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黒髪ロングの眼鏡っ子

出てきたケーキは真っ黒に焦げていた。


「え?これ食べられるの?」


不審に思い、そう尋ねる僕に


「当たり前でしょ、バスクチーズケーキってこういうものよ!」


と答えると、綾音は躊躇(ちゅうちょ)することなく真っ黒のケーキを口に運んだ。


「んー!!おいひい!かなちゃんも早く食べなよ!」


叶太だから”かなちゃん”か……僕が男だとバレないように配慮しているのだろうが、なんだか照れくさい。


なかなか食べようとしない僕にしびれを切らしたのか、綾音は自分のケーキを僕の口許(くちもと)まで運ぶ。


「ほらほら、あーんして!」


僕は覚悟を決めて口を開ける。


「あーん。ん、美味い!」


表面の焦げはカラメルのように香ばしく外はカリッと中はとろりとしている。


生クリームとチーズのコクが強く感じられるのに後味はしつこくない。


「いくらでもいけるね。これ」


僕自身の分もパクパクと食べ進める僕を見て綾音は嬉しそうに笑う。


「そうでしょう!かなちゃんは絶対気に入ると思ったんだ!」


二人で出掛けると約束した時から、僕の好みをやたらと知りたがったのはこのためだったのかと嬉しくなった。綾音は僕に対して厳しいようで意外と甘い。というか厳しくするのも僕のためを思ってのことなので、なんだかんだ兄思いなよくできた妹に今更ながら感謝の気持ちでいっぱいになった。


「ありがとね、綾音」


僕の意図を察しているのかいないのか、よく分からないような顔で微笑む綾音。


店内の落ち着いたBGMに耳を傾けながらケーキを頬張る。


なんとなくだが、見た目とは裏腹にめちゃくちゃ美味かったこのケーキと女の子の恰好をしているのに中身が男の僕とがちょっとリンクしているみたいで面白いと思ったが、おそらく僕以外には分からない感覚なので黙っていた。


『ごちそうさまでした』


二人の声が重なる。綾音もちょうど食べ終えたところだったようだ。


店を出ると見覚えのある黒髪ロングの眼鏡っ子がこちらをじっと見つめながら立っていた.。





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