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第107話 俺が童貞を捨てた日

 なるほどな……

 前に実家でテレビで見たとき。

 適当なことを言いやがって、と思っていた「彷徨(さまよ)う無人宇宙船」という都市伝説。


 あれは多分、本当にあったこと……完全な作り話でない、元ネタのある話だったんだな。

 本当に、無人の宇宙船が発見されることがあるんだよ。

 何も船に傷ついてない、人だけ消えた、ってのはおそらく盛っていたんだろうけど。

 脚色として。


 アレは別に四次元に乗組員が消えたのではなく。


 真実は乗組員が宇宙海賊に攫われて、いなくなったから。

 メチャクチャ単純な答え。


 何も珍しいことでは無い、それゆえ最低の真実だ。


「抵抗しなきゃ怪我はさせねぇよ。お前ら、バラ売りするから」


 重要事項を事務的に通達。

 そんな感じで言ってくる。


「永久に別れる前に存分に話をするんだぞ」


 とても残酷極まりない内容を。

 まるで、思いやりのように。


「思い残すことが無いようにな」


 そう、日本人の宇宙海賊が嗤いを交えながら言った言葉に。

 この時代に、ここまで邪悪な人間が実在しているんだなと感じ。


 ……令和の時代に、暗殺拳を作ってしまった初代様も、ひょっとしたらこんな場面に遭遇したのかもしれない。

 そんなことを……ふと、思った。


 こいつらは、これが初犯なわけがない。

 これまでも、散々人を攫って売って来たんだろう。


 技術的にどうやってるのか知らないが、襲撃を掛けるのに都合のいいポイントに来てしまった人々を。


 その中には、俺たちみたいな企業勤めの社会人もいただろうし、親子もいたかもしれない。

 ひょっとしたら、恋人も……


「……なぁ」


 俺は訊くことにした。

 背中に茉莉を庇いながら


 日本人宇宙海賊が俺の言葉に反応する。


 俺は……


「お前は学校の道徳で習わなかったのか……? 他人の苦しみを想像し、痛みが分かる人間になれと……」


 そう、口にした。

 そしてそんな俺の言葉を


 日本人宇宙海賊は噴き出すことで応えたんだ。


「馬鹿じゃねえの? 一番大事なのは自分だろ? 世の中弱肉強食。そんな戯言はな、中学生くらいで卒業するもんだぜ?」


 ……オーケー。


 分かった。


「He said, can't you understand the suffering of others?」


「He must be stupid」


「HAHAHAHAHAHA!!」


 ……宇宙海賊の男たちが、英語で会話し盛り上がる。

 言葉の意味は分からないけど、内容は分かるさ。


 俺をこき下ろして、嘲笑ってるんだな。


 ……好都合。


 俺は脚をたわめた。

 飛び出すために。


 そして


 阿比須龍拳奥義・蜚蠊ごきぶり疾走だっしゅ


 最初から最高速度で踏み込む奥義。

 結果として次の瞬間。

 一番近くにいた黒人の男の傍に……まさに一瞬で間合いを詰めて接敵する。

 拳を振り上げ、奥義の一撃を繰り出しながら。


 阿比須龍拳奥義・脳髄粉砕。


 突然、間合いを詰められて。

 対応できず、まともに奥義の拳で頭部を殴られ。

 黒人の男はその勢いのまま床に叩きつけられて、動かなくなった。


 この奥義は……闘気を込めた拳の一撃で、外傷を残さずに脳髄だけを完全破壊する技。

 まともに喰らえば確実に死に至る。


 ……俺はこの技をヒトに対して使ったことはこれまで無かった。


 俺は今日、生まれてはじめて人を殺した。

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