
……俺のことか。
流石に聞き取れる。
だとすると、次は……
『Introducing the tactical monster he fights! It's Joker!』
意味は分からないが内容は想像できる。
怪人兵器の紹介か。
そしてその後、向こうの出入り口から人間大の、人間では無いものが出て来たんだ。
……ゆっくりと。




