第4話 幻実
暗い草原地帯を歩いていると、少し遠くに灯りが見えた。
灯りから離れたところにプレイヤーたちが座り、談笑している。
灯りのある中心にはステラクシーたちが集まっている。草属性が多いが、他に風属性、水属性、音属性、地属性も少しいるようだ。
草属性であろう大きなステラクシーが一歩前へ出て、観客に向かって一礼をする。
「今宵はお集まりいただき誠にありがとうございます!今年もこの様に開催できるのを嬉しく思います。我々一同、精一杯、舞を披露させていただきます。皆様、ぜひ楽しんでいってください」
拍手が起こり、みんなが集中する。
そんな中、千陽は驚いた顔をして、彩音たちに問う。
「待って、ステラクシーってしゃべるの?!」
「あれ?まだ知らなかったの?」
「第三形態はしゃべるよ〜」
「ちなみに、第一形態はしゃべれない代わりにキュウブに感情がアイコンで表示されるよ。そんでもって、第二形態は少ししゃべれる」
「シャベレルゾ」
シロルがひょこっと顔を出す。千陽は予想外なところから声がしてさらに驚いた。
「ほらほら、始まるよ」
風属性が風を起こし
草属性が舞う
水属性が水を飛ばす演出をし
音属性が奏でる
地属性が取り囲み、盛り上げる
風に乗り、草や花が舞い散る
水が灯りを受け、星のように輝く
それらすべてを包み込む、優しい音
これが人ではない何かが作り出す世界
幻想的とはまさにこういうことなのかな…
肌に触れる暖かな春の風とともに
鼓膜を揺らし脳に伝わる音が心地良い
先ほどニコニコしながら挨拶をしていたステラクシーは、中心で綺麗な舞を魅せる。しかし、挨拶していた時と表情が違い、どことなく儚げだ。まるで、いつか終わりが来ることを知っているような。千陽は、無意識のうちにそのステラクシーから目を離せずにいた。目の前の光景がいつか終わってしまわないようにと願ってしまうほどに。
ある者は見惚れ、ある者は涙し、千陽も心が温まるようだった。けれど、少しだけ胸を締め付けられる感覚があった。
知ってる…。この感じを知ってる気がする。
夢なのか、過去なのか、どこで、いつのことなのかも、わからない。思い出そうとしても、霧がかかったような感じで、まったくはっきりしなかった。
「夜も遅いし、ログアウトしよう〜」
「今日、とっても良かったよ。また明日もどこか行きたい!」
「こういう綺麗なのが気に入ったなら、明日は湖に行こうか」
「やったー!楽しみ!!」
「それじゃ、また明日。おやすみ」
「「おやすみ〜」」
ヘッドギアを外すと、真っ暗な部屋。
見たくない現実から目を瞑り、Meiで見たたくさんものを思い出す。
幻想的な光景だが夢ではない。ただ、現実でもない。不思議な世界。
でも、確かに“ここにある”という実感だけは、はっきりとしていた。
何もやる気が出ない。もう寝よ。
明日の現実と仮想空間、どちらも等しく訪れる――
次回2026年1月23日(金)投稿予定




