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スライム×3+骸骨×1≒人間です。(リメイク版)【第一部として完結】  作者: 遊豆兎
第8章 ダンジョンアタックの準備は怠りなく
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第140話 エマさんとエリスちゃん

 『紅のマーメイド』の四人が我が家にやって来たと思ったら、ベルさんに連れられてオリビアさんと子供達と一緒に町の外へと連れて行かれた…彼女達の意思はどこへやら?


 俺とエマさんはペンダントを受け取るまで時間はあったのだが、早めに町に出ることにした。

 チャムさんのせいで遠ざかっていた『エメルダ雑貨店』を久し振りに訪れ、エリスちゃんとエメルダさんに変わりが無いことを確認出来たので一安心だ。


 ここでも俺についての噂の話を聞くことになったのだが、どうやら俺が既に結婚したらしいと言う意味不明、且つ何のためにそんな噂を流すのか理由が分からないものだった。


 名前は既に忘れたけど、衛兵隊長みたいに悪い噂を流している訳ではないので特に実害はないのだが。

 それでも行く先々で誤った情報に訂正を入れるのは面倒だと思う。


 そのせいか、エリスちゃんが冗談で結婚してくれと言ってきたり、恐らくエリスちゃんに対抗してのことだと思うけどエマさんは俺を『あなた』と呼ぶし。


 それにしても、この国では市民権を持っていないと結婚出来ないってルールがあるから、俺は今のままじゃ結婚は出来ないんだよね。

 かと言って市民権を買うのは負けた気がするし。


 勿論勝ち負けの話ではないのだが、金持ち優遇政策とも思えるこの制度には納得が出来ないので、どうしても反発してしまうのだ。


「エマさん、貴女はクレストさんと結婚したいと思ってるのね?」


 突然、時速百マイルの豪速球でズバッとストライクを取りに来るような質問をエメルダさんが投げ掛けてきた。

 エマさんも少しも驚いた様子を見せるがそれはすぐに消え、穏やかな笑みを浮かべてこう答えた。


「私は…いえ、クレストさんの周りに居る女性達なら、きっとみんなそう望んでいると思いますよ。

 ただ、当の本人だけはその事を分かっていない様子ですけど」


 えっ! …冗談でしょ?


 農村出身のマーメイドの四人はともかく、オリビアさんやシエルさんまで?

 エマさんの告白に思わず手を振ってそんなことは無いと否定する。


 残念ながらハーレムルートになる予定は無いし、俺はもし結婚するなら一人の女性が居ればそれで良いと思っている。

 勿論だけど結婚してからその先のことは分からないょ?


 今でも地球にも一夫多妻制を認める国は存在するが、経済的倫理的理由から余程の人でないとハーレムなんてしないはず。


 コッチの世界で産めよ増やせよが当然なのは、子供が成人に達するまでに亡くなる割合が低くないからだ。

 だからとにかく数打てと言う考えがあるのは知っている。

 でもそれは世継ぎ問題が生じるような偉い立場の人達だけに留めてもらいたいものだとマジで思う。


「クレストならお金も心配無いし。

 四人、五人ぐらい娶るのも可能よね」

とエリスちゃんが笑顔で言うけど、俺からすれば何を笑ってんだと怒鳴りたくなる話なんだよな。

 でも単なるカルチャーギャップに過ぎず、怒る訳にもいかないので苦笑いで誤魔化すしかない。


「その四人、五人の枠にエリスは入れるのかしらね?

 強力なライバルは多いはずよ」

と何か心当たりがあるのかエメルダさんが指折り数え、

「残念、無理みたいね」

と人差し指でエリスちゃんの額を軽く小突く。 


 ちょっとその指に入ったのが誰か興味はあるが、自分から薮を突くようなまねはやめておく。

 恐らくエマさんは当選確実だと思うけど、入ってなかったらとても気まずい。


「その中に私は入っているの?」


 残念…その本人が聞いてしまったのだ。勿論入っているわよね?!と言う確信めいた表情が見て取れる。


「エマさん、家庭教師さん、『紅のマーメイド』の前衛二人が断トツでランクインしているわよ。

 他には人妻も行けるクチだって噂もあるけど、聞きたい?」


 …おかしい…一体どうしてそんな噂が?

 俺の知り合いの既婚女性って…クッシュさんか?

 ウチでパンケーキを焼いてもらったのが噂の原因かも。


 でもこうも根も葉もない噂を流されるのも困ったものだ。無視すれば良いと言っても限度はあるし。


「エマさんとセリカさんは確実、娶らなければ男じゃないって話になってるわね。

 クレストさんはこの話を知らないの?

 私もそろそろ税金の納め時だと思うのだけど。

 そうでないと、候補はまだまだ増えるわよ」


 最後の一文はエメルダさんの考えだろうけど、誰かにも似たようなことを言われた気がする。


「立派な御屋敷もあるんだし、危険なことをしなくてもクレストさんなら十分稼げるんだから。

 早く決めておくことをお勧めするわね」


 その真剣な表情から、エメルダさんが面白半分で言っているのではないことぐらいは俺にも分かる。

 下手にこんな噂が一人歩きするのをやめさせる為には身を固めるのが一番なのだろうが…俺の体は骸骨さんとスライムで出来ている。


 普通の人間と同じだと思って良いのだろうか?


 歳を取ることは出来るのか?


 寿命はどれくらいなのか?


 見た目は人間だけど、この疑問が残っている以上やはり結婚に関しては二の足を踏んでしまう。


 俺の体の事実を打ち明けたとしても、普通に考えれば信じることなんて出来ないはずだ。

 人の形の体を得られたことで調子に乗って何も考えずに人里を目指して歩いて来たが、数年間は森にこもって生活をするべきだったのかも。


「そうやって悩むのは良いことよ。

 クレストさんがどんな答えを出したとしても、誰も責めたりしないわ。

 一人に決めきれないのなら、みんなと結婚するのも平等だわ。

 子供の好きなあなたなら問題ないでしょうし」


 そう言ってエメルダさんがウンウンと頷くけど、普通は考え抜いて一人に決めるのが当たり前の世界の住民だった俺だ。

 その一人を決められないからみんなと結婚!なんてとてもじゃないけど俺には無理。


 可不可だけで考えれば可でも、精神的には不可だ。異世界バンザイ、ハーレムバンザイの精神の持ち主がある意味羨ましいよ。


「クレスト! 今からでも胸が大きくなる装置を作ってよ!」


 エリスちゃんさぁ…突然何を言い出すのの?

 俺が巨乳派だとでも思ってるの?

 好きなのはミニスカから覗く絶対領域だぞ。

 それにエマさんを見てくれ、普通サイズ…


「あ・な・た! 私の胸が何か?」


 おかしい! エマさんの胸を見たつもりは無いのに何故バレた!

 まさかエマさんはエスパーなのか?


「やっぱり二人は仲が良いわね」


 あの、胸のことで怒っているエマさんを見てどっからそう言う結論が出て来たの?

 まぁ確かに仲は悪くないよ。さすがに嫌いな女性を下宿させてあげようなんて気にはならないし。


 女性の胸を大きくするには生活習慣と食生活の改善が必要で、後は筋トレとマッサージのはず。

 エリスちゃんの言うような装置は…怪しいコミックに登場しそうだけど、生身の体を相手にした豊胸マシーンなんて多分現実的には無理だろうね。胸を揉むだけでは逆効果になるはず。


「…あの、胸を大きくする方法、知ってるの?」


 どうやら俺が記憶を探っている時間が想像以上に長かったようで、エリスちゃんが期待を込めた眼差しで俺を見つめている。

 …エマさん、貴女は推定Cカップなのだからそれ以上大きくする必要は無いですよ!

 だって俺の好みのサイズ…ゲフンゲフン。


「クレストさん、その方法を後で纏めておいてくれるかしら?

 効果が出るようなら良いお小遣い稼ぎになるわよ」

「えっ? あ…はぃ…」


 エメルダさんの目がマジで恐い。

 良い歳なんだし、今更バストを気にする必要は無いじゃん…。


「何かとっても失礼なことを考えていないのかしら?」

「これは有罪ね~ウシシ」

「ごめんなさい、擁護出来ないわ」


 この場に居る三人ともエスパーか?!

 恐すぎるっ!


「俺でも豊胸術なんて大して知りませんからねっ!

 成功しなくても文句は言わないように!」


 興味本位で閲覧したページに載っていた記事、記憶はかなり曖昧になっているけど今夜の内に書き出しておこう。

 こう言うのを忘れると後で何を言われるか分からないからね。


 軽く様子を見に来るだけの予定だったのに、どうしてこうなった?

 でも『リミエン商会』に美容部門を立ち上げるから、その商材の一つにこう言うコースを設けるのもアリなのか。


 女性専用のフィットネスジムとか作れば意外と流行るかもね。

 トレーニング用の器具はラファクト鋼材店にでも頼めば作って貰えるだろうし。なんたってあの店には優秀な錬金術師が在籍してるんだから。


 よし、石鹸では失敗したから、この話は最初から人材派遣部のメイベル部長にでも相談してみるか。

 レイドルさんより彼女の方が話がしやすいし。


「ママ、クレストがこのモードに入ったってことは期待しても良いのよね?」

「そうよ、こうなったら間違いなく美容革命が起きるわよ」

「二人とも期待しすぎよね?

 いくらクレストさんが色々と知ってると言っても男性よ?

 美容のことは詳しくないと思うけど」

「エマさん、この人に常識は通用しないわよ。

 非常識の塊を相手にしてると思って付き合わないとイケないからね」

「非常識…クレストさんは規格外なだけよ」

「愛は盲目って本当なのね」


 そんな会話の声に気が付くまで色々と記憶を探り続け、頭の中には既にフィットネスジムの構想が出来上がっていたのだ。


 ヨガやエアロビクス等を取り入れるのも面白いのだけど、残念ながら知識が十分ではない。

 ヨガの真似事なんて体を傷める可能性もあるので、にわか知識での見切り発車はキッチリと自粛する。


 エアロビクスには音楽が必要だが、吟遊詩人の持つ弦楽器以外の楽器はまだ見たことがない。

 しかもアップテンポな楽曲自体が稀なのだ。俺が聞いた中で唯一なのが、ロイ達に披露された『顔はマズイぜ~♪』の曲だけだからね。


 視界の片隅にエマさんに何かのライバル宣言を出すエリスちゃんを捉えていたけど、これは無視で良いだろう。


「でも意外だわ。

 職人さんって頭に鉢巻きを巻いたおじさんだと思ってたのに。まさか十代の女の子が皮剥き器を作ってたなんて凄いわね」


 エマさんが素直にそう感想を述べるので、エリスちゃんも悪い気はしないようでエヘンと鼻高々な様子だ。

 もし二人の仲が悪ければ俺も良い気持ちになれないけど、そんなことは無いのでこちらも一安心。


 人って理由は無くても『アイツとは馬が合わない』みたいなものが時々あるからね。

 どうしてそう思うのか不思議だけど、ひょっとしたら前世の記憶が悪さをしてるのかもね。


 さて、俺の用事も気も済んだことだし、少し早いけどお昼ご飯を食べるお店も探したいし、ご飯の後はペンダントの受け取りだからね…ペンダントのお値段が非常に気になる…。

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