アリス
部屋で退屈していると、お姉さんがやってきて「アリス、ピクニックにいこう。」と誘ってきました。
家庭教師も帰ったし、特にやることもなかったので、「OK。」とアリスは承諾しました。
早速、ふたりは出かける準備を始めます。すると、おねえさんが「そうだ、ばあやに軽食を作ってもらおう。」と言いました。
しかし、それを聞いたアリスは「え?いいよ、そんなの。遅くなるし。昨日の昼食の残りのサンドイッチがあるはずだからそれを持ってくる。」と言いながらさっさとキッチンに行ってしまいました。
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数分後、おねえさんとアリスは家を出発し、近くの丘に向かって歩いていました。
おねえさんは本を数冊、アリスは前途のサンドイッチを入れたバスケットを持って歩いています。
「わー、可愛い。」小川のそばを歩いていると、急におねえさんが立ち止まりました。視線の先にはカモの親子がいました。
アリスはそんな姉にむかって、「先に行ってるから。」と言うと、すたすたと歩いて行ってしまいました。
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・・・ふたりは今、丘の上の大きな樹の下で読書をしています。
「あ、その章はもう以前に聞いた。こっちから読んで。」「そうだっけ?」「うん、早く」「はーい。」
おねえさんはアリスに言われてページをめくり直します。姉妹の読書は順調に進んでいます。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
読書中、アリスは睡魔におそわれました。 眠くて眠くて仕方がありません。目が半分閉じかかっています。
そのときでした。
そんなアリスの視界を白い何かが横切ります。
それは野ウサギでした。
しかも、ただのウサギではなくて、メガネをかけてチョッキを着て時計を抱えています。そして、ウサギは人の言葉を話していました。
「・・・・・・・・」アリスはゆっくりまばたきしながら思いました。
(こりゃ、夢だな。)
ウサギがしゃべるわけがないし、なにより彼女はこう考えました。
好奇心にかられるものの、”夢の中でまで余計な体力を消耗したくないな”、と。
そして眠りの質を良くするため、再び目を閉じると、今度は本格的に居眠りを始めたのでした。
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「・・・ス!アリス、アリス!起きて!」
「う~ん?」
目を開けると、おねえさんが顔をのぞきこんでいました。
「帰ろう、アリス。」「あれ、今、何時?」「たぶん午後5時くらい。」「!!」それを聞いたアリスはがばっと勢いよく起き上がり、スカートについた砂をはらうとすばやく帰り支度を始めました。
そして、「私としたことが・・!」と悔しそうにつぶやきました。
おねえさんは、そんなアリスを微笑ましく見つめながら自分も帰り支度を始めたのでした。
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帰り道。
ふたりは早歩き、というかほとんど小走りで家をめざして歩いていました。
「それにしても、本当によく寝ていたわよね。」とおねえさん。
「ええ、しくじったわ。」とアリス。
「なんか夢でも見た?」とさらにおねえさん。
「いや、爆睡していて特に何も。」とアリス。 彼女の頭の中からは例のウサギの事は完全に消え去っていました。
「そっか。」と、どこかつまらなそうなお姉さん。
「さっさと帰るわよ!」と先を急ぐアリス。
すでに日が沈み、東の空にはチェシャ猫の笑顔のような半月が昇っていました。
完