第五話 襲撃とその後
こんにちは。作者のRYOKUENです。やはり更新速度が遅いですが、どうかのんびりと読んでやってください。
『青い鳥』アジト 屋根の上
謎の襲撃により、『青い鳥』のアジトは燃え上がっていた。その屋根にいたグリン、セイナは共に逃げ場を失い、苦しい表情をしていた。小屋は三階建てだ。屋根から飛び降りたりすることは自殺行為に等しい。しかし、屋根から上り下りするためのハシゴも焼け落ちてしまって逃げ場が完全に無くなってしまっていた。
「くそッ!完全に逃げられなくなっちまった!さすがにここから飛び降りるのは無理だぜ!」
「ど、どうしよう、グリン・・・・」
グリンとセイナは必死に逃げ道を探していた。そのとき下から声が聞こえて二人が地面をのぞき込むと少年が一人で戦いながら、こちらをに向かって叫んでいた。青い髪をした少年、ロイであった。
ロイは真っ青な鎧を着て、手には自身と同じぐらいの大きさの大剣を持っていた。その大剣を使って周りにいた、赤いローブを着て魔法で小屋に攻撃している謎の襲撃者と戦っていた。
「グリンッ!セイナッ!無事ッスか!?」
「なんとか大丈夫だッ!でも、ハシゴも落ちちまって下に降りれない!」
そうグリンが叫んだ瞬間、一つの《ファイアボルト》がセイナとグリンの背後から襲いかかった。
その火球は二人に直撃しなかったものの、屋根にぶつかり爆発と砂埃を起こし、グリンとセイナはその爆発により吹き飛ばされてしまった。二人は悲鳴を上げて、ロイは驚いた顔で二人に叫んだ。
「キャッ!?」
「うわッ!?」
「グリンッ!?セイナッ!!」
二人とも地面の方を向いていたため、背後からの攻撃に気づくことができなかったのだ。グリンは屋根の上にあった煙突に叩きつけられて、がはッと悲鳴を上げた。
このときグリンはまだ良かったのかもしれない。なぜならセイナは屋根の端まで吹き飛ばされて、間一髪のところで屋根に手を掛けてぶら下がっていた。
「ッ!?セイナッ!!」
グリンは自分の痛みをこらえてセイナに駆け寄り、セイナの手を握り、引き戻そうとした。しかし、グリンの足元が崩れ落ちてしまい二人とも屋根から落ちてしまった。ここは三階建ての屋根。落ちたらひとたまりもない。二人は悲鳴を上げてなにも出来ずに落ちていく。
二人を、戦いながら気にしていたロイは驚愕した顔になった。戦っていた相手を無視して、急いでグリンとセイナの落下地点に駆け出したが間に合いそうもない。
「うわああぁぁぁッ!!」
「きゃあああああぁぁぁぁッ」
「くそッ!!間に合わないッ!!」
セイナは死を覚悟した。ああ、昨日も同じように覚悟したっけ。でもグリンが助けてくれた。でもそのグリンも今一緒に落ちてしまっている。今度こそだめだ。このまま・・・・・わたしは死ぬんだ。そう心の中で呟いた。
周りは火の海でさらに三階建ての小屋の屋根から落ちたらひとたまりもない。そう思い、目を閉じたが、すぐに体になにか堅いものにぶつかった。おかしいな、あまり痛くないや。そうか、死んでしまうと覚悟を決めると痛くないのかな。でも・・・・・地面にぶつかるのは・・・・少し・・・・・速い・・・気が・・・・する・・・・・
そのままセイナの意識は遠のいていき、炎の燃え盛る音と共に暗闇のなかに落ちていった。
フロル王国 王城 治療室
セイナは太陽の光で目を開けた。そこには見慣れない石作りの天井があり、セイナはゆっくりと身を起こしてまわりをキョロキョロと見渡した。少し大きめの部屋で窓がいくつかあって、そこから光が射していた。ほかにもたくさんのベッドや薬品が入っている戸棚などが置いてあった。
「ここは・・・・どこだろう・・・?」
そうセイナが呟いたとき部屋の扉が開き、野菜スープをトレイに乗せて持っているレインが現れた。銀髪の少女は相変わらずの無表情でセイナを見ると口を開いた。
「・・・・・ここはフロル王国の首都、レイディンブルクのレイディン城よ・・・・」
そうレインは言うとセイナの方にゆっくり近ずいてきて、セイナが寝ていたベッドの隣にあった小さなテーブルに野菜スープを置いてセイナに呟いた。野菜スープはおいしそうに湯気をたてている。
「自分で・・・・・飲める?」
セイナはぼーっとしてレインの動きを見ていたのでいきなり声をかけられて驚いてしまった。
「だ、大丈夫。自分で飲めるよ」
「そう・・・・・」
レインは素っ気なくそう言うと近くにあった椅子にちょこんと座るとセイナをジッと見ていた。セイナはレインに見つめられたので慌てて野菜スープを飲み始めた。疲れていたのだろうか。野菜スープはちょうどのよい熱さでとてもおいしかったので、すぐに飲み干してしまった。
「私、なんでここにいるんだろう・・・・・そうか・・・・・小屋の屋根から落ちて・・・・それから・・・・・・ッ!?グリンは!?小屋はどうなったの!?」
セイナは出来事を思い出して叫んだ。しかし、レインは残念そうな顔をしてこう呟いた
「グリンは・・・・・あなたと同じで気絶してた。・・・・でもあなたより速く目覚めて元気よ・・・小屋は・・・・・」
レインは目を閉じて首をふった。セイナはすぐに小屋がなくなってしまったことに気づき悲しい顔になった。
「私の・・・せいだ・・・私のせいであの小屋は燃えてしまった。みんなの大切な小屋が無くなってしまった。」
セイナは俯き、目には涙が溜まっていた。襲ってきたのは赤いローブの魔術師だった。デイン軍の兵はみんな赤い鎧や衣服を身につけているので、おそらくその魔術師たちもデイン軍であるのは間違いない。そして自分を殺しにきたことも。自分がいたせいで大切な小屋が焼かれてしまい、みんなにも危険な目にあわせてしまった。レインはセイナの様子をジッと見ていた。セイナが泣き始めるとセイナの頭を撫でながら囁いた。
「あなたは・・・・・わたしと同じなのね・・・・でも・・・・あなたはまだやり直せる」
「・・・・え?・・・・何を・・・・・言っているの?」
セイナはその言葉の意味がわからなかった。やり直せる?なんのことだろう。たしかに自分はある理由でデインを離れてしまった。でもそのことなのか、セイナはわからなかった。悩んでいるセイナを見ていたレインは目を閉じてこう呟いた。
「まだ・・・・・わからなくてもいい・・・取り返しの・・・・・つかなくなる前に・・・・・知ってくれればいい」
「・・・・・」
セイナは黙ってしまった。レインが自分と同じ?セイナは一つ心当たりがあった。と言うことはこの子もどこかの国の・・・・・
そう考えているとレインがいきなり立ち上がってスカートをぱんぱんとはたいて身なりを整えると、セイナが飲み終わった、スープ皿をトレイに乗せてセイナのほうを向いた。その顔はさっきまでの悲しい顔じゃなく、どこか微笑んでいる顔だった。
「とりあえず・・・・・元気になってよかった・・・・・グリンも心配してた・・・・あとで会ってあげて・・・」
そう言い残すとレインはセイナの返事も聞かずに、そそくさと部屋を出て行ってしまった。セイナは再びしばらくの間ぼーっとしていた。