第2話 待っていた存在
遠くに街の入り口らしきものが見えた。
もう少しかな。
コロコロ、コツッ――
後ろで小石が転がりぶつかる音がした。千陽が後ろを振り返ると、岩陰にサッと影が隠れた。千陽は何かが見えた気がしたので、岩陰をのぞき込む。
あれ?何もない。…気のせいか。
気になったが、待ち合わせもあるので、先を急ぐことにした。
街の入り口に来ると、賑わいが聞こえてきた。
結構人いるんだなぁ。あ、彩音に連絡しよ。
「キュウブオープン」
えーっと…。メッセージは…、これか。
『街の入り口まで来たよ』っと、送信!
………ポンッ
返信早っ。『近くのベンチで待ってて』か。
千陽は辺りを見回すといくつかベンチがあったので、手近なベンチへ腰掛けた。そのベンチの下にサッと影が忍び込む。
さて、これから何をしようかな。
これから始まるMeiでの生活に胸を膨らませながら、友達を待つのだった。
少し経って――
ポンッ
ん?彩音からメッセージだ。
『キュウブ開いたまま、左手上げて』
はい?????
とりあえず、言われた通り左手を上げてみる。
「みーつけた!」
キュウブの画面越しに誰かがバッと覗き込んできた。
それから、もう一人が小声で
「千陽で合ってるよね?」
と確認されて、ハッとなり、うんうんうんと首を縦に振る。
「よかった〜。人が多かったから、どの人がわかんなかったよ」
「あ、なるほど。だから、左手上げてって指示だったのね」
「とりあえず、フレンド登録しとこっか」
「どうやるの?」
「こっちからフレンド申請送るね。えーっと、近くのプレイヤーから…。プレイヤーネームどれ?」
そう言って彩音が画面を見せてくる。
「あ、これ。『ソルトミル』」
「え?岩塩粉砕器?」
「それを言うなら塩挽きでしょ」
「どっちにしてもダサいから訳さない」
「「はーい」」
彩音と結花それぞれからフレンド申請が送られてきた。
「彩音が『サイト』…と、結花が『アカツキ』ね」
「うん。それとこっちが我々のかわいいかわいいバディステラクシーたちね。私の方は種族ソルクシー、音属性、第二形態の『シロル』」
「私のは種族ルナクシー、草属性、第一形態の『デラ』」
「なるほど、これがステラクシー。どっちもかわいいね」
「ソルトミルのステラクシーもかわいいね」
「はい???」
「ベンチの下にいるのバディステラクシーじゃないの?」
ベンチの…下???
何を言っているのかわからないが、とりあえずベンチの下を確認してみることに、すると――
「ポポポポーーー!」
突然、目が合ってベンチの下にいた何かは驚いて騒ぎ出した。
千陽はバッと顔を上げ、2人を見る。
「何かいる…」
「あれ?もうスキャン済みなのかと思ってたんだけど」
千陽はもう一度ベンチの下を覗き込み。そのステラクシーをじっと見つめる。
…あの、背中の月みたいなのは………
「あ!さっき道の岩陰でチラッと見えた月だ!!」
「何?道の岩陰って?この子ずっとあんたについて来てたってこと?」
「なんで?」
「いや、こっちが聞きたい」
「バディステラクシーまだいないなら、せっかくだし、その子にしたら?きっとその子、ソルトミルのこと好きなんだよ〜」
出た!結花のゆるゆる適当発言。まぁ、確かにどのステラクシーがいいとかこだわりはないしなぁ。う〜ん。
ベンチの下でステラクシーは右へ左へ慌てふためき、終いにはベンチの足へぶつかって転んでいる。
「ふっ。かわいい」
思わず、笑いが起きる。なんだか「ここから出してあげたい」そう思えた。千陽はステラクシーに手を差し伸べる。
「おいで」
不安そうにしていたステラクシーが嬉しそうに千陽の手に乗る。ベンチの下から出してあげ、抱き上げる。
「君、温かいね」
「その子は種族ルナクシー、火属性、第一形態の『ポワ』だね」
「バディステラクシーその子にしちゃいなよ〜」
「えっ?いいの…かな?」
急に不安がる千陽。
「だって、その子嬉しそうだよ」
千陽がポワに目を向けると、目が合い、ポワはボッと火を出す。揺らめく火がキラキラと輝く。千陽は火を見て、ぼーっとする。
「……ミル。ソルトミル!…大丈夫?」
………はっ!
「だ、大丈夫!熱くないよ。全然熱くない。温かいくらい、あははは」
「もー、びっくりしたよ。大丈夫ならいいけど」
「火属性のステラクシーは気持ちで熱さ調整できるんだって〜」
「え、それ、どこ情報?」
「けいじば〜ん」
「ただの噂じゃない?」
「気持ちで……」
千陽はぼそっとつぶやくとポワをぎゅっと抱きしめた。
伝わったよ。君の嬉しい気持ち。
「私、この子にする…。この子がいい!」
「そっか。じゃあ、スキャンしなきゃだね」
「うん。キュウブスキャン!」
キュウブが8つに分かれ、ポワを取り囲む。8つが光でつながり球を成す。キュウブの光が収まると、元の四角に戻り、『バディステラクシー登録完了』の文字が表示される。
「これからよろしくね。ポワ!」
「ポポー!」
千陽が案内所に入った頃、ある場所にて――
―ログイン通知―
〈 〉がログインしました。
はっ!このログイン通知は…
「すまんが、少し外に出てくる」
「へ?…ちょ、どこ行くんですかー」
腕章をつけた男が部屋をサッと出て行く――
次回2026年1月9日(金)投稿予定




