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スライム×3+骸骨×1≒人間です。(リメイク版)【第一部として完結】  作者: 遊豆兎
第2章 何故か冒険者になるにはトラブルって付き物だよね
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第25話 ゴブリン退治?

 冒険者ギルドで身分証明書となるギルドカードを魔道具で作って貰った。

 ハイテク魔道具を見てテンションが上がっていたのに、その直後に何故かゴブリン戦を想定した模擬戦に突入。

 しかし相手は何故か(ボコ)る気満々だ。

 制限時間もフィールドも指定無し。

 俺、これでも登録したての初心者だよ。こんなの相手に素手でどうやれってんだろうう。

 

 全滅はさせなくても良いと言われたけど、普通の人なら逆に速攻でボコられて終わりだろ?


「リタさん、彼らに何と言ってこの場に立たせた?」

と再度リタに聞いてみるが、やはり返事は無い。リタの意味不明な行動に少し切れかけたところで意識が薄くなっていく。


 …ふっ、久し振りの人間か。


 頭の中に骸骨さんの声が聞こえたかと思うと、俺の意識がそこで消える。


 リタの返事を待っている間にゴブリン役の両手に剣を持った剣士(以下、ゴブ太郎)が気勢をあげて突進し、距離を詰めると一メートル程手前で剣を振り上げる。

 結構マジな勢いだけど、お前はゴブリン役だって事を理解しているのか?


 ゴブ太郎がそこから一歩踏み込みながら、同時に俺を両断せんと言わんばかりに「オリャャーッ!」と叫びながら勢いよく剣を振り下ろし始めた。


 フンッ、俺の直前を剣が通過するようにわざと外してビビらせようって魂胆かよ。

 そんな見え見えのお遊戯に付き合う程、俺は出来た元骸骨(人間)じゃないんでね。

 けどよ、俺がそのまま一歩でも前に出てたら頭かち割れてたぞ。

 まぁ、初心者だったらこの勢いに怖じ気付いて後ろに下がると思っての選択なんだろうがな。


 勢いよく振り下ろされた剣がガッと音を立てて地面を打つ。

 剣は鍬じゃないんだぜ?

 畑を耕したいなら、もっと腰を入れないと駄目だぜ。

 両手は剣を握った状態で、腕は剣を打ち下ろして伸びた状態だ。おいおい、これから強引に切り上げの連撃に繋げるつもりか?

 お粗末過ぎだぞ、この程度で大銀貨級だと? 

 リミエンはインフレでも起こしてんのか?


 でも理由はどうあれ、オイタをする冒険者にはお仕置きが必要だな。


 斜め前に半歩移動していた俺は、ゴブ太郎が剣を跳ね上げるより早く剣を持つゴブ太郎の右手を破壊するつもりで遠慮なく上から踏み付ける。

 その直後、ゴブ太郎が呻き声を上げて顔を顰めた。運が悪けりゃ、あの骨、なんてったっけ?

 第一、第二の中手骨だったか、あの辺りがグチャっと折れてるだろうが、そんなの俺の知ったことか。


 ま、後で優しいクレストが弱い者虐めをしたと非難されるのも可哀想だ。さっさと熨すとするか。

 ゴブ太郎がまだ剣を振り下ろして両腕で逆三角形を作っているままだ。

 巨乳グラビアアイドルがビキニでその格好なら一考の余地はあったが…その間を縫って腹にボディーブローの一撃を入れる。ドスッと言う音の後にゴブ太郎はダウンした。

 おいおい、なんだょ、腹は全然鍛えていねえのか…こりゃ、やり過ぎたかもな。


 久し振りの対人戦だから出て来たんだが…弱過ぎて逆にストレス溜まるな。これならクレストにやらせても少し怪我するくらいか。それなら問題無いな…よし、替わるか。


 短時間だが戦闘中に意識が途切れていたようだ…が、何となく分かる。骸骨さんが勝手に出張ってきたんだな。

 もう両手剣を持った剣士は白目剥いて延びてるから無視してヨシ。


「まだやる?」

と聞き終わらないうちに魔法攻撃と矢が盾持ちの後ろからほぼ同時に飛んでくる。


 おーっ! 飛び道具で攻撃されたのは初めてっ!

 だって森の中の魔物達は基本的に近接攻撃しか仕掛けてこなかったから、ちょっとテンション上がるかも。

 こりゃ、ピンチだわ~っ、ワクワク。


 矢の方が先に来るか。この程度なら見える。

 左に寄って矢を躱し、すかさず右手に魔力を纏わせて遅れて飛んで来た魔力球を弾き飛ばす。衝突の瞬間、まるで帯電したかのようにバチっと紫色の火花が飛び散った。

 手にダメージは無いな。

 なる程、こうやれば攻撃魔法は防げるのか。


 矢の連射は約三秒間隔か。魔法は…早く…次弾装填…しろよ!…魔法かっ、バチッ!…ちょっと…だから…矢はいらねぇ…魔法だっ、バチッ!…ん?…おい?…どうした?…魔法っ、バチッ!…矢の弾切れ?


 でも、あの矢の速さに比べたら、まだ森に居た赤い角の兎の突進の方が速かった気がする。しかもあの兎はフェイント使ってきたからヤバかった。右手に風穴を開けられたからな。


 矢を全弾撃ち尽くしたゴブ三郎が弓を捨てて短剣を右手に持ち、盾持ちのゴブ二郎の隣に立つ。


 あれ?ゴブ太郎よりこいつらの方がタチが悪そう?

 ゴブ二郎が盾を前に出して、サイドからゴブ三郎が短剣でチクチクチク、時折ゴブ四郎の魔力球とゴブ二郎が片手剣でサクッ。


 このコンビネーション、絶対ヤバいよ!

 ちょっと骸骨さん、悪いけど交代しようよ!


 …。

 …。


 アイツ、勝手に出て来て勝手に帰って、呼んだも出て来ないとか、どんだけ自由人なんだよ?!


 あーっ!チクチクチク、チクチクチクと三郎の短剣が鬱陶しいっ!

 素手で短剣、どう対応すればいいんだょ?

 防御も出来んだろ!

 後ろに下がったら即座に二郎がシールドバッシュしながら距離を縮めてくる。そこで狙い澄ました魔力球が飛んで来てから三郎のチクチクチク…このコンビネーションが出来るならゴブ太郎、いらねぇだろ?

 腹立つわ。


 けど、四郎の魔力球の連射間隔は十秒ちょいだし、三郎は短剣の扱いにそれ程慣れていないか。

 三郎に気を取られていると二郎が攻撃に入るから要注意だけど…。


 でも、さっきから馬鹿の一つ覚えで振り下ろし、突いて、薙ぐ、三郎のワンパターンのコンボには目が慣れたんだよ!

 格闘ゲームで三連コンボの攻略なら山ほどやってんだから!


 潰すのは! ガッ! 起点の振り下ろしだ!

 短剣を躱しつつ、タイミングを合わせて三郎の手首に膝蹴りを入れると、ミシッと音が聞こえて三郎が短剣を落とす。


 それを見て二郎が慌てて片手剣で突きを放つがバックステップで回避。すかさず盾を突き出して来たが、これは想定済みの行動だ。


 その盾に魔力を貯めた右手の掌底を打ち込む。

 インパクトの瞬間、盾の向こうに衝撃を与えるようなイメージで魔力を一気に放出する。


 バンッと爆発したような衝撃が発生し、盾を越えて全ての衝撃が二郎に伝わったのか、二郎が盾ごと後ろに弾き飛んだ。


 それから少し遅れて飛んで来た魔力球を左手で叩き落とし、手首を潰され狼狽える三郎の腹にボディーブロー。

 倒れた二郎を踏み付けてノックアウトし、ラストの四郎には気持ち軽めでボディーブロー。


 こいつら、弓矢と魔法の攻撃より、矢が弾切れになってからの方が厄介だったな。

 飛び道具の攻撃を面白がって避けて遊んだせいで、余計な苦戦を強いられた訳だ。反省はするが後悔はしない。


 さて、ギルドマスターの意向に背いたお姉さんをどうしてくれようか。


 あれ? 意識が薄れて…なんでこのタイミングで骸骨さんにシフトチェンジなの?

 勝手な真似はするなよ…頼むから穏便にね…肩身が狭くなるのはイヤだから。


 観客席に座っていたリタの元へ鬼の形相で近付くと、彼女の顔が真っ青になってへたり込んだ。


「嘗めた真似をしてんじゃねえぞっ!糞カス女!」

と威圧を込めて叫んだ。


 俺はリタの顔など見る気にもならないので、ドアを閉じて馬鹿共をその場に放置すると急ぎ足でギルド本館の受付カウンターへと戻る。


 奥のギルドマスターの部屋に勝手に入ったらまずいか?

 クレストの行動に支障が出るようなことは避けるべきとは思うが、俺は頭に来ているのだ。


「リタの件で至急ギルドマスターと話がある。通してもらう」


 カウンターは凵の形で、リタの座っていた新人受付窓口の反対側、右端の天板が跳ね上げ式の入り口になっている。

 天板を上げてそこを通ろうとするが、端から二つ目の席に座っていた気の強そうな受付嬢が、

「勝手に入るな!」

と怒鳴り付ける。


 ほぉ、この俺にそんな態度を取るとはな。この受付嬢の中でも姉御的な存在か?


「あんな奴を擁護するつもりか。

 あれはギルドぐるみで企んだことでは無いだろ?」

「何のことよ?」


 立ち上がり、体を張って俺の侵入を防ごうとする気概には感心するが、用心棒としては物足りない。

 チョコレートのかかった細長い焼き菓子程度の丈夫さしか無さそうだ。俺の前ではつっかえ棒にもなりはしない。

 それが証拠に、僅かに漏らした威圧に彼女の脚は恐怖でブルブルと震えている。


 それにしても、随分と人が悪い男だな。

 ドアは開けっ放しだから、この遣り取りは聞こえているだろ?

 それとも敢えて部下を試しているのか?

 スパルタ教育はよく考えて実施しないと部下が潰れる。それにすぐパワハラだと訴えられるぞ。


「予定通り、頼まれた仕事をしてきた。その報告だ」

と適当なでっち上げを言うが、先にリタの件と告げてあるのだ。

 奴を匿うつもりが無ければ、こっちの話を聞く気になるだろう。リタはギルドマスターの指示をわざと無視したのだからな。


「ミランダ、彼を通してくれ。私からの極秘の依頼達成の報告だ」


 落ち着いた感じでよく通る声が執務室から聞こえてくる。どうやら彼に俺の思惑が通じたようで、とりあえず安心する。

 ミランダと呼ばれた受付嬢が渋々と言った表情で道を空ける。


 「ありがとう」と一番短い謝意を述べ、執務室に入るとドアを閉じる。


 思ったより狭い。執務室机の前には来客用の小さなテーブルとソファ、壁にはところ狭しと本棚とタンスが備え付けられている。

 カーペットも来客用テーブルもソファも余り高価な物では無さそうだ。節約志向か?


 執務机だけが豪華で周囲の家具類からは浮いている。そんなことは気にせず、壮年の男性が机に座ってコッチを眺めている。


 その前にツカツカと歩み寄り、

「おっさん、あれはどう言うことだ?」

と威圧を込めて問い詰める。

 やべぇ、腹が立っていたからこんな事言っちまったぜ。クレストに怒られそうだ…無視するけどな。 

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