第85話 ジャパンのコミックではあるあるでしょ
記憶データバックアップ。
蘇生用の新規ボディ作成の準備。
敢えて宇宙真理国の倫理観に合わせて、やったことを言ってみる。
楽しくも嬉しくも無いけどな。
ここまでのことは、大体昼の15時くらいまでに済んで。
その日の夕方18時から、予選終了の慰労会が宇宙真理国主催で行われた。
参加対象者は予選である程度の成績を残した参加者。
誰にも勝てず、倒されただけの参加者には参加資格がない。
……これが最後の宴会にならないようにしたいもんだ。
会場は首都一番のホテルの大広間。
そこを借り切って行われた。
「……これはすごいね」
俺以外に同行者の参加も認められたので、茉莉も参加。
会場入りすると、恐ろしく広い。
慰労会は立食パーティー形式だ。
そこらじゅうでホテルのスタッフが働いている。
料理運んだり。
お酒運んだり。
料理は汁物が無い。
それ以外は統一感が無い。
中華もあるし。
韓国料理もある。
西洋料理もある。
「あ、見てリューイチ」
茉莉が指差す。
「たこ焼きとうどん餃子がある!」
……マジか。
関西のB級グルメもあるんかよ。
スゲエな。
「Please take it」
……トレイにシャンパングラスを乗せた男性スタッフが、酒を勧めて来た。
拒否する理由が無いので俺たちはグラスを取る。
縦に長く、細いシャンパングラス。
中身は赤いスパークリングワインで、泡が立っていた。
これは高そうだ。
……こうなってくるとさ
「ちょっと食べ物を取って来るわ。リューイチはテーブル確保して」
……俺にシャンパングラスを手渡して。
茉莉が離れて行った。
そういうことなら……
シャンパングラスを2つ持ち、テーブルを確保しに動き出す。
で、手近な丸テーブルにシャンパングラス2つを置いた。
そのときに
「リューイチ!」
……聞き覚えのある声が背中から飛んできたんだ。
振り返ると
女性用スーツに身を包んだ、グリーンアイの金髪白人女性。
リンフィルトがいたんだよな。
……なんかメチャメチャ嬉しそうな顔で
「ああ、リンフィルトだっけ。午前中はどうも」
「覚えていてくれたか。嬉しいでございます」
ニコニコだ。
……まあ、感じはいいね。
機嫌良い人間は、悪い人間よりは感じが良い。
これは当たり前。
「ワタクシ、他の阿比須と戦った経験無いでして」
「……だろうね」
自分の敗北の理由を説明しに来たのかな。
自分のこれまでについて語り出すリンフィルト。
「ワタクシ、普段はプレジデント警護のため、金属糸を使ってるでございますよ」
そこで滔々といかに金属糸が非阿比須に対して有用かを語ってくれる。
広範囲で同時に何人も処理出来て、自分が使うと拳銃より速く相手を攻撃できると。
……素直に面白かった。
俺も一応武芸者だからね。
そんな感じで頷きながら彼女の話を聞いていると
彼女は
「直接の敗因は非阿比須相手に戦うことしか考えていなかったことでございますが」
そう言って、いきなり
……俺の手を握って来たんだ。
え、と思った。
そしてそのまま
「阿比須想定してリューイチとのバトルにチャレンジしたとしても、負けていたのはワタクシだったと思いますです」
技量の差をあの一撃でワカラセられました。
そう、告白。
で、俺の目を見つめて
「リューイチ、ワタクシとマリッジを前提として交際をして下さいませ。ジャパンのコミックじゃよくあるハナシじゃないですか?」
そんな、とんでもないことを言ってきたので。
俺はこの人いきなり何なんだと思い
いや、ちょっと待ってくれと言おうとした。
だけど
「はあ~~~?」
……何故かキレ顔の茉莉が近くにいて。
両手に持っていた、チヂミやうどん餃子、タイ料理っぽいものを何品か。
そう言うものを乗せた皿。
それをつかつかつかとテーブルに歩み寄って置いて
そのままリンフィルトに顔を向けて
「What are you saying all of a sudden!? You should go to the hospital!」
……何か英語で言ったんだ。
えらく冷たい目で。




