第111話 覚悟してね
俺たちは結構衝動的に最初のキスをした気がする。
彼女は俺のために殺人幇助に繋がる射撃を決めてくれた。
彼女の光線銃の腕は知ってる。
その気になればピンポイントで指だけ射貫くなんて芸当、わけないはずだ。
だけど、だから決められて当然だなんて言えない。
自分が射撃を決めれば、間髪入れず俺がそいつの命を絶つ。
そんなこと、絶対に分かり切ってる。
それを分かっていながら、躊躇わず決めてくれた。
それが嬉しかったんだ。
すごく、嬉しかったんだ。
……倫理的にどうなのかは知らないけどな。
キスをした後。
俺たちは見つめ合い。
今度は意志を持ってキスした。
彼女のことを固く抱きしめながら。
「AAAAAAAAA!!」
こいつの右腕、複雑骨折だ。
前腕部の折れた骨が皮膚を突き破って飛び出してる。
結構、派手に折れたな。
まあ、奥義の蹴りで蹴ったからな。
本来は「自動車事故で対象が死亡したと誤認させるための蹴り」なんだよな。
威力は推して知るべし、だわ。
俺たち2人は、最後の1人生き残り……白人男を無感情に見下ろしていた。
別にもう、怒りも無いし。
……罪悪感も無かった。
俺は右手を振り上げた。
そして
俺は達磨転倒を使用し、白人男の右腕の肘から先を切断した。
……悲鳴が止まる。
いたいのいたいのとんでいけー、って感じだな。
損傷個所が消えたから、痛みが消えたんだ。
……刃物で人体を斬り落とすと、幻肢痛というやつが出るという話だけど。
実際にはもう無い部位が痛んだり、痒くなったりする、そういう症状。
この奥義で斬り落とすと、そういうことは起きないんだよな。
それに関しては、自分の身で確認しているし。
静かになった男に対し、茉莉はしゃがみ込み、見下ろして。
「If you don't want to be killed, submit to us」
静かにそう言った。
何を言ったのか良く分からなかったけど、男が青ざめて、イエス、イエスと連呼していたのが印象的だった。
生き残った白人男……茉莉によると、ジョージとかいう男。
そいつに命じて、ハッキングしたこの船のAIを元に戻させ、その他の妨害工作を軒並み解除させ。
会社に連絡を取り、俺たちは地球に引き返すことにした。
流石に、こんな状態で仕事を継続なんてできないからね。
ハッキングされたAIが本当に元に戻ってるかどうかなんて、プロの診断無しでは分からんし。
第一、大量の人間の死体と一緒に、心穏やかに仕事できるほど俺たち人の心を捨ててない。
……ちなみにジョージは地球に一緒に連れ帰り、警察に引き渡す予定だ。一緒に乗せておかないと危ないからね。
そして引き返す準備が整った後。
船外の様子をもう一度モニタで確認すると……
ユニコーンの姿はもうなかった。
……しかし
「何でユニコーンが現れたんだろうか?」
誰かの答えを期待したわけじゃないけど、俺がそう呟くと
茉莉が
「……そうねぇ」
彼女が思ったことを教えてくれた。
彼女はこう言ったんだ。
「ユニコーンって、出会うと会った人間の周囲から病気を取り去るUMAなわけじゃない? ……ほとんどやってること、神様よね?」
「……そうだな」
確かにそうだ。
それで?
俺が先を促すように彼女を見ると
「そんな善意に溢れた生き物が、自分の生活圏内で決して見過ごせないような悪逆非道が行われていることを察知したら、放っておかないと思わない?」
……あ。
そういう視点、無かったな。
確かに善意で動いている存在が、人間同士のことには干渉しないと、拾える命を拾わないような行為、しないかもしれないな。
でも、だったら……
そして俺がそれに関して意見を言おうとしたら。
「だったら人類の目の前にもっと堂々と出てこい、って話だけどさ……それは出来ない理由があるのかもしれないし」
なるほどね……
すかさず入った彼女の意見に、俺は納得してしまった。
全て仮説の話だけど、なんだか納得したんだよ。
そして小さく笑ったら、俺は彼女に首を抱かれ、またキスをされた。
彼女は笑顔だった。
笑顔で……こう言ったんだ。
「私さ、結構前からあなたに惚れていたんだよね。……覚悟してね」
……そっすか。




