第九話 妹の勘違い
今回は少し短いです。ちょっと高校で色々あって上手く書けませんでした。それでも、頑張ったのでよろしくお願いします
レイディン城 地下聖堂
地下聖堂には巨大な魔法陣が描かれていた。聖堂のなかは魔法陣以外はなく、薄暗い聖堂を照らす光は魔法陣の光だけである。魔法陣のわきにはレインが両手を合わせて集中しながら目をつぶり、座っていた。その様子を魔法陣とレインの周りは青い光で照らされていてその様子をグリンは近くの柱にもたれかかりながら見ている。セイナは魔法陣の中心に寝かされていた。
「しかし・・・ここまで強い封印だとはね。レインを呼んでおいて正解だった」
そう言いながらグリンは一度ふわぁと欠伸をした。朝起きてすぐに魔法陣を張り、封印解除だったのでグリンは眠くてしょうがない。
「レイン、調子はどうだ?」
「・・・・・今は・・・何も・・・起きてない・・・ただ・・・なんか・・・違和感・・・ある・・・」
そう返した、レインは一度目を開けて、グリンの方を向いていた。その緑色の目は疲れてはいないものの、少し怪しそうに目を細めていた。
「そうなんだよなぁ。なんかやな予感する。ただ術式が複雑なだけなんだけどな」
セイナにかけられていた魔法はただの封印魔法だったが、上級クラスの封印であった。初級クラスであるなら、魔法陣を引かなくても、グリン単独で解けるのだが、それ以上になるとレインのような魔法使いと特殊な魔法陣が必要であった。
「まぁ。大丈夫だろ。いくら強い封印魔法でも少しずつ解いていけば問題ないからな」
グリンの独り言にレインは何も言わず、目を閉じたまま真剣に封印を解いていた。すると、少しずつ魔法陣の光が中心のセイナに集まって、セイナだけが青く光りだした。
「そろそろ・・・・かな・・・」
そうレイン呟いた瞬間、セイナを青く光らせていた、光がシュンと消えた。
「通信魔法・・・解除・・・・・封印・・・解除・・・完了」
レインは目を開けてグリンのほうを向くとそう言った。グリンは一安心したような顔になると、柱から離れてレインの目の前まで来て、レインの頭を撫でた。レインは嫌がることもなく、いつもの無表情が嘘のように頬を赤く染めて笑顔になっていた。
「ありがとな。レイン。これで安心だな」
「うん・・・でも・・少し・・・目が・・・覚めるまで・・・時間・・かかる」
そうレインは言うと、頬を赤く染めたままモジモジと、指をクルクル回した後、いきなり立ち上がってグリンに抱きついた。
「お、おいおい。レイン。どうしたんだよ?」
「封印・・・解除・・・・・うまくできた・・・もっと・・・ほめて・・・」
レインはそう言うと恥ずかしいのか、グリンに見えないように顔をスリ寄せてきた。その様子を、少し慌てつつも見ていたグリンは、苦笑してレインの頭を再び撫でてあげていた。
「いつもありがとなレイン。おまえのおかげで怪我しても怖くないしね」
「怪我は・・・治せる・・・でも・・痛いの・・・・ダメ・・・」
そう言って、レインはさらにグリンの胸に顔を埋めてきた。
「さ、さすがに恥ずかしいよ。レイン」
グリンは困った顔をしてレインを自分からはがそうとした。しかし、はがそうとすればするほど、レインはしがみついてきて離してくれない。
「今は・・・誰も・・・いない・・・だから・・もっと・・・・抱きつく・・・」
そうレインは言ってグリグリと自分の顔をグリンにあてて抱きついている。グリンは頭を掻いて、どうしようかと考えているとバンッ!と音を立てて聖堂の入り口が開いた。
「お兄ちゃん!!セイナお姉ちゃんの封印と・・け・・た・・?って、なにやってるのぉおお!?」
いきなり聖堂に入ってきたのはグリンと全く同じの姿をしているグリンの双子の妹、ルーナだった。ルーナは聖堂の外の部屋でセイナの封印を解くのを待っているようにグリンに言われていたのだが、しびれを切らして聖堂に入ってきてしまったのだ。しかし、そこには大好きな自分の兄に抱きつくレインの姿があった。
「ちょっと、レイン!!お兄ちゃんから離れて!!お兄ちゃんに抱きついていいのはわたしだけなんだからね!!」
ルーナは顔を真っ赤にして怒っていた。しかし、レインはそんなことは気にしない様子でグリンに抱きついていた。顔は無表情に戻っているが・・・・
「グリンは・・・アナタだけの・・・ものじゃない・・・・・」
レインは無表情のままルーナのほうを向くとそう言った。
「違うもん!お兄ちゃんに抱きついていいのは妹のわたしだけだもん!お兄ちゃんからも何か言ってよ!」
「お、俺か!?えっと・・・いいんじゃないか?抱きつくぐらい。いつもルーナは抱きついているし、俺もイヤじゃないし・・・」
グリンは普通に抱きつくぐらい、いいじゃないかと考えていたが、それを聞いたルーナはさらに顔を怒った顔にした。手も力いっぱい握ってわなわなを震わせていた。
「よくないもん!!お兄ちゃんはルーナのなの!!それとも・・・お兄ちゃんは・・・わたしのこと嫌い?」
ルーナは少し涙目になってきた。これはマズいと思ってグリンはレインを一度自分からはがした。レインは残念そうにしていたが、誤解を解くほうがグリンは先決だと思い、手をルーナにぶんぶんと振って勘違いということを伝えようとした。
「違うって!そういう意味じゃないよ!俺にとって二人とも同じぐらい大切なんだよ!」
「それじゃあ、ルーナとレイン、どっちの方が大事?」
ルーナが真剣な目でそうグリンに聞いた。グリンからはがされたレインも同じ様子でグリンを見上げていた。グリンは二人の真剣な目を見て、言葉を詰まらせてしまった。
「うぐ・・・だから、二人とも大事ってさっきも言って・・・」
「やっぱりそうだ!!お兄ちゃんは生まれてからずっと一緒だったわたしより、途中で知り合ったレインのほうが大事なんだ!!!」
「だ、だから、そうは言ってな・・・」
「お兄ちゃんのバーカ!!!もう知らないよーだ!!!」
そう、聖堂に響くぐらいの大声で叫んだルーナはクルッと背を向けて出入り口に向かって走りだした。その出入り口には、ゲンが来ていた。
「グリン!大変ですよ!(ドカッ!)痛ッって、ルーナ様?」
ルーナは出入り口に来たゲンにぶつかりながらも、なにも言わずに、ゲンを無視してどこかに走り去った。
「どうかしたのですか?グリン」
「いや・・・大したことじゃないさ。それより、どうしたんだ?」
グリンはルーナが気になっていたが、慌てたゲンの様子をみて、ただ事ではないことがわかった。ゲンは汗をかいていて、戦闘装備だったのだ。汗は、走りながらここに来たからだろうが、武器を装備をしているところを見ると、敵が攻めてきたのかもしれない。グリンはルーナのことよりもゲンの方が先と考えた。
「そうでした。のんびり話している暇ないので簡潔に言います」
そう言うとゲンは一度大きく深呼吸をした。
「デイン軍が攻めてきました。その数、約1000。我が軍の倍の数です」
聖堂は暗い空気に支配された。そしてフロルの地獄の時間が始まった。