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スライム×3+骸骨×1≒人間です。(リメイク版)【第一部として完結】  作者: 遊豆兎
第1章 アレとコレ三つを混ぜたらこうなる
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第3話 修行の成果

 あの日からもうどれだけの時間が過ぎ去ったことか。

 ゴブリン相手に逃げることしか出来なかったのは遠い昔のことさ。今の俺なら…。


 ガツン! バチン!ポヨっ! ザシュッ!キーンッ!


 三匹のゴブリンに囲まれても、ほらこの通り!

 えっ? 擬音だけだと分からないって?


 まあ、あれだよ、あれ。ガツンってのは棍棒で殴られた音だ。でも全然へっちゃら。

 バチン!ポヨっ!てのは、素手で殴られたけど、ポヨンと吸収。

 ザシュッ!キーンッ!は剣が命中しても瞬間的に外皮の硬度を高めて防御してるって訳だ。

 もうゴブリン如きの攻撃なんて怖くもない。


 え? 攻撃するのはどうか、だって?

 仕方ないなぁ、リクエストに答えて見せてやるよ。


(おらよっと!)


 まずは棍棒を持ったゴブリンの胸に全力でジャンプ!

 勢いよくぶつかったゴブリンは胸を押さえて蹲った。恐らく肋骨が何本か折れただろう。


 次に素手のゴブリン。俺は殴られる直前に全身を鋼鉄並に硬く変化させた。鋼鉄の塊となった俺を殴ったゴブリンが右の拳を痛そうに庇ったところで、今度は顔を目掛けてジャンプ!

 グシャっと音を立てて鼻が潰れ、歯が何本か折れたようで、慌てて逃げ出したよ。


 最後に剣を持ったゴブリン。こいつは以前に俺を斬ろうとした奴かもな。

 違うかも知れないけど、あいにくゴブリンの見分けなんて付かないからな。


 剣を避けると、カウンターで胸元にジャンプ!

 おっと、こいつは意外とタフだな。左手で胸を押さえたけど、まだ戦意は失っていないようだ。

 だが次に振り下ろされた剣の威力は明らかに落ちていた。


 タイミングを図ってジャンプして腹に体当たりをぶちかます!

 さすがにこれは効いたようで、剣を放り出して腹を押さえてやがる。


 一度地面に戻った俺は、次にジャンプして容赦なく顔面に体当たりして長く尖った鼻をへし折ると、それから留めを刺すために全力で大ジャンプ!

 最高到達点に達した所で、防御の為に編み出した体を鋼鉄並に硬くする技を発動し、後は重力に導かれるままにゴブリンの頭に目掛けて自然落下するだけだ。


 ドゴーンッ!


 腹を押さえているゴブリンの頭に鋼鉄と化した俺が狙い通り直撃した。予想外の大きな衝撃音と、頭蓋骨が砕けるメリッ!バキッ!と言う感じの音がし、ゴブリンはそのまま息絶えることとなった。


 棍棒を持っていたゴブリンも同様にして頭蓋骨を破壊して討伐した。

 逃げたゴブリンは放置で良いだろう。追うのも面倒だ。


 今の俺はこんな感じで戦えるようになっている。ゴブリン程度の攻撃なら焦って変なミスでもしない限り、俺の防御を抜くことは無いだろう。

 それに高速で跳ね回っていれば攻撃を当てるのも難しいんじゃないかな?


 むしろ課題は攻撃力の不足だな。

 弾力性のあるスライムボディではどうしても破壊力が足りていない。言ってみれば体当たりなんて高速で撃ち出されたバレーボール程度。至近距離でヒットさせているから威力があるだけで。

 予め相手が素早く動けないように弱らせてからじゃないと一撃で致命傷を与えることは出来ない。

 だから毎回留めを刺す為に上空から落下して攻撃をしてるんだ。


 体を鋼鉄化すると、弾力性を失ってしまうのでジャンプが出来ないってのが今の悩みなんだ。

 おかしいよね、スライムってメタル化したらとってもスピードが速くなる筈なのに、俺は全然そんなことが無い訳さ。寧ろ思うように動けなくなっちまう。


 ゴブリンを仕留めたところで、今日の食事にしますかね。何を食べるかって?

 言わすなよ。食欲無くすぜ?

 俺だって最初はすっごく抵抗があったんだからさ。

 まあ、この森には俺以外にもたくさんのスライムが生息してるから放置しても問題ないんだけど。


 で、俺にもあるけどこのゴブリンにも魔石はある訳だな。俺が主食にしてるのは、魔物の魔石なんだよ。

 最初はこんな物が食えるのかと思ってたんだけどさ、小さな鳥の魔物を丸ごと食べた(体内に取り込んで溶かすって感じかな?)時に分かったんだよ。

 一番旨いのは魔石だってことにね。旨いと言っても味は分からない。魔力が感じられたと言うべきか。


 それから俺は積極的に小型の魔物を狩って魔石を食べ始めたんだ。肉は他の魔物も食べるからお裾分けして、うまくこの森のボス的存在の魔物の傘下に入り込んだ訳だ。


 その魔物はめちゃくちゃデカイ熊だった。

 あいつを見た時は、命懸けで逃げることしか考えられなかったよ。でもさ、あいつにとっちゃ俺みたいな三下のスライムなんて取るに足らない相手だったみたいでさ。あっさりと無視された訳よ。


 助かった!と思う反面、ちょっとプライドが傷付いた。

 それからなんやかんやで一緒に暮らすようになって、俺の修業の相手をしてもらったんだよ。

 うん、怒ると怖いけど意外と良い奴だった。


 今、あいつはこの森を出て、もっと奥へと引っ越して行った。この森の魔物では物足りないって言ってたのさ。

 それでも奴は俺が生き抜く為に防御を磨いてる間、ずっと面倒を見てくれたんだよ。本当に感謝してる。


 ついでに攻撃の修業も付けて欲しかったけど、それは自分で頑張ってくれって言われてしまった。残念だ。


 だから今の俺は防御しか出来ない感じ。攻撃のバリエーションを増やすのが当面の目的だな。

 アイデアは幾つか有るんだけど、訊きたいかい?


 スライムの攻撃って聞いて、君ならどんなのを想像する?

 多分だけど酸を使った攻撃だろうね。出来ないことはないよ。

 でもさ、酸攻撃って体内にあるスライム液を噴出しながら瞬間的に強酸性の液体に変化させる必要があってさ。

 スライム液って有限なんだよ。食事の時にも使う物だし、それを攻撃に使っちゃうと体が小さくなっちゃう訳よ。だから俺は使わないんだ。


 なので考えてるのは、一つ目として倒した角兎の角を体内にストックしておいて、高速で撃ち出すような攻撃。

 二つ目は同様に角を外皮に固定して突進する。

 それから三つ目は体の一部だけを剣みたいに硬くして斬り付ける。

 四つ目は体を変形させる応用で、触手を生やすってやつね。

 最後の五つ目、魔法を覚える。


 アイデアは有るんだけど、一人で悩みながらやっても思うように進まない訳さ。

 そこで考えたのが前みたいに分裂して、それぞれが別の攻撃方法の修行をするってやり方なんだ。


 特に期間とかは決めてなくて、もし身に付けたらここに来るようにって緩い感じで皆が森の中で修業をしてる。


 そうそう、思い切って五人になった時はそれはもう痛いのなんのって。もうあんな無茶はしたくない。でもスライムの何処に痛点があるんだろ?

 ちなみに分裂したら体の大きさはきっちり五分の一になってしまった。分裂する前の大きさに戻れるのかな?

 それでうっかりしてたんだけど、体重が減ったってことは、例の上空からの攻撃がパワーダウンして使えなくなったってことだよな…。


 話は俺が担当してる魔法の修行についてなんだけど。正直言って難航してる。

 月単位で日数が過ぎたと思うけど、弱い魔物を見つけては倒して食べまくり、体の大きさを戻すことには成功した。

 弱い魔物と言っても数を食べれば栄養になる。今の俺は魔石からは魔力をビンビンに感じてるよ。そりゃもう魔力の塊みたいなもんさ。だから魔法に魔石は欠かせないと思うんだけどさ、でもなんかしっくりと来ない。


 何が?って説明は難しい。けど、俺の感覚として魔石ってやっぱり脳なんだよね。

 視覚、聴覚、触覚、体のバランス感覚なんか全て魔石に情報が伝わって魔石で処理され、魔石からの信号で体が動いている。

 で、今の魔石だとそれだけの処理で能力を限界まで使用しているんじゃないかな?

 CPU使用率百パーセントってやつ。

 うん、そんな気がする。実際のところは分からん。


 なので、俺が今考えてるのは魔石のバージョンアップなんだ。パソコンだってどんどんCPUは進化していっただろ。

 俺の魔石だって同じように進化出来るんじゃないかな?

 もちろん根拠なんて何処にも無い。けど、それ以外には思い付かない訳よ。まぁ、どうやったら魔石が進化するのか全然わからないけど。


 滝に打たれてみる?

 試してみたけど、滝の勢いに負けてあっさりと流れされちまったよ。溺れたけど、スライムは水の中でも平気だったわ。


 瞑想してみる?

 前にも試したけど、速攻でスリープモードに入っちまう。やっぱりスライムには向いていないのかも。


 そもそもこの森の中で魔法を使う魔物が居ないのがいけないんだ!

 うん、きっとそうだ!

 なので俺は旅に出る…いや、いいのか、それで?

 逃げてるだけじゃね?


 どっかに食べると進化する木の実とか、知恵の実とか落ちてないかな?とか軽く現実逃避。

 魔物を倒しては魔石を食べているけど、どうもバージョンアップしそうな気配を感じない。言ってみればエネルギー補給はこれで出来ているんだけど、あくまで充電池に電気を溜めているって言うレベルなんだよな。


 何か魔石を進化させるブレイクスルーがある筈。多分ね。

 そこで考えてみる。俺の体の中には魔石が一個ある。その魔石でこの体のありとあらゆる制御を行っている。

 それが多分問題なんじゃないかな?

 何が問題かって?

 一個の魔石に複数の処理をさせているってことさ。当然処理速度は低下するだろうし、魔石の全ての能力が利用出来ないと思うんだよ。


 処理能力の限界を高める為には、機能ごとに魔石を分けるのが良いんじゃないかな?

 視覚情報処理専用の魔石、聴覚処理専用の魔石…みたいな感じでさ。

 もちろんそれらを統合する為のメインの魔石は必要だろう。


 この、魔石を複数持つってのは何も処理の高速化の為だけではない。俺の弱点、それは勿論魔石だよな。

 今までに何匹かのスライムが魔石を壊されて死んでくのを見たことがあるから間違いない。

 だからリスクを分散するために複数の魔石を持つってのは理に適うと思ってる。


 それが出来るかどうかは別問題としてさ。うん、魔法の修行の話は何処にいったんだろうね?

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