2−2 筋書きがあることを前提に
(う〜ん、どうしようか?)
1人の乳児がゆりかごの中で頭をひねる。その乳児は甘楽 トモル、今世ではクレーメル・カーラという。
彼もまた自分が転生者で、何かしらのストーリーに組み込まれたのだと考えている。しかし、フィリアと同じく考え続けてもどんな物語に入り込んでしまったのかを判断できずにいた。
(セオリー通り魔法の力を育てたいけど、発動しないんだよなぁ。)
こういった、ポジションが分からない人物に転生した場合は幼少期から魔力を伸ばしていくのが鉄則だと考えていた。
(でも、僕チートもらってきてない。)
順風満帆な生活を送るための方式に則るには、大抵の場合転生時に超位の存在と対面して、それなりの加護を得るもの。けれど彼にその記憶はない。これでは、先人が教えを実践することができない。
(こうゆう時は……ーーステータスオープン!)
そう唱えれば自分の身体能力、加護、称号etc……が判明する。
(何にも起こらない!)
はずだったが、彼の前にステータスウィンドウが現れることはなかった。
少なくない喪失感がクレーメルを襲った。けれど、落ち込んでばかりいても仕方ないと気持ちを切り替える。
(これは、知識チートでなんとかするタイプの世界なんだ!)
そう断じて彼は未来へ目を向ける。拳を突き上げて
「あ゛ーーー!」
その声を聞いてオシメを変えにきた使用人を傍目に、彼の物語は始まる。