3−1 魔法の発動自体は簡単でした
メイドは何度か魔法を使って見せて気がつく。
フィリアはガラガラに興味を持っているのではなく、魔法が起こす現象自体に意識を向けていると。
「フィリアさまはマホウにきょうみがあるのですね?」
フィリアはパチパチと手を叩いて肯定する。
「ふふふ、こっそりおしえちゃいますね。」
そういうと、メイドはフィリアのお腹に手を置く。すると、手が柔らかな光に包まれる。
(じんわりとあったかい。)
手のひらかた伝わる温もりのほかに、身体の奥から湧き出るような熱が、フィリアを巡る。
「これがマリョクです。これをじょうずにつかって、マホウになるのですよ。」
そのうちにハツゲンしますよ、と言い残して退出する。
(詳しくは教えてくれなかった……。)
部屋を後にするメイドを見送りながらボヤく。
(魔法はイメージだって、何かに書いてあったはず。)
フィリアはイメージする。浮遊するガラガラを手元に引き寄せる、不可視の手を。すると、小さな身体の近くがグニャリと歪む。捻れた空間は次第に伸びてゆきガラガラへと到達し、器のように広がりそれを包む。伸びた空間は徐々に短くなり、フィリアからわずかに離れた場所までガラガラを運ぶと、スッと消える。
(意外と簡単。)
こうも呆気なく成功すると、次を試してみたくなるようで、
(ベットの柵を掴んで体を浮かせる……!)
再び身体の周りが歪み、その根本はフィリアを包み、伸びた先はベットの柵を掴む。力を込めて身体を浮かせようとするが、
(浮……かな……い……。)
フィリアの身体から力が抜けていき、歪みはその形を失う。
誰が呼んだか、魔力欠乏症に陥ってしまった。