第8話 思案
イラニスの拠点近くの町は静かなものだった。いつもの通りなのか、事件の影響なのか、まだ始めて3日目の千陽にはよく分からなかった。
3人揃ったところで、イラニスの拠点へ向かった――
クアティティアの拠点が西洋風の古城に対して、イラニスの拠点は日本風の古城だ。3人は門をくぐり、中にいたイラニスのギルドメンバーにウォラルが待つ部屋に案内してもらった。
「来たか⋯」
「お忙しいところ時間を作っていただきありがとうございます」
「適当に座ってくれ。さっそくだが、昨日、高原でステラクシーが失踪したそうだな。まさか君たちの目の前でとは」
「もう知ってましたか」
「まぁな…」
ウォラルは深い溜め息をついて、グッと顔を上げる。
「君らはどこまで知りたい?どこまで関わりたい?どこまで助けたい?」
「…」
千陽たち3人は顔を見合わせる。一体、何事だと言うのだろうか?
「俺は全部だ。例え、俺に関係ないところも全部だ」
「…」
一瞬、千陽は昨日バディステラクシーを失ったプレイヤーの顔が思い浮かんだ。
助けられるなら助けたい。でも、自分に何が出来るというのだろうか。
ウォラルの覚悟に気圧されて、自分の曖昧な気持ちを千陽は声に出せなかった。それでも――
「教えてください。その上で自分に出来ることを探します」
千陽の言葉を聞いて、ウォラルは頷き、話し始める。
「以前は本当にたまにだったんだ。バグなんじゃないかと言って終わるくらいのレベルだったが、ここ数日は立て続けだ。だから、今まで我々人間側が観測できていないだけで、消失事件は他にも起きていたのかもしれないと考え始めている」
「Meiの運営はどんな対応をしているんですか?」
千陽の発言にみんな揃って千陽の方を見る。
「え、なんかおかしなこと言った?」
「Meiは管理者不明、製作者不明。問い合わせ先が分からないんだ」
「あ、なるほど」
なんだ知らなかったのかと、ウォラルは少し呆れ顔で話を続ける。
「そういう理由もあって、プレイヤー同士で情報を共有して、調査を続けている。事例が少なく得られた情報も少ないが過去のデータをまとめたものがある」
ウォラルから千陽へ書物が渡される。書物は古びた事典のようだった。それほど分厚くないが、気持ち的には重く感じた。
「Meiには噂が多くある。それらがこの事件に関係あるのか今のところわからないが、何か分かったら情報共有を頼むよ。それ読むのに、この部屋使ってもらって構わないから。俺は他にもやる事あるから自分の部屋に戻るよ」
話が終わり、ウォラルが部屋を出て行った。
緊張の糸が切れ、千陽は不意にある考えが頭をよぎった。
一歩間違えば、消えていたのはポワだったんじゃないか?
そう考えたら、ゾッとした。
いつか自分の身にも起こるとしたら、この件を無視してこの世界を楽しむことはできない。
もしかしたら、今このときも誰かが消えているのかもしれない――
次回は幕間
2026年3月6日(金)投稿予定




