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第88話 仕合前の夜に

 その日の宿は宇宙真理国が用意してくれた。

 同行者の茉莉へも同様で。


 俺は今、ホテルのバーにいた。


 周囲は清潔で、キラキラした店。

 非常にレベルが高い。


 パリッとした衣装のバーテンダーが優雅にグラスを磨いているし。

 給仕に上品な衣装を身に着けた女性が動き回っている。


 まあ、慰労会が行われたホテルが今日の宿で。

 そこに備え付けのバーがここなので。


 レベルの高さは当然なのかもしれないけどさ。


「Customer, would you like to have a drink?」


 物思いに耽りながらテーブル席でアイスの紅茶を飲んでいると。

 給仕の女性が話し掛けてくる。


 俺は


「ソーリー、イングリッシュ、ノー」


 片言以下の返答をして。

 携帯端末を英語和訳モードにして差し出した。


 給仕の女性はそれに話してくれて。

 俺はそこに表示された和訳を読んだ。


「ああ、酒は飲みたくないかと言ってるのね」


 ……納得。

 俺、お茶ばかり飲んでるしな。


 なので俺は


 日本語英訳モードで同じことをして、給仕の女性に差し出した。


 俺が言ったことは


「明日仕合だから今は飲めない。ソフトドリンクが良い。紅茶以外に冷たいのある?」


 ……無事伝わったのか、オレンジジュースと烏龍茶のボトルを持ってきてくれた。


「サンキュー」


 これくらいなら口で。

 一応の謝意を示して、烏龍茶をグラスに注ぐ。


 ……明日の仕合は、殺し合いだ。

 果し合いだからね。


 正直、恐怖が無いわけじゃないけど。

 何だか、落ち着いてるんだな。


 ……この辺、俺はやっぱりおかしいのかもしれないな。

 切った張ったの武芸者の人生が嫌で、親父の跡を継ぐのを拒否したはずなのに。


 相手がヒトでは無いし。

 その上で、自分の実力がどの程度なのかを知ることが出来る。


 ……とても強い相手と罪悪感を持たずに、死合える。

 そこにワクワクがあるんだな。


 変だよな。

 うん。その自覚はあるし……


 こっちの方に行くと、駄目なんだろうなという予感もあるんだ。

 人間社会で生きていく人間が、持ってはならない喜びだと思う。


 ……明日、負けるつもりは勿論ないが……


 勝って帰れたとしても、味を占めたらいかんよな。


 そんなことを烏龍茶のボトルを空けながら考える。


 そんなとき


「リューイチ、バーに居たんだ。探したよ」


 ……茉莉がやって来たんだ。




「え? 探してたのか?」


 電話してくれたら良かったろ。

 そう言おうとしたら


(あ……翻訳ソフトを立ち上げると、通知が分かりづらくなるんだっけ。普段俺、マナーモードだしな)


 会社で着信音を鳴らすと周囲に迷惑なので、俺は携帯端末の着信音をオフにしてるんだよな。

 だから気づかない。


 翻訳ソフトを終了すると、確かに着信が3回ほど入ってた。


「……悪かった。ずっと翻訳ソフト使っていたから」


 そう、謝る。

 すると


「別に良いよ。こうして見つかったんだし」


 そう、笑顔で許してくれて。

 続けてこう言ったんだ


 俺の向かいの席に座りながら。


「ちょっと訊きたいことがあるのね」


「……何?」


 何を訊きたいのか。

 想像がつかない。


 何だろう? 本当に。


 すると彼女はこう言ったんだ。


「ご両親の思い出を教えて」

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