3−2 やっぱりチートはなかった
クレーメルは知識チートを夢想した。けれど、上手くいくビジョンが全く思い浮かばない。なんとなく受け入れていた文化の根底など全く理解していなかったからだ。
石化世界を我が身一つで切り抜けるような知識など望むべくもなく、マッチひとつすらどんな原料で作るかも知識として持っていない。
(よく考えたら、そりゃそうだ。)
かつて、転生ものの小説を読んだ時に考えたことはあった、自分に何ができるのかと。当然特に何もないという結論に至った。転生などありえないと思っていたし、あるとしても当分先だとも考えていたので、何を調べた訳でもなかった。
(あぁ、色々調べてたらなぁ。)
クレーメルは脱力するのを感じる。
(いやぁ、調べてても変わんないか。覚えられないし。)
特に使う訳でもない付け焼き刃の知識を何年も覚えていられるほど高い学習能力を有していない。一般的にそうなのか、彼が特別ダメなのかその結論はここではでなかった。
(動けるようになったら何ができるか調べないとなぁ。)
できないことは考えても仕方がないので、まだまだ未知の可能性に満ちた未発達の身体に未来を託すことにした。
魔法に出会い注力し始めるのだが、それはもう少し先のお話。