第6話 接近
隊長について行くと、湖から少し離れた雑木林の中に青い西洋風の古城が見えた。それほど大きくはないが、ここがクアティティアの拠点なのだろう。中に入るとギルドメンバーがいた。
「ミズキ、おかえり!お客さんがお待ちかねだよ〜」
「ん?客?…あ〜」
隊長は何の事かと首を傾げたが、記憶の片隅にあった約束のことを思い出した。ギルドメンバーは隊長の後ろにいた3人に目をやる。
「あら、後ろの方々もお客さん?」
「ま、ついでに一緒に話をするでもいいか」
「「「?」」」
3人がそろって首を傾げる。
――ガチャ
隊長の後ろに続いて3人は部屋に入る。
「やっと戻ったか、ミズキ。…あれ?後ろの3人は」
げっ…
そこには昨日ギルドホールで会ったイラニスの隊長がいた。なんとなく昨日のやり取りで苦手意識を持ってしまった千陽は、一瞬声に出そうになったが、なんとか飲み込んだ。クアティティアの隊長が両方を交互に見て
「ん?やっぱり、知り合いだった?」
…“やっぱり”とは?
「昨日、ギルドホールで会った子たちだ」
ウォラルがスパッと返すので、千陽の違和感を挟む余地はなかった。
「さ、みんな座って!“この件”について、話そう」
「この子たちにも話すのか?」
「さっき湖でね、昨日のことについてステラクシーたちが言い争ってて、たまたまこの子たちが居合わせたんだよ」
「巻き込まれたのか?!」
「いいや、そこは私が止めに入った。ただ、この子たちには“この件”について教えてほしいと言われてね」
「そうか、なら仕方ない」
ウォラルはちょっと不満そうだ。
「あ、そうだ!自己紹介もしないまま連れてきちゃってごめんね。私はクアティティアの隊長をやってるミズキです。よろしくね」
「そういやぁ、昨日、俺も名乗らなかったな。イラニスの隊長ウォラルだ」
「名乗らずに若い子に声かけたの?イヤなオジサンね」
「お前も名乗らずに連れてきたって今言わなかったか?イヤなオバサンだな」
なんだか2人の間がバチバチだ。
「えっと、私はソルトミルです。と、…」
千陽が彩音と結花を見て固まる。2人は首を傾げる。
「ごめん。昨日の今日で、まだ覚えられてないや」
「あ、そういうこと。私はサイトです。テラディウム所属です」
「私はアカツキです。同じくテラディウム所属です」
「では、“この件”について始めていきましょう。先程のステラクシーたちが言い争いをしていたのは、昨日、水属性のステラクシー『チャプナ』が姿を消したことについてでした。水属性のステラクシーたちの話の内容では毒属性のステラクシーのせいだと主張していましたが、毒属性のステラクシーもまた同属のステラクシーが消えていると話してました」
ミズキがチラッとウォラルを見る。
「あー、はいはい。えー、まず、イラニスの調査隊からの報告だが、ステラクシーが消えた場所を特定、分析した結果、ステラクシーのデータはそこで消えていて、追跡は不可能だった」
「そう…。こちらもウチのチャプナミに周辺ステラクシーへの聞き込みをお願いしたけど、消える前に異常は無かったそうよ」
「今回も収穫なしか…」
…“も”?
「俺は今日忙しくてな。他も詳しく聞きたいのなら日を改めてくれないか?」
「…他とは?私は今回のことは今回だけのことと思っていたのですが、まだ何かあるということですか?」
千陽に指摘されて、ウォラルがハッとしてミズキの方を見ると、ミズキはあ〜ぁといった感じの呆れ顔をしている。自分の失言に気づいて、ウォラルは頭を抱える。
「日を改めればいいのですね?ぜひ聞かせてください」
千陽は逃さないと言わんばかりの真剣な眼差しを送る。
「はぁ〜、わかったよ。明日、イラニスの拠点まで来てくれるって言うなら」
「伺いますね。今日はありがとうございました。では、失礼します」
クアティティアの拠点を出て3人は街へ戻る。
3人は街へ戻る手前で野生のステラクシーを見かける。
――ザザッ
一瞬、歪みが生じた。
何かの前触れかのように――
次回は幕間(ちょっとしたお話)
2026年2月6日(金)投稿予定




