お兄ちゃんなのに女児服着てる
僕は綾音の部屋のドアをノックした。
「入っていいよ」
綾音の許可がおりたので早速部屋に入る。
綾音はすでに着替えていた。
「それで、さっき言ってた『いいこと』って?」
「お兄ちゃん、これ知ってる?」
そう言って綾音はあるSNSの画面を表示させたスマートフォンを見せてきた。
「『大人なのに女児服着てる』?」
大人の女性が女児用の子供服を着ている写真がアップされており、その投稿には「大人なのに女児服着てる」というタグが付いていた。
「大人なのに女児服着てる」と隣接するジャンルに「幼児退行」というものがあるらしい。この「幼児退行」は精神的なストレスからくる病理的な幼児退行とは異なり、ある種のフェティシズム的な側面があるという。
しかし、ストレスの発散や大人としての責任からの解放などそれが果たす役割はあまり変わらないらしい。
つまり、綾音の言う「いいこと」とは女児服を着て、女児のロールプレイをすることで僕の精神を安定させようということのようなのだ。
綾音は昨日の僕の様子を見て、佐々木結花に裏切られたことで落ち込んでいると考えたらしい。本当はそんなことはないのだが、、、
ともあれ、綾音が一生懸命考えて提案してきたのに断るというのも忍びない。
だから僕は
「やってみるよ」
と答えたのだった。