佐々木さんちに行くことになった!
翌日の学校にて。
僕はいつものように教室のすみっこで一人読書に耽る。昨日、佐々木さんに学校ではいつも通りの距離感で接してほしいとお願いしたのだ。
そのかわりに放課後は佐々木さんの家に行くことになった。佐々木さんは僕だけを誘おうとしていたが、綾音が、自分も行くと言って聞かず、僕も一人で女子の家に行くのは気が引けたので二人で懇願したら、佐々木さんが折れてくれたのだ。
読んでいた本がキリのいいところまできたので栞を挟んでちらりと佐々木さんのほうへ視線をやると、廊下でふざけている男子に注意しているところだった。
佐々木さんには悪いけど、たぶん意味ないと思う。彼は佐々木さんから注意されたくて、わざとやっているのだから。僕から何かしてあげたいとも思うが、ここで変に目立ってあらぬ噂を立てられては佐々木さんにも迷惑だろう、というあまりにも利己的で都合のいい理由を自分自身に言い聞かせて何もしないという選択肢を選ぶ。
ごめんね、佐々木さん。
罪悪感を抱きつつ成り行きを見守っていると、チャイムが鳴って次の授業が始まった。
その日の放課後、僕はいったん自分の家に帰り着替えてから、綾音と一緒に佐々木さんちに向かった。
今日は佐々木さんが用意した服を着る予定なので、普通の恰好で行こうとしたのだが綾音がどうしても着てほしいというので、今もお揃いの服を着ている。
佐々木さんはかなり大きなマンションの一角に一人で住んでいるらしい。そもそもマンションをご両親が所有していてそのうちの一室に住まわせて貰っているそうだ。
「ってことは、一人暮らしの部屋に僕を一人だけ誘おうとしてたの?」
「そうだけど。何か問題ある?」
「僕、こう見えても男なんだけど?」
「分かってるけど、こーんなに可愛いかなたんが私に手を出すわけないじゃん!まあ、かなたんにならナニされてもいいけど……」
なかなかキワドイことを言う佐々木さんにどう反応すれば良いか分からず黙っていると、佐々木さんは気にした様子もなく部屋の案内を始める。
佐々木さんの住んでいる部屋は3LDKだが、そのうちの一室は僕の部屋だと言う。
「僕の部屋ってどういうこと?」
「こういうこと!!」
佐々木さんがドアを開けると、部屋一面に所狭しと可愛らしい服が並んでいる。
「桜井君に似合いそうな服を買っていたらこんなに集まっちゃった!」
僕は内心嬉しいと思ったしこれから色々な服を着れるのが楽しみだと思ったがそれを素直に言ってしまうのは照れ臭いやら悔しいやらで結局言えなかった。
「それで?今日着るのはどの服なの?」精一杯呆れた風な態度と口調を演じてそう訊くと
僕の態度なんか気にも留めずじゃじゃーんと口で効果音を鳴らしながら服を見せてくる。
黒のブラウスに同色のサスペンダー付きプリーツスカート、他にもヘッドドレスやニーハイソックス、ショートブーツにサッチェルバッグなど、いわゆる地雷系と呼ばれるコーデだった。