第7話 消失
日暮れ前、3人は最初の街に戻ってきた。
「明日、会いに行くから、イラニスの拠点近くまで行っといた方がいいかな?」
「それなら、拠点近くの町にあるログインポータルまで行ってからログアウトにしようか」
「わ〜。今からハイキングか〜」
「ハイキング?…イラニスの拠点ってどこなの?」
「知らずに伺いますって言ったんかい。火山の麓だよ。もう少し向こうにある街の出入り口を出たらしばらく高原を歩くことになるかな」
「え、マジ?」
「とにかく歩くしかないね。ソルトミルはログインポータルどんどん獲得していかないと」
「あ、そっか。付き合わせてごめんね」
「いいんだよ。ソルトミルがMei始めてくれたことが嬉しいんだから。とことん付き合うよ」
「それじゃ、しゅっぱ〜つ!」
「「おー!」」
3人の楽しそうな会話が高原に響き渡る。
「火山を見に行くこともできるし、火属性のステラクシーいっぱいいるよ〜」
「この辺だと、風属性のステラクシーの力を借りてスカイスポーツが楽しめる。リアルじゃなかなか出来ないよね」
「いいね。現実でやらないようなこともやりたい!」
「今、現在進行形のハイキングだって、リアルだったらやらないよ〜」
「あははは、頑張れ頑張れ」
「雪景色を見に行くのもいいね。現実世界はこれから夏だけど」
「それ、最高だね」
「ふ〜。結構登ったね〜。ここをまともに登るの久しぶりだ〜」
「オレンジ色に染まる街並み、いい景色だね」
「下も綺麗だけど、上も綺麗なんだよ。街の灯りから離れた高いところだから、星がよく見えるんだ」
「それで所々テントがあったのか」
テントを建て始める者、火を起こす者、椅子に深く腰掛け空を眺める者。各々が夜を迎える準備をしている。
「ソヨー!遠くに行くんじゃないよ〜」
「ヨヨ〜」
少し離れたところから、プレイヤーが自身のバディステラクシーに呼びかける。風属性のステラクシーが千陽たちの目の前をふわふわと風に身を任せ通り過ぎていく。
ザザザッ ジジジ――
風属性のステラクシーが、まるでノイズが発生したかのように、
そして、消えていった。
「「え?」」
「え、えぇー!消えた?!」
「何?何で?どういう現象?」
「ソヨ?ソヨー!?」
プレイヤーが手を伸ばし、泣きそうな顔で3人の方に向かってくる。その姿が、千陽の脳裏で誰かと姿が重なる。一瞬の出来事なのに、その瞬間がやけに長く感じた。
これは、誰…?
風が止み、一瞬静まり返ったその場は徐々に人々が集まり、ざわめき始めた。しかし、千陽は身動きが取れないまま、呆然としていた。
記憶のノイズが収まらない――
次回2026年2月20日(金)投稿予定




