映画の日当日
約束の日。
綾音と一緒に待ち合わせ場所の駅前で佐々木さんを待っている。
ちなみに今日は、パステルピンクのワンピースとローファーというシンプルな服装で来ている。
約束をしたあの日、帰ってからすぐに例の映画について調べた。
タイトルは綾音の言っていたとおり『この夕空に輝く一番星を君の隣で見れたら』
高校生の女の子が主人公で、同級生の男の子に片思いをしているんだけどその男の子には他に好きな女の子がいて、その子が主人公の親友でというかなりベタな三角関係の話だった。
まあ、お互いが好き同士の、いわゆる「純愛もの」だとかなりの確率でどちらかが不治の病に侵されるという重い展開になりがちだから、そういうのが苦手な僕にとってはマシな部類に入るだろう。
人気若手俳優二人が主役で(最近では女性の俳優さんも女優ではなく俳優と呼ぶらしい)若い人に人気があるらしい。まあ、若い人と言っても僕のような陰キャは含まれないのだろう。僕は全く知らなかったわけだし……
というわけで現状、映画にはあまり期待していないのだが女装して妹と委員長と一緒に出掛けるというシチュエーション自体はとても楽しみにしている。
そんなことを考えていると向こうから佐々木さんが手を振りながら近づいてくる。こちらも手を振り返す。
「おはよう!かなちゃん、綾音ちゃん」
「お、おはよう結花ちゃん」
「おはようございます。結花先輩」
前回会った時に佐々木さんに兄妹を呼び分けるために下の名前で呼ばせてとお願いされたので承諾したら、私は下の名前で呼んでるのに『佐々木さん』呼びされるのは距離をかんじてやだなーと言われたのでお互いに名前を呼び合うことになった。それと、外で会うときは僕の男バレを防ぐために「かなちゃん」と呼ぶことに決まってしまったのだ。(というか以前、佐々木さんのテンションがおかしくなってた時かなたん呼びされてたけど、あれは何だったんだろう)
「それじゃあ、行こっか」
僕は気持ちを切り替えて二人を促す。
「「うん!!」」
僕たちは、地元で一番大きなショッピングモールの最上階にある映画館に向かった。