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夢の子

作者: 藤乃花

廻すだけで狭いながらも幻想的な世界が作れる。鏡、筒、ビーズ……たったそれだけの物を集めただけなのに、いつまで見ていても飽きない。『万華鏡』その呼び名も小雛こひなは気に入った。(夢の中みたい!ずっとこのまま眺めていたい!)その時、小雛の胸に何かが弾けたような気がした。(私の夢……見付けた……)

数年が経ち中学を間もなく卒業するという頃、小雛は毎日塾通いで忙しかった。「珈琲は要らない!もう行かないと!」日曜の朝からバタバタ。トーストを口に押し込み、小雛は鞄を取りあわてて玄関を出た。(遅れる!)日曜には塾があり、誰よりも早く着いて自習するつもりでいたが、昨夜にもテスト勉強をしていたが為に十五分ほど寝坊したのだ。十五分くらいなら遅刻どころかまだ早い時間に着くが、小雛は負けず嫌いな性分。「くらい」等許せないのだ。小雛の進路希望は英会話スクールの講師。小学生の時の特別授業で英会話を学んだ日、自身の中に何かが降りてきた。英語は世界で役に立つ、英語さえ理解すれば将来的に困らない。そんな考えが小雛に英語の道を与えた。「遊んでる暇があるんなら、英語の勉強するわよ」それが今の小雛の座右の銘。「確かに役に立つのよね、英語は。でも私としては、遊びながら色んな事を学んで、それから夢を見つけてほしい……」「どの道を選ぶかは本人次第。でもな、実のところ僕は小雛はなりたいものじゃない進路を歩んでる気がするんだ」母も父も小雛が無理をしているように思えてならない。「あの子の夢は多分……」「別に在ると思うんだ……」二人は、小雛が心から楽しめる夢を追いかけてほしい……そう感じている。

塾まであと少し。まだ他の塾生は来ていないようだ。ビルの一階にある窓から、教室内が窺える。「一番乗り!」満面の笑みを浮かべ、エントランスへ向かおうとする小雛。「……ぁぁぁあああああ……!」上方から声がし、それが近付いてきた。(!)見上げた先には……。「赤ん……坊?」「あああ!」咄嗟に両手を出し、赤ん坊を受け止めた。ポワ……ン!(軽っ……!なんで?)「あああ……」淡い色合いのベビー服に包まれた赤ん坊は、小雛を見て、ニコリと笑った。「あれ……?」

「おはようございます、丸井さん。今朝も早いですね。感心です」「?」エントランス内のロッカー前で、講師と会い、ハッとした。「教室の鍵は空いています。どうぞ」「は、はい」腕の中には何もない。(夢?……変なの)あの日の夢が今、動き出す。


















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