第十話 フロルの危機
皆さんこんばんは。テストやらなにやらあって更新がまたまた遅くなってしまいました。本当は戦闘に入ろうと思っていたんですけど、結局会話で終わってしまいました。ですが、出来はいいのでよろしくおねがいします
フロル王国 レイディン城 東側城壁
フロル王国の城、レイディン城の東側城壁には三人の少年と一人の少女、そして眼鏡をかけた老人が双眼鏡を覗いていた。全員、城下町の城壁から広がる草原の様子を見ている。
「あれがデイン軍・・・・半端ない数じゃな。よくあれだけの兵を集めたものよ・・・ゲン。あれらはデイン軍で間違いなかろうな?」
草原には草原の色に合わない赤色のローブを着た人らしき姿が森から草原に少しでていた。
ゲンに問いかけた老人は、もう髪は白髪になっていて、体も杖をついて腰が曲がっている。動くのがやっとのような感じだ。しかし、強い意志を感じさせる黒い双眼は死んでおらず、とてもこの先短い老人の目には見えない。
「はい。間違いないです。ルギナス様。敵の様子を斥候に調べさせたところ、すべての兵は赤色のローブを着て、武器は片手斧を持ち、ほかに木製の盾を持っているようです」
腕を組みながら、城壁の向こうを向いているゲンはそう返す。ルギナスと言われた老人は、ふむと頷くと手を顎にそえて少し考える仕草をとる。
すると城壁に座って、双眼鏡で敵の様子を見ていたロイが口を開いた。
「でも、よくあれだけの数で『精霊の森』を抜けられたッスね。その森には色々危険なものがあるのに。初めはもっと多かったッスかね」
今デイン軍が出てきた森、『精霊の森』はデインとフロルの国境のようなもので、グリン達とセイナが出会った場所でもある。
森の中にはたくさんの動物が住んでいて、ウサギやリスなどの小動物はもちろん、体長5メートルを越える巨大なクマや猛毒をもつ大蛇も存在する。
フロルの人々は危険な動物に出会ってしまったとき、どうすればいいのかを子供の頃から教えられているので、危険もなく森に木の実を取りに行ったり、通過することができる。なので、王子にも関わらず、グリンは危険な森にレジスタンス、『青い鳥』のアジトも作ることができたのだ。
「そこが不自然なんですよね。たしかに今の敵の数が森に入ったときに倍近くいれば突破は可能でしょう。しかし、多大な損害を受ける上に疲労が激しいでしょう。なのにデイン軍は突破したどころか、斥候が言っていた敵の様子は全くの無傷で武器も使われた様子がなかったようです」
ゲンは腕組みをして、森の方を見ながらそう言った。デイン軍はもうほとんどが森を抜けたようだ。
「ま、なにかネタがあるんだろ。どっちにしてもいくら兵があれだけいても、俺達『トライエイム』を倒せないだろうしな」
城壁に座っていたグリンは楽しそうにそう言うと立ち上がり、うーん、と伸びをしてクルリとほかの四人のほうを向いて、
「デインの奴らがなんでいきなり攻めてきたのはまだよくわからないけど、そんなことを気にしてたらデインの奴らに好き勝手されちまう。さっさと、町に入る前に潰すぞ!」
「「了解!」」
そうロイとゲンは言ってどこかに走り去った。するとグリンの隣にいたレインがグリンの服の裾をクイクイと引っ張った。
「グリン・・・・戦うの?」
レインは心配そうな目でグリンを見つめた。
「ああ。ここまで勝手に人の国に入ってきて、黙っていられるかよ。まぁ無茶はしないから大丈夫だよ」
グリンは笑顔でそう言うとレインの頭を撫でた。レインは少し頬を赤くしてそれを受け入れていた。するとふぅと疲れたようなため息が聞こえた。
「グリン様・・・勝手にそのようなことを決められたら困りますぞ。まだ大臣達ともなにも話しておらんのに、そんなことをしていたら信用を失いますぞ。それに・・・攻めてきている理由はわかっておられるのでしょう?」
「まあ、大体はわかってるよ。でも・・・わるいなルギナス。その事を抜いても最近のデインは少しやりすぎだ。ましてやあの大軍だ。あいつらが来たせいで、民衆が慌ててしまっている。一度フロルの強さを見せつけないとな」
グリンは少し歩き、城壁の上に足を乗せて城下町の方をみた。広場には沢山の人が群がっていて、敵が来たなどと不安の声を上げている。
「確かに民衆の不安を取り除くことも大切ですが、兵を動かすのでしょう?命に関わる問題なのですから、遊び半分だと困りますぞ。それに、あなたは王子なのですから、前にでて戦うなど・・・・」
「あ〜〜〜わかったわかった。もう少し大人しくしてるよ。でもなぁ、俺は俺自身がでないとみんなからの信用を得られないと思っているんだ・・・・・・・父さんがそうだったようにね」
グリンは笑いながらそう言うと急に真面目な顔になった。
「大丈夫。無理はしないし、被害も最小限に押さえるさ。俺たちのせいで悲しむ人を見るのは嫌だ」
そうグリンが言うとルギナスは再びため息をついて両手合わせた。
「大臣達には私から伝えておきましょう。開戦するとね。それと、あの少女のことはほかの大臣には伏せておきます」
ルギナスはそれだけを言うと、グリンに一度頭を下げて礼をし、城壁から城に入っていった。
「グリン・・・・本当に・・・・平気?」
レインはまだ不安なようだ。しかしそんなレインに対してグリンは微笑みさっきのより激しくクシャクシャとレインの頭を撫でた。
「心配するなレイン。俺を誰だと思っている?あんな奴らさっさと片付けて帰って来るよ」
レインは自分の頭の上にある手からグリンの体温を感じながら目を閉じて少しの間黙っていた。すると目を開き、決意したような目をした。
「・・・・わかった・・・だったら・・私も・・・いく・・」
しかし、グリンは苦笑して首を横に振った。
「レインは、この城を守ってくれないか?俺達が出て行ったあとこの城はがら空きになるからね」
レインは再び黙っていたが、すぐにコクリと頷いた。するとグリンは笑顔になってもう一度レインの頭を撫でた。
グリンがレインを断ったのは城に戦力が無くなるのを気にしたからだったが、それよりもレインを危険な目に遭わせなくなかったからだ。
「そういや・・・・ルーナはどこ行ったんだ?」
グリンがそんなことを口にするとムスッとレインが不機嫌な顔になった。
「わたしは・・・知らない・・興味ない・・・」
「おいおい、レイン、なんでそんな不機嫌なんだ?」
「不機嫌・・・じゃない」
レインはそう言うとそっぽを向いてしまってグリンと目を合わせようとしない。グリンはよくわからないという感じで不思議そうな顔をした。
「それならいいけど・・あいつには誤解だって言わないとなあ・・・」
ふぅ、とグリンはため息をついた。さっきの聖堂のことを考えるとルーナは誤解してしまっている。
「とりあえず、今はデインの奴らのこと考えるか。レイン、俺は出陣の準備をするからルーナを見かけたら戻ってきたとき教えてくれないか?それと・・・セイナのことは頼んだぞ」
レインがコクリと頷くとグリンは笑顔になってその場をはなれた。残された
西側城壁の上
聖堂でグリン達から離れたルーナは、グリン達がいる城壁とは逆の方角の城壁にいた。ルーナは城壁に寄りかかりながら座っていた。
「はぁ・・・・・」
ルーナはため息をついた。そして、自分の大好きな兄に抱きつくレインの姿を思い出すと、悲しそうな顔になって再びため息をついた。
「はぁあ・・・・・・・ダメだなぁわたし。自分勝手で・・・・」
ルーナは自分がしたことを後悔していた。たしかにレインが抱きついていたのはおもしろくないが、抱きついていただけではないか。
それなのに自分はひどいことを兄に言ってその場から走り去ってしまった。
今までは自分一人がグリンに甘えられていたのに、他の女の子がグリンの周りに増えてきて戸惑っているみたいだ。
「あとで、ちゃんとお兄ちゃんに謝ろう・・・」
そう呟いたとき、近くで悲鳴が聞こえた。ルーナは何だろうと顔を上げた瞬間自分の前に大男がいた。
ルーナはその人物を見て、驚愕した。体が大きいことも驚いたが、それよりも鎧には赤い鮮血がついていて、さらに顔を隠している仮面にも血がつき、その姿は死神のように思わせた。
「フロル王国、王女。ルーナフィア・レイジ。悪いがついてきてもらおう」
「え?」
そうルーナが言った瞬間大男はその大きな拳を揃えて・・・・・・・・・
ルーナの頭を殴りつけ気絶させた。