プロローグ…なんでこうなったのか考えてるだけだから
同時刻に本編投下しています。
何故かスライムになって転生したけど、死にそうな目に遭いながらも骸骨さん(元の自分)と魔力融合することで、人間の体を取り戻すことが出来た。
骸骨さん情報を信じるのなら、自分の遺骨がある世界に魂が呼び戻されたようなものだ。
そう思うと、不定形生物に転生したのは、骨や肉のある体には転生(再生?)が出来なかったからだ、と言う想像もできる。
一度離れた魂でも、骸骨さんのように元の体を構成していた物体が綺麗に残っていれば出戻りで吸収・復活が出来るようなシステムがある世界だったのかも知れないし、それとも何かの意思でそうなったのかも知れない。
魔王と呼ばれていた骸骨さんは凄い魔力の持ち主のようだから、ダンジョンコアを破壊することでダンジョンマスターの権利を奪取、ダンジョンの魔力を使って自分の魂を引き寄せた…と言う事は考えられないだろうか?
本人にはそのつもりはなかったものの、結果的にそうなった…とか。
どれも根拠は無い想像だが、キリアス王国には勇者召喚の方法が存在していたのだから、それを応用した転生術があってもおかしくないだろう。
ここは魔力や魔法のある世界。
地球の常識が当て嵌まらない現象が起きてもおかしくはないのだ。
俺が転生してきた時の魂の受け皿だったあのスライムも、本当にスライムだったのかどうか、今となっては怪しいと思える。
見た目はスライムみたいだったけど、実は実体の無い魔力の塊だったとか。
そうでなきゃ、二つに分かれたりは出来ないだろ?
俺に付いてきている三匹のスライムは、たまに勝手に行動することもあるが、俺の意思を酌み取って行動してくれる有難い存在だ。
親バカかも知れないが、ウチの子達はそこら辺に居るスライムよりかなり優秀なので、恐らく全く別の存在だと思う。
ゲームじゃあるまいし、幾らこの世界が非常識だと言っても、普通のスライムと骸骨が合成出来るなんて破天荒に程がある。
俺が本当に人間と言う生物なのか、正直に言うとまだ不安は残っている。
でも誰にも聞く事は出来ない。
人に尋ねたところで、誰も返答のしようも無いだろうし。
ひょっとしたら、勇者と呼ばれるような人間なら復活した記録が残っているかも知れないが、リミエンに来てから聞いた限りでは勇者ってろくでもない奴なんだよね。
戦争に利用されるのは仕方無いとしても、大量虐殺、強奪、強姦等、嬉々として進んで行っているらしいのだ。
しかも呼んだ側の言うことも聞かないものだから、別の勇者を召喚して勇者を倒すと言うアホの極地の連鎖が起きたそうだし。
召喚方法は分からないけど、自分の秘密が分かるかも知れないと思えばちょっと興味が出てくる。
でも召喚は誘拐と同じだから。呼んだ連中に厭がらせをしたくなる気持ちは分からんでもない。
骸骨さんの記憶にある勇者は男女のカップル勇者で、男が『剣の勇者』、女が『魔法の勇者』と呼ばれているようだ。
(他にも『盾』や『槍』の勇者が居れば少々マズいことになるが、他に呼びようが無いのだから仕方あるまい)
それ以外の詳しい情報はロックが掛けられているのか、探ってみても読み取ることが出来ない。
ただ、あの骸骨さんが『殺人狂』とか『破壊神』とか呼び、とことん嫌っているのが伝わってくるぐらいなので、厭がらせのレベルじゃない事をやっていたんだと思う。
確か、魔法の勇者が魔道具のプロで、ギルドカードの魔道具を作った人物だと聞いたのだが、骸骨さんの記憶の女と同一人物なのだろうか?
偉大な技術者が『破壊神』と呼ばれるのも不思議な気がするが、俺みたいに別の人格を有していたとすれば、その可能性も考えられる。
いや、地球の偉人にも本人の意図と違った使われ方をした発明品の為に、随分と心を痛めた人物も居るのだ。
その勇者の発明品が悪用されただけなのかも知れないし。
過去の事を骸骨さんがもっと教えてくれる気になってくれれば嬉しいんだけど、あの人は気分屋だからなぁ。
ま、今のところキリアス王国の勇者はとにかくとんでもないゲスと言う認識が一般的だ。
だから子供達の勇者ごっこでは敵役のセラドンが勝つのが定番なのだ。
そのセラドンが、魔王と言う称号で呼ばれた骸骨さん、こと『セラドリック・フェルシア』のことで無いことを祈るばかりだ。
我が家の二階の屋根にデッキチェアを起き、ブリュナーさんの特製ミックスジュースを飲みながら優雅な一時を過ごす。
リミエンにやって来たことで、行商人のケルンさんや『エメルダ雑貨店』のバルドーさん達、冒険者ギルドのエマさん、ライエルさんに出会い、家を買って、子供達を保護して、家令にメイドに教育係を雇って今日から我が家で暮らし始めることになったのだ。
正直に言うと、あまりに事がすんなりと行き過ぎてて怖いくらいだ。
俺はまだこの世界で大銀貨三枚も稼いでいないのに、使った金額は既にその何万倍だ。
全ては骸骨さんのお陰だけど、骸骨さんイコール俺らしいからそこは問題無い。
でも、骸骨さんがあのゴブリラをあっさりと倒した技も、魔王としての記憶も全然無いんだ。
あの技さえ使えるようになれば、またゴブリラ級の魔物に遭遇しても戦えるようになるはず。
是非とも教えて欲しいものだ。
俺の意識のもっと深い部分に潜ればその記憶や知識が見つかるのかも知れないけど、寝てる人を起こすみたいであまりしたくない。
もしどうしても過去の記憶が欲しくなった時には、魔王の記憶を探ることにしようと思う。