第5話 不穏
――ログインしますか?
草原地帯にある村のログインポータルで3人は待ち合わせをしていた。
「さて、今日は湖に行きますか!」
「「おー!」」
湖に向かって草原地帯を進んで行く。徐々に背の高い草が増えて、そのうち雑木林まで現れた。道なりに進むと、目の前が開けた場所に出た。そこには雑木林に囲まれた大きな湖があった。
「なんだか、くすんだ灰色だね」
「いつもは深い青色をしているのに、どうしたんだろう?」
普段は綺麗だという湖が薄汚れているように見える。
少し離れた場所で騒ぐ声が聞こえた。
「あ、いた!コイツです!」
「ちょっと話いいかな?昨日、うちのチャプナが姿を消した。その時、近くに君がいたと聞いている。何をした?」
「お前、何かしたんだろ!?」
「「そうだ!そうだ!」」
複数のステラクシーが1体のステラクシーを取り囲みヤジを飛ばす。怒りの感情の中に焦りや恐怖が混じっていた。
千陽は無意識に一歩出そうになったが、ハッとなって足を止めた。
「何…アレ?止めたほうがいいかな?」
穏やかではない空気に圧倒され千陽が迷っていると、彩音が首を横に振った。
「私たち部外者が口出ししても…」
取り囲むステラクシーたちはさらに煽っていく。
「この湖がこんな濁った色になったのだって、君ら『毒属性』のせいなんじゃないのか?」
ずっと黙っていた毒属性のステラクシーが口を開く。
「我々も被害者だ。つい最近、行方不明になった者がいる。それで、昨日、この辺りを探していたんだ。悪いが、そちらのステラクシーが行方不明なのも湖の件についても知らない。…と言っても信じてもらえないだろうけど」
毒属性の態度に周りのステラクシーたちはイラついていた。今にも殴りかかりそうな勢いだ。
「で、でも、アレ危ないんじゃ…」
「だからって、無理やり止めたとしても――」
――ザッザッザッ
「君たちは下がっていなさい」
突然、後ろからやってきた人物は3人を通り過ぎて、渦中へ向かった。
「…誰?」
「うっそ!『クアティティア』の隊長?なんで!?」
彩音は一瞬で通り過ぎて行った人物が身につけている腕章を見逃さなかった。さすがはガチ勢。
「その辺にしておいたらどうだ?証拠などないだろ?」
「あんたはクアティティアの…」
「邪魔しないでいただきたい。これはステラクシー同士の問題」
「本当にステラクシーだけの問題なのか?悪いが今、調査中でな。ハッキリとは言えないが人間側でも“この件”は解決したい問題だと思ってる」
「人間のくせに随分と悠長だな。所詮はデータって人間たちは思っているんだろ?」
その言葉に、千陽の心が小さく揺れた。
――そんなことない。
そう言いたいのに、声をかけることが出来なかった。
「とにかくだ。1体を取り囲んで、みっともない」
隊長が連れているステラクシーまで出てきて、野生のステラクシーを叱る。
「ほら、解散。解散!」
無理やり終わらされた感に両方のステラクシーは納得がいかぬまま帰っていく。
クアティティアの隊長がくるっと振り返り3人を見る。
「特に怪我ないか?」
「大丈夫です。それより教えてください。何が起こっているのですか?」
「まぁ、立ち話もなんだし、ウチにおいで」
唐突の誘いに3人はキョトンとする。
クアティティアの拠点に向かって歩き出す隊長の後ろを3人はついて行くしかなかった。
何も解決しないまま、
遺恨、不安、違和感、疑念、
それぞれが胸の内にしまい込むのだった――
次回2026年1月30日(金)投稿予定




