女装子・男の娘オーディション開催決定!!
両隣に座る二人は目一杯に涙を湛えていた。
僕もかなり危なかった。あまり期待していなかったので予想外に心を揺さぶられ少し悔しい。
僕は二人にバレないようにこっそりと涙を拭いてシアターを後にした。
売店前の広場で感想を言い合ったりこれからどこに行くかの相談をする。
結果、お昼ご飯を食べに行くことになった。
同じモール内のハンバーガーショップに向かう道すがら、大きな広告が目に入った。
「女装子・男の娘オーディション2025開催決定!!」
「なにこれ」
「「これかなちゃん(お兄ちゃん)出るべき!!」」
「えぇ~」
出場資格の欄を見ると、男子高校生とある。どうやら出場資格はあるようだ。
けど
「大人数の前で女の子の恰好をするのか~」露骨に嫌そうな声で言うと
綾音が「今もしてるじゃない」と突っ込む。
「でも女装だってバレてないじゃん。このオーディションは女装してることが前提で人前に立つんでしょ。全然違うよ。それに知り合いにバレたらどうするのさ」
「どうするもなにも私はかなちゃんの可愛さは全人類が知るべきだと思うよ!」
「私も!お兄ちゃんのことみんなに知ってもらいたい!」
「結花ちゃんはともかく綾音は僕の女装を二人だけの秘密って言ってなかった?」
「結花先輩にバレるまではそうだったけど、今は結花先輩とおんなじ気持ちだよ!」
はぁ。どうやら二人にとっては僕の女装バレは望むところらしい。二人が乗り気なら僕も覚悟を決めるしかないだろう。
「分かった。出るよ。あと、綾音はお兄ちゃん呼びやめてね」
僕の返事を聞いて二人は喜びの声を上げた。