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青き星の英雄達  作者: RYOKUEN
7/11

第六話 迷子と双子

こんにちは 作者のRYOKUENです。やはり長くはないですが、がんばって書きましたのでよろしくお願いします。

レイディン城 廊下



レイディン城の廊下には一人の少女が周りをキョロキョロと見渡しながら歩いていた。

セイナは治療室からレインが出て行った後、少しの間ぼーっとしていたが、いい加減退屈になり、近くにあった自分の靴を履き、ベッドから降りて廊下に出ていたのだ。



「う~ん、レインはどこ行ったのかなあ。治療室から出てから結構歩いちゃって治療室の場所もわからなくなっちゃったしね・・・」



そうなのである。


レインはグリンに会ってあげてと言っていたのだが、場所まで教えてくれなかった。

退屈しのぎに自分で探していたのだが・・・。


場所が場所だ、例えば店の中で迷子になったぐらいだったら、人を探し出すことは簡単だが、フロル王国の首都レイディンブルクの王城である。デイン、ディーネの城には劣るがそれなりの大きさがある。

そんな中でセイナはグリンを見つけられるはずもなく、治療室への道もわからなくなってしまった。


「む〜どうしよう・・・・このままグリン達に会えなくなっちゃったら・・・・」



そうセイナが“トホホ・・・”と落ち込みながら歩いていたら、廊下が終わりにさしかかって、下に降りるための階段あたりに人影が見えた。後ろから見るとグリンと同じぐらいの背だろうか、地味なグレーのローブを着て警戒しながら周りを見ていた。

セイナはあの人には近づかないほうがいいと感じつつも、このまま迷子になってるのはまずいと思ってその人に声をかけることにした。



「あのぉ・・・・」



「ひゃッ!!」



いきなり声をかけたので驚いてしまったようだ。セイナは驚かしてしまったことをあやまったのだが、こっちを向いてあわあわと焦っている顔をみると今度はセイナが驚いてしまった。その顔は緑色の髪をしていて透き通るような水色の目をしていた。



「え、ええと・・・グリン?」



「あわ、あわわわ!!ごめんなさい!その、あの、に、逃げ出そうなんて、こ、これっぽちも考えてないですよ!!それじゃあ!!」



「え?ちょ、ちょっと!」



グリン(?)は、なぜか大慌てで、その場を走り去ってしまった。セイナは訳が分からず、あとを追ったが、足が速すぎて追いつくことが出来ずに気がついたら城の中庭まできてしまっていた。



「はぁ・・・はぁ・・・・はあ・・どれだけ足が速いのよぉ。あれじゃあ、追いつけないよ」



走り疲れて息を切らしていたセイナは近くにあったベンチに座ると一息ついた。すると、セイナの方に青い鎧をきた少年が向かってきた。後ろには緑色の鎧をきた兵士5人を従えて。



「あ、ロイ!」



「セイナじゃないッスか。どうしたッスか?こんなところで。まだ治療室で寝ていたハズじゃ・・・・」



「あ〜えっと、その、レインが一度部屋にきてグリンに会ってあげてって言ってたんだけど、グリンがどこにいるのか、わからなくて迷子になっちゃって・・・」



「そうだったんスか。それじゃあオイラが案内してあげるっすよ」



セイナは苦笑しながら立ち上がり、スカートをただすと、そういえばと言ってロイのほうを向いた。



「さっきグリンがいたんだけど声かけたらどっか行っちゃったのよねえ。どうしてだろう・・・・」



するとロイはえっ?と言うとセイナの肩を掴みながら詰め寄った。



「そ、その人はどの方向に行ったッスか!?」



「え?えっとぉ・・・あっち・・・かな?」



セイナは突然肩をロイに掴まれたことに驚きつつも、グリン(?)が走って行った方向を指さした。するとロイは指差された方向をバッとふりかえり、兵士たちにいくぞ!と声をかけるとその方向に走って行ってしまった。



「ちょ、ちょっと!まってよ!ロイ!!・・・・はぁ・・・・」


取り残されたセイナは、深くため息をつきながらベンチに再び座り直した。さすがに疲れた。ロイはグリン(?)を追っていたようだけど、自分のことはすっかり忘れてしまっていたようだ。

ベンチに座って中庭を見て見ると、真ん中には大きな噴水の水が空に向かって高く噴き出していて、その周りには様々な種類の花が風に嬉しそうに揺れていた。



「そういえば・・・・デインの城には花なんてなかったな」



セイナは悲しそうにそうつぶやくとため息をついて再びその噴水と花々を見つめていた。すると、近くの草木でガサガサと音が聞こえた。セイナは音がしたほうを向くと木の後ろにだれかいるようだ。



「だれかいるの?」



その声に反応して、そそくさとその人影は木の後ろに隠れてしまった。



「グ、グリン?」



さっきの逃げて行った人だった。やはりその顔は、どう見てもグリン、グリンフィア・レイジの顔だった。しかしその顔の主は声をかけられてもあわあわとしているだけだった。



「え、えとえと、私はお兄ちゃんじゃないよ?」



「お、お兄ちゃん??」



セイナは意味がわからずにおでこに指をたてて頭には?ばかり浮かんでいた。目の前にいる子はグリンの弟なのか?しかし・・・その顔は見ればみるほどグリンにしか見えなかった。



「あわわ、そ、そっか、これじゃよく見えないね」



そういいながら、グリンの弟らしい子は茂みから出てきて、灰色のローブの頭の部分を取ると、セイナのほうを向いて、両手を可愛らしく前で握りしめた。


・・・・・女の子?


セイナがそう頭に浮かんだ瞬間、目の前にいる子はニコッと笑った。その笑顔はどこか幼くて、天使のような笑顔だった。



「こんにちは、わたしの名前はルーナフィア・レイジ。グリンフィア・レイジの双子の妹です。」



セイナは口をポカンと開けて驚いていた。グリンがふざけているのかと思うほど顔も髪の色も目の色まで同じだった。しかしグリンと違うところもあり、グリンのようにがっしりとした体ではなくて、華奢で背はセイナより低くく、グリンより長いポニーテールは腰のあたりまで下がっている。その姿はまだ幼い少女だった。ルーナと名乗った少女は、茂みからでると不思議そうな顔をしてセイナをみた。



「えとえと、わたしの顔になにかついてる?」



セイナがジッと自分の顔を見ていたのでルーナは少し恥ずかしそうに頬を赤くしていた。



「あ、いや、別になにもついているわけじゃないけど・・・・やっぱりグリンそっくりだなあと思って」



「ふふふ、わたしたち双子は生まれてから何度も間違われて大変なんですよ?それよりも・・・・あなたがセイナお姉ちゃん?」



セイナは焦っていたが、ルーナは気にせずに微笑み、上目づかいでセイナに問いかけた。

セイナはルーナが知るはずのない自分の名前を言ったので驚いた。


「そ、そうだけど・・・?」



するとルーナはパァッと顔を再び笑顔にしてセイナに抱きついた。セイナは倒れはしなかったものの、いきなり抱きつかれたので、慌てた。


「キャッ え、え?な、なんで?」



セイナは焦りまくっていたが、抱きついてる本人はムフ〜とセイナの胸に顔を埋めてうれしそうだ。



「ちょ、ちょっと、ルーナ!なにしてんの!?」



「えへへ〜」



ルーナは離してくれなかった。どうやらかなりの甘えん坊のようだ。

しかしセイナには、ルーナがなんで抱きついてくるのか意味がわからなかった。

少しの間そのままルーナはセイナに抱きついていると、顔を上げた。その顔は満面の笑みだった。



「やっと見つけたよぉ。セイナお姉ちゃんッ。ずっと探していたんだよ?治療室にもいなかったし・・・・お兄ちゃんからお姉ちゃんのこと聞いてて、すごく優しい人って聞いてたから、会いたくてしょうがなくなっちゃって、無断で部屋を飛び出てきちゃった。」



そういいながらぎゅーっとふたたびセイナに抱きついた。



セイナはルーナが言っている事がよく飲み込めなかった。どうやらルーナはグリンから自分のことを聞いていたみたいだ。それで、自分に会いたいと言って、探しにきたようだ。それなのに何故地味な格好をして身を隠すようにしていたのだろうか。



「ルーナ!!」



いきなり中庭に大きな声が聞こえた。その声にルーナの体はビクッと震えて、セイナはその声のほうを向いた。そこには黒色の長ズボンをはいて、灰色のTシャツを着ている少年がすこし怒った表情で立っていた。


「どこに行っていたんだよ。城のみんながお前がいなくなったって大騒ぎだぞ」



「む〜少しくらい、いいじゃん。お兄ちゃんが言っていたセイナお姉ちゃんと会いたくてしょうがなかったんだから」



ルーナは頬を膨らませて少し不機嫌そうだ。グリンは一度小さくため息をつくと、チラリとセイナの方を向いた。



「起きてたのか、セイナ。体の調子はどう?」



「あ、う、うん。もうぜんぜん大丈夫だよ」



「そうか。そいつはよかった。」



グリンはセイナが無事だったことに笑顔になると、すぐに真剣な顔になるとルーナに向かった。



「ルーナ。お前の身に何かあったらどれだけの人が悲しむかわかっているのか?ロイとゲン、大臣達も大騒ぎしながら探しまわっていたぞ」



「う〜・・・・ごめんなさい。で、でも、どうしてもお兄ちゃんが言ってたセイナお姉ちゃんに会いたかったんだもん・・・・」



ルーナはグリンに叱られてしまったので、しょんぼりしてしまっていた。セイナはどうすればいいかわからなくなったなっていたが、グリンはフッと苦笑した。



「まあ、しょうがないと言えばしょうがないか。ルーナにとってセイナは初めての女の子友達なれそうだからな」



「え、そうなの?レインとは仲良くないの?」



「レインはルーナとまだ会ってないよ。レインは初めてこの城に連れてきたんだけど、だれかと違って迷子にもならないし、すごいと思うよ」



セイナは自分のことだとわかると顔を赤くしてしまった。



「まあ、そんな訳だからルーナの行動も仕方ないさ。だからセイナもルーナと仲良くしてくれないか?」



「うん、わかったよ」



そう言うと、セイナはいまだに落ち込んでるルーナの頭をなでた。ルーナはセイナに撫でられるとセイナの顔を見た。



「大丈夫だよルーナ。グリンも、もう怒ってないよ。みんなにも謝れば許してくれるよ。私もついていって、一緒に誤ってあげるよ」



ルーナは小さく頷いた。そしてセイナはそのまま言葉を続けた。



「それと・・・・私と友達になってくれないかな?私もルーナと仲良くなりたいな」



セイナが少し恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうに言うとルーナはいままで落ち込んでいたのが嘘のようにパァッと再び笑顔になった。



「よかったな。ルーナ。セイナと友達になれて」



「うんッ!セイナお姉ちゃん、これからよろしくね!」



双子のグリンとルーナ、そしてセイナはしばらくの間ベンチに座り、笑顔のまま会話をたのしんだ。






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