私の大好きなお兄ちゃん(綾音視点)
「どうしよう、お兄ちゃんを怒らせちゃった」
私、桜井綾音はお兄ちゃんが大好きだ。
好きな気持ちが強すぎて、私の自分勝手な希望を押し付けてしまった。
お兄ちゃんの人生はお兄ちゃんのもの。そのとおりだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
あんなに怒ってるお兄ちゃん、初めて見た。
許してもらえなかったらどうしよう。もう二度と口きいてもらえなかったらどうしよう。
頭の中を「どうしよう」がグルグル回っている。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
「……ねちゃん、綾音ちゃん!」
ハッと私が顔を上げると結花先輩が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「大丈夫?顔色悪いよ?」
「……大丈夫です」
「全然そうは見えないけど」
「私、お兄ちゃんに嫌われちゃったかも……」
「そんなことない!」
ビクッとした私に結花先輩は優しく語り掛ける。
「急に大きな声出してごめんね。でもそれだけは絶対にないから安心して」
「結花先輩……」
「ほら、叶太くんを追いかけましょ。素直に謝ればきっと許してくれる」
「ホントに許してくれると思いますか?」
「大丈夫。大丈夫だから。ね!」
「わかりました」
本当に許してもらえるかは分からない。でも私は謝りたいと思った。
だから私は結花先輩と一緒にお兄ちゃんを追いかけることにした。