045話 伝説の武器を操りし者達
◇◇◇◇◇◆
大きな黒曜石の机には報告書・計画書・決済書などの書類が百科事典全巻を縦に並べたように山積みとなり、その光景は書類の方が私を俯瞰視点で見下ろしているようにも感じる。
しかもこれは今日だけの分だと言う、そう思うと仮に目を通すだけだとしても億劫になる。
「はぁ~」
僕が机に両手を投げ出し、同化するように寝そべる。
所狭しと並べられていた書類の束は、僕が接する机の面積を広げた事で積み木倒しのように崩れて床に散らばった。
やらなければいけない仕事が溜まっているけれど、それに対して全く行動する気が起きない時は何故か逆に退屈だと感じる。
それは現実逃避が生み出した虚構の世界に閉じ込められた結果なのだろうか?
僕はアビス国の国王という逃れる事のできない責務に飽き飽きとしていた。
この重責はサタ・ナにでも任せて、ラルクの旅に同行したい気分だ。
今頃どこで何をしているんだろうか……?
「失礼します」
もともと開け放された執務室の扉を形式上のノックをしてサタ・ナが入室してきた。
床に散らばった書類を眼にしてサタ・ナの眉がピクリと動く。
文句でも言われるかと覚悟をしたが、彼女は無言で書類を拾い整頓をして机に戻した。
「レイス様、少々お時間をよろしいでしょうか?」
「なぁに? 今日は気分が乗らないんだけど」
怒った時以外は無機質な感じの態度で接するサタ・ナは今日も例外なく落ち着いた様子だった。
どうせ新しい計画立案の報告か、どこどこの国が攻めて来たと言い出すのだろうと思い机との同化率を上げる。
「ラルク様が、サンサーラ教と接触するかも知れないとの御報告がありました」
ラルクと言う名前が耳に入り、完全に机に同化しかけていた僕は天命を思い出したように起き上がる。
しかし、同時にサンサーラ教って何だ?という疑問も浮かび、言葉を出そうとして「サッ……」っと口を半開きになった状態で停止した。
何故かと言うと、サンサーラ教の事を聞いた瞬間怒られそうな気がして躊躇してしまったからだ。
「……サンサーラ教の事ですか?」
あっさりと僕の心を見透かしたような口ぶりでサタ・ナが問いかけて来た。
僕はコクコクと正解と同意の意味を込めて首を縦に振る。
「サンサーラ教は創造神アザドゥ様を主神として祭る人間種を中心とした宗教団体です。広義では破壊神ヨグトス様も合わせて最高神として崇拝しております。」
あー、なんかそんな感じの団体があったなぁ。
最近では僕の事も崇拝対象としているらしく、人間種社会では珍しく友好的な連中だと聞いた事がある。
そんでもって、サタ・ナが接触して傀儡化してるとかなんとか。
僕が宣戦布告をした際に、無血開城という目標を掲げた。
その条件を守るためにサンサーラ教を利用して人間種の信者を増やすと言っていたような。
確か、タクティカ国の古代妖精種の信仰とは異なるんだっけ。
信仰する神が同じなのに相容れる事ができないっていう宗教独特の価値観の相違は僕には理解ができないな。
仲良くできそうなものなのに。
「そ、それで、ラルクはその教団と何か揉め事でもあったの?」
「……内容如何は存じ上げませんが、教団と事を構えている領主との諍いに関与したと推察します」
有体に言うと、知り合った貴族の面倒事にラルクが首を突っ込んだって事ね。
でもラルクにはアル・ゼに加え、ベ・リアも付いているし、余程の事が無い限り危険は無いと思うけど。
わざわざサタ・ナが報告をしてきたって事は、すでに何か手を打ち終わっている……と言う報告も兼ねているんだろう。
「報告ありがと、今日は寝るね」
フッフッフ……
ラルクの事を仄めかす事で、怠けている僕を動揺させようとしているんだろ?
実際、凄く気になっているけど、敢えて聞いてやらない!
案の定、「おやっ?」というような表情を一瞬浮かべ、すぐに普通の表情へ戻った。
「……気にならないのですか?」
気になる!めっっっちゃ気になる!
早く教えてください!どうかお願いします!!
……なんて絶対言わないけど、察して教えろ!さぁ!早く!
「御安心ください、既に手は打ってございます。貴族は知りませんが、ラルク様に危害が及ぶ事は万に一つもございません。」
「そう、サタ・ナは優秀だからそうだと思った。ちなみにどんな策を巡らしたの?」
僕が聞き返すと待ってましたとばかりに、ほんの一瞬満足そうな笑みを浮かべたように見えた。
……やっぱり説明したかったんじゃん。
普段冷静でツンツンして、すぐ怒る癖に意外と可愛い所があるんだよね。
「はっ、大司教にはとあるアミュレットを授けてあります。レイス様に近しい人、すなわちラルク様が近づけば反応する代物です」
何それ、僕も欲しい。
「流石ね。続報があったら、また報告をしてちょうだい」
「はっ! ですがその前に」
サタ・ナが手を叩くと、配下の魔粧が書類の束を机の上にそっと置いた。
あの厚さはおおよそ200枚くらいだろう。
僕は毎日の書類業務を通じて特殊技能【枚数看破】を獲得しているのだ(大嘘)。
「こちらと、そっちの山は今日中の締め切りです。必ず処理して頂くようお願いいたします」
「……はい」
彼女の眼と口調が怒気を孕んでいる時は、素直に聞くようにしている。
怒り出すと無駄に時間がかかるしね。
ラルクの話を聞きたいから、書類処理を頑張るとしましょうか……
僕は両腕を上げて背筋を伸ばすと、面倒な書類作業を開始した。
◇◆◇◇◇◇
-聖都ウプサラ-
丁度日が昇りきった頃に聖都ウプサラに到着した。
まだ一般的には早朝と呼べる時間の為か、やはり少し眠い。
この時間に入口の門を守る衛兵は眠く無いのだろうかと、無駄な事を考えてしまう。
生活サイクル自体が違うのだから愚問でしかない。
いつ見ても立派な防御壁に囲まれた都市は、早朝にも関わらず商人達の馬車で行列ができていた。
私は商人とは違い個人カードの提示と簡単な荷物検査で事足りる。
そもそも、この国で私の事を知らない衛兵は少ない程度には有名人だと自負している。
当然ながら簡単な審査を終え、無事街へと入る事ができた。
さてと、まずは冒険者ギルドに顔を出して、知り合いに「サンサーラ教の本部に招かれてね」と言う情報を話しておこう。
何かあった時の布石として一応ね。
前々からユーイン家が教団に目を付けられていると言う話は知れ渡っている。
それに、書簡には他言無用とは書いて無かったから、文句を言われる筋合いも無い。
まぁ父上の命を盾にした上に罠を用意して待ち構えていたとしても、丁度良い”ハンデ”くらいになるんじゃないかな?
そして私は街の中央通りに面する冒険者ギルドへと向かった。
街の大通りは魔力を光に替える魔導具により、紫色の淡い光を放つ球がふわふわと宙を舞っている。
この時間になると、もう半透明となって消えかけていた。
いつ見ても不思議な光景だ、創世記の時代から伝わる魔導技術には未だに解明されていない物も多々あると聞いた。
そういった物は壊れる事無く今も稼働できている。
私の受け継いだ【雷槌ミョルニル】も決して壊れる事は無いと伝えられている。
伝説の武器というのは人の身に余る物なのかも知れないな。
だが、かといってご先祖様から受け継いだ大事な武器を宗教団体に寄付しなければならない云われは無い。
サンサーラ教に苛立ちを覚えているうちに、私は冒険者ギルドへと到着した。
24時間解放されている入口を潜ると、併設された酒場ですでに酒盛りを始めている冒険者やメンバーを探して話し合いをしている者達、掲示板で依頼を吟味している者達などで賑わっていた。
ふむ、私はこの雰囲気が結構好きだ。
冒険者というのは常に死と隣り合わせの危険な職業、しかし今現在冒険者ギルドにいる連中は、その命を賭けた戦いに勝利してきた猛者達だと考えただけで心が沸き立つ気分になれる。
私を見かけた冒険者数名が「おおっ!」と反応し、ギルド内がザワザワとし始めた。
この瞬間だけは少しだけテンションが上がる。
ここでは大貴族としてのクーヤ様ではなく、実績を積み上げて勝ち取った「S+ランク」の称号を持つ冒険者”爆雷の女神”と言う二つ名を持つ冒険者に対しての反応なのだから。
「よう! 元気そうだな!」
声が聞こえた方向に振り向くと、鋼鉄製の鎧を着こんだ巨体が見えた。
短い金髪のくせっ毛で人懐っこい笑顔をした闘士のスティーブだった。
「やぁ、スティーブか。久しぶりだね、元気だったかい?」
「まぁな、最近はモンスターが活発だから指名の依頼が多くて参るぜ!」
スティーブは巨体を揺らし肩を竦めて「やれやれ」といった感じのポーズをとった。
彼の話は誇張されている事が多いから話半分といった感じで聞いといたほうが良い。
すなわち、引く手数多と言っているがボチボチといった所だろう。
実際に実力はBランク冒険者なので、個人指名がゼロと言う訳ではないとは思う。
「それより珍しいな? 依頼書の掲示か? それとも受ける方なのか?」
いっそ貯金を叩いて父上の奪還を依頼してやろうかとも考えたが、それだと父上が行方不明になり、数日後死体で発見されて、教団には惚けられる……と言う未来が容易に想像出来たので却下した。
「なぁに、朝食を食べに来ただけさ。これからサンサーラ教の呼び出しに応じないといけないのでね」
私はごく自然な会話の流れで自身の予定を告げる。
教団と聞いてスティーブは訝し気な表情を浮かべる。
知人の彼もユーイン家が教団と多少揉めているという話は知っている。
「おいおい大丈夫か? 力が必要なら友人価格で手伝うぜ!」
「……そこは無料じゃないんだね」
「ふん、金銭授受の無い仕事の依頼は責任感を放棄している状態と同義だからな」
無料の仕事と言うのは”仕事の質が悪くても、その言い訳になってしまう”と言いたいのだろう。
要するにプロであればある程、仕事内容に見合った報酬を受け取るべきって事だ。
彼の言う友人価格ってのが何ゴールドなのか気になる所だ。
「大丈夫だよ、ただ父上が人質に取られて一人で来いと言われただけだから」
「全然大丈夫じゃねぇだろ、それは」
スティーブには事実を話し、万が一の時の保険というか証言者となってもらった。
その後スティーブと軽い朝食を食べて冒険者ギルドを後にした。
母上への報告はどうするか。
魔法学園はすでに授業が始まっている時間だし、ここからだと往復で余分に2時間はかかる。
今は一刻を争う上に、母上に無用な心配をかけそうだからな……。
まぁ、すぐに解決をして父上とジョルディに口外しないようにして貰えば良いか。
そう考えた私は、その足で都市西側に建つサンサーラ教団本部施設へと向かった。
約1時間かけて教団本部へと到着した。
幸いな事に教団からの刺客や、依頼を受けた暗殺者らしき人物に襲われる事はなかった。
教団施設は敷地面積がハイメス城と魔法学園に次いで大きく、一般開放されている礼拝堂と中庭があり、その奥に信者の居住施設、そして最奥に最高幹部のみが立ち入れる本部があるらしい。
私は自分の背中に手をまわし、何もない空間を掴む。
見えない大槌の柄を掴み、引き抜くように手前へと振り下ろした。
原理は不明だけれど【雷槌ミョルニル】の特殊な効果の1つだ。
……ズン!
【雷槌ミョルニル】を地面に下ろすと、街道に敷き詰められた石が、その重さで割れる。
しまった、つい癖で振り下ろしてしまった。
私自身、特殊才能”鬼神の腕力”のお陰でこの武器の重さを一切感じない。
スティーブのような巨体の持ち主でも、この【雷槌ミョルニル】は対電撃の腕輪を付けても両手で数秒持ち上げるのが精一杯だった。
量った事は無いが、恐らく150キログラム以上はあるんだと思う。
私は敢えて嫌がらせのように【雷槌ミョルニル】を肩に担ぎ、見せ付けながら礼拝堂の門をくぐった。
礼拝堂にいた信者や一般客は何事かと驚き、ちょっとした騒ぎとなった。
そして、本部に常駐していた聖騎士や聖職者が騒ぎを聞き付けてやって来た。
「ユーイン家当主代行クーヤ・イジ・ユーイン、お招きに預かり急ぎ馳せ参じました。大司教オノス・フェニック様にお目通りをお願いしたい」
私は堂々とした態度で極めて礼儀正しく対応する。
暴れに来た暴漢のような風貌で貴族然とした態度をとるギャップに対して皆が騒然とする。
これで一般人や事情を知らない信者達への印象付けも完了した。
しばらくすると、聖騎士を4人引き連れた高位聖職者が現れ「本部でオノス大司教がお待ちですので、ご案内いたします」と言う。
聖騎士4人が私の四方を取り囲み、先頭に高位聖職者が立ち先導していく。
教団施設は細部に渡る場所まで見事な装飾が施され、美しいステンドグラスや広い吹き抜けの天井一面に描かれた神話を題材にした天井画が目を引いた。
この建物そのものが歴史的価値の高い代物だという証明のようだった。
一般人の立ち入れない奥の方は、このようになっていたのか。
非課税や国からの補助金だけじゃなく信者からのお布施の一部が、この施設の維持費に使われているのだろう。
そして私は施設最奥の巨大な教会に通された。
案内を終えた高位聖職者と聖騎士は立ち去ると同時に教会の扉を閉めた。
この教会は礼拝堂よりは小さいが、ゆうに100名は収容できる広さがあり、正面の奥側には2体の神像が見えた。
先端に太陽のような装飾の長杖を持った長い髪の女性と両手に剣を持った短い髪の女性が背中合わせとなり、互いを横目で見つめ合うように聳え立っていた。
「創造神アザドゥ様と破壊神ヨグトスの像か」
私が神像を眺めながら独り言を呟くと、不意に背後から声が聞こえた。
「……破壊神ヨグトス”様”です。敬称を忘れるとは不敬の極みですよ、当主代行クーヤ・イジ・ユーイン様」
振り向くと、そこには教皇の纏う聖法衣を黒く染めたような法衣に身を包んだ長髪の男が立っていた。
鋭く睨む瞳と冗談みたいに趣味の悪い法衣、直接会った事は無いが間違い無くコイツがサンサーラ教の大司教オノス・フェニックだ。
完全な無音の足運びと気配の消し方はまるでプロの暗殺者のようだ。
「これは失礼、宗教的に疎いもので。貴方が招待状をくださった大司教オノス・フェニックさんでしょうか?」
「いかにも私がオノス・フェニックと申します。お初にお目にかかれて光栄です。お越しくださったと言う事は、そちらにお持ちの伝説の武器を教団に返却して頂ける事に了承して頂けた…と思っても宜しいでしょうか」
返却ねぇ……いつから教団の所有物になったのやら。
神様のお膝元でよくそんな台詞が言えたものだ、お前こそ不敬だと知れ。
「まずは、ユーイン家当主に会わせては頂けないでしょうか? 酔い潰れて失礼を働いて無いと良いのですが」
質問に質問を返した事で多少機嫌を悪くしたのか目を細めた大司教が無言で指を鳴らすと、八方の扉が開き両手を拘束された父上と30名以上の黒い鎧を纏った騎士が集まった。
どうやら社交辞令はここまでって事のようだ。
父上は私に向かって歩くように指示されて、ゆっくりと前進を始めた。
ともかく、父上が無事そうで良かった。
私は【雷槌ミョルニル】を神像に向かって頬り投げた。
「なっ!」
大司教は取り乱した様子で空中を回転しながら弧を描く【雷槌ミョルニル】を眺める。
騎士達は焦りながら神像を守ろうと像周辺に集まった。
よし!いいぞ、良い感じだ!!!
大槌が回転しながら地面に落ちる瞬間、私は魔力を込めた言葉を発した。
「聖なる雷よ! その身を賭して全てを穿て!! 【神ノ雷】!」
叫ぶと同時に私は父上を抱きかかえ地面に伏せる。
その瞬間、教会の天井を突き破り巨大な雷柱が【雷槌ミョルニル】目掛けて落ちた。
鼓膜を突き刺すような轟音と巨大な衝撃波と地を這う電撃が周囲の全てを破壊する。
結果、神像は半壊し教会の床は抉れ騎士達の大半が再起不能となった。
「素晴らしい威力です! 流石神々が用いた伝説の武器! まさに神の御業!!」
唯一遠い位置に居た大司教だけが落雷にまきこまれる事無く無事だったようだ。
部下の心配よりも【雷槌ミョルニル】の威力に感激しているとは、部下も報われないな。
大司教は何かに魅入られたように私の横を通り過ぎ、神像前の抉れた地面に向かった。
【雷槌ミョルニル】を拾いに行くのか?
あの大槌は所有者を選ぶ、その並外れた重さだけでなく常に電気を放っているのだ。
常人が手にすれば瞬間的に感電するだろう。
その事を知っている私は余裕な態度で父上の怪我の確認をする。
「すまなかったなクーヤ。ワシに同行していた者達の中に教団信者がおってな、ワシとした事が油断しておった」
「そうでしたか、ですが無事でなによりです」
私は武器を回収して帰ろうと大槌の落ちた場所へと向かった。
抉れた地面に近付き、その異変に気が付いた。
なんと、大司教が【雷槌ミョルニル】をその手に握って持ち上げていたのだ。
「な、馬鹿な!? あの武器を持てるのか!?」
あの武器は私の持つ2種類の特殊才能を持ってようやく所有できる代物だ。
……私以外に扱えるはずが無い!!
目の前の人物に対して激しい動揺に苛まれる。
専売特許を目の前で塗り替えられたような衝撃は強烈に私の心を揺さぶった。
その様子を見た父上も私に近付き、【雷槌ミョルニル】を手にした大司教に驚愕していた。
「フッフッフ! 素晴らしい……本当に見事だ」
大司教は右手に【雷槌ミョルニル】を持ち、ゆっくりと私に近付いて来た。
そして私の正面に立った瞬間、巨大な衝撃が全身を襲った。
私は父上を庇うように抱きしめ、その重い衝撃を真横から受けた。
壁際に叩きつけられて私と父上は床に倒れ込んだ。
父上の衣服は帯電しているかのように衣類が逆立ち、感電して気絶している様子だった。
直接的な打撃からは守れたけど、間接的な電撃だけは無効化出来なかった。
「ち、父上!! 大丈夫ですか!」
そう叫んだ瞬間、背後から再度重い衝撃を受けた。
視界の隅に写ったのは、狂気と喜びに満ちたような表情の大司教の顔だった。
私は再び近くの壁に叩きつけられ、意識が飛びそうになる。
改めて自分の武器の強さに感心すると共に、絶体絶命感をひしひしと感じていた。
そもそも、なんでコイツが……
私と同じような特殊才能持ちなのだろうか?
朦朧とする意識の中で必死に痛みに堪える。
そんな中、騒ぎを聞き付けた騎士達が何人か駆け付けて来た。
騎士達は教会内の状況を見て驚いていたが、大司教の指示で怪我人の手当てを始めた。
その時、大司教の胸の部分が何やら輝いているように見えた。
「……何だ? あの光は」
大司教も自身の異変に気付き、懐から何かを取り出した。
目を凝らして見ると、それは白い宝石をあしらった大き目の首飾りに見えた。
それがうっすらと淡く光り輝いていた。
「ば、馬鹿な!? 近くにあの御方がいると言うのか!?」
大司教は何やら落ち着きを無くし、キョロキョロと周囲を見渡し始めた。
その間にも宝石は輝きを少しずつ増していく。
状況が飲み込めずその様子を見続け動けない私と周囲の騎士達。
「クーヤさん! 大丈夫ですか!!」
その時、教会正面の扉が勢いよく開かれ誰かが私の名前を呼んだ。
聞き覚えのあるその声の主はラルク君だった。
両脇には黒猫が2匹、後方を警戒するようにもう2人の姿が見える。
あれはクラウスとマリーなのか?
ラルク君と目が合い、彼が私に向かって走り出した。
「おい! 戦闘中みたいだぞ!」と黒猫が叫んだ。
あれはどっちだろうか、ここからじゃよく見えないな。
「ラルク君。危険だ! 来ちゃだめだ!」
私がそう叫んだ瞬間、大司教が【雷槌ミョルニル】をその場に落とした。
大司教の胸の宝石は淡い光から眩しい光へと輝きを増していた。
そしてラルク君と対峙したかと思ったら、目の前で躓いた。
「ラルク様でございますね、お会い出来て恐悦至極にございます。」
「へっ!?」
大司教の突然の豹変ぶりに驚き、私は変な声をあげた。
どういう事だ?大司教とラルク君は知り合いだったのか?
「えっ?」
一瞬、彼が私の前に現れた事自体が大司教の作戦だったんじゃないかと疑ったが、ラルク君の表情がその仮説を否定した。
彼もまた状況が全く理解できずポカンとした表情で立ち尽くしている。
ハッとして周囲を見渡すと、奥にいた黒い鎧の騎士達も全員がラルク君を中心に平伏していた。
……いったい何が起きているんだ。
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