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スライム×3+骸骨×1≒人間です。(リメイク版)【第一部として完結】  作者: 遊豆兎
第8章 ダンジョンアタックの準備は怠りなく
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第127話 ダンジョン内での休憩は?

 溜まりすぎた魔力を道路工事で発散し、魔力充填用のマナバッテリーを百個購入。時間のある時にこれに魔力を充填するつもりだ。


 夕食後、アヤノさんとカーラさんに勇者関連の書物を渡した。これでマーメイドの四人に一つずつプレゼントが出来た訳だ。


 女性達の盛り上がる中、ブリュナーさんは夜の店の話題に触れる訳にもいかず、黙って飲み物を作りながら成り行きを見守るに留めた。

 俺もうっかり言うわけにもいかない。


 村出身の四人は夫婦やカップルの営みを見るに無く見ているので、オリビアさんやシエルさんより詳しいだろうし、そもそも罪悪感が違うみたいだ。

 嫌いでない相手なら子作り可、的な考えも僅かながら見え隠れする。彼女達が居る時は、場に流されないよう気を付けねば。


 それよりアイテムボックスの中の魔界蟲が、今後どうなるかの方が問題だ。

 今は魔力が余計な所に要らないお節介を焼いているぐらいの被害で済んでいるが、それを超えない可能性が無い訳ではない。


 これが魔界蟲の姿で無く、フェアリーやピクシーと呼ばれる妖精の姿であれば愛着も湧くし、扱い方も変わるだろう。

 可愛い系のドラゴンやモフモフの獣系も捨てがたい。


 それが全然可愛くもないドリルかアスパラだと?

 せめて生物的な要素が欲しい。

 魔界蟲は魔力の塊なんだから、願えば何でも出来るんじゃない?

 ここで下手に俺が何にしようと考えると、深層心理にある一番好きなものに化ける可能性があるから何も考えない…。


 考えない…。


 …考えないったら考えない…。


 いや、食べ物のこととか、今後の予定ぐらいは考えてもいいだろ?

 好きな生き物が出て来るわけじゃない。

 でもうっかりミスって可能性もあるな。


 それなら逆に素直にアンコールした方が良いのか。

 うーん、側に居ておかしくない生き物が良いよね。となるとペットショップで買える生き物だ。

 そこから水槽の必要な生き物と爬虫類、両生類はまず除外。犬、猫系統は在り来たり過ぎるからこれも除外。


 あっ、待てよ。地球に居るのと同じ生き物が居るとは限らない。

 それに地球で絶滅した生き物だって居るかも知れない。そう考えたらやっぱり決めきれないや。


 人に迷惑掛けず、強くて可愛い子に変身してくれたら満足だ。

 意外と俺って優柔不断ってことかな?

 ま、ドリルから変身すると決まった訳でも無いし。あくまで願望だからな。


 それとついでに、お風呂上がりのアヤノさんとセリカさんが色っぽいとか考えない。これも俺を籠絡しようって作戦に違いない。

 お風呂の文化は勇者が広めたものの、やはり費用と手間の問題で庶民には浸透していない。だからお風呂に入る気持ち良さを知らずに一生を終える人も多いのだ。


 濡れた髪を乾かすのは中々大変。コンパクトなドライヤーは無く、扇風機とヒーターを合体させたような、パーマに使う機械のような外見の魔道具で髪を乾かす。

 小型のモーターを作る為の絶縁素材がまだ見つかっていないのだから仕方ない。


 錬金術師が居るから何でも作れると思えばそれは違う。魔力を通しにくい素材を作ることは出来ても、(魔力を使って作る為に)魔力を完全に絶縁する素材は作れないのだとか。


 ブリュナーさん特製フルーツ牛乳を飲み、リビングでマッタリする二人。

 今はサーヤさん、カーラさんが仲良く入浴中だ。なおオリビアさんだけ先に帰っている。


「この家、毎日来たくなるわね」

「毎日は困ります。こう言う非日常はたまに味わうから楽しいのですよ」


 アヤノさんの呟きにブリュナーさんがぴしゃりと断る。


「それに、我が家の暮らしに慣れると親方様のようになりますから」

「…凄く納得」

「私もです」


 一体俺のどこに納得する要素があったのか?


「クレストさんのことだから、おトイレとミニハウス以外に、お風呂も持ってるでしょ?

 前回は出さなかっただけで。

 多分洗浄剤がまだ出来ていなかったから、かしら?」


 アヤノさんは鋭いな…何故そう確信したのだろう?

 そのアヤノさんの言葉で思い出したことがある。


「タイニーハウスの改築を頼むの忘れてた!

 ダンジョンでは使えないだろうから後回しにしてたんだ」

「おトイレとキッチンを付けるのよね?」

「その…お風呂もあると」


 内輪のメンバーだけの時にはタイニーハウスを使うつもりだ。

 どうせ出すなら居住性を高くしておきたい。

 雨の日もあるだろうから、外に出なくても良いように屋根続きのおトイレとキッチンは欲しい。ついでに馬房にも濡れずに行けたら嬉しいよね。

 セリカさんがお風呂を要望するとは…それ程気持ち良かったのか。それだとボイラーの魔道具を付けなきゃいけないか。


「それに仕切りも。男女で分けるよ」

「ダンジョンの中での休憩はどうするの?」

「次はベルさんも居るから、三人用の丈夫なテントを使うよ」

「そうよね…仕方ないわね」

「でもダンジョンって傷付かないとか言われてるわよ。ペグ打ち出来ないわ。それにテントを張って寝られるかどうかも分からないし。

 それに…そもそもだけど、あなた達、ダンジョンの中で寝るつもりなの?」


 セリカさんが不思議な顔をして俺を見る。どう言う意味だ?


「クレストさんなら、間違いなくそうすると思ってましたし…」

「違うの?」

「あなた達ねぇ…」


 セリカさんは悪くないと思う。寧ろ俺の考えがよく分かってるから有り難いよ。


「ダンジョンにもよるでしょうけど、基本的には魔物だらけよ。一度潜ったら寝ずに進み続ける覚悟を持たないと」

「そんなの無理っ!」


 現代人を舐めんなよ! 最低一日六時間は寝ないと生きていけないんだからな!


「あの…おトイレは?」

「さぁ?」


 そこはアヤノさんも知らないらしい。回りが魔物だらけで呑気におトイレしてる余裕なんて無い気がする。

 それなら周囲の魔物を殲滅して時間を稼ぐぐらいはしないとな。


「基本は垂れ流しですね。最中に後ろからズドンとされたく無いでしょ?」

とブリュナーさんが教えてくれた。


「クレストさん、最低でも簡易おトイレを出してください」

「そうなるよね…」


 アヤノさんもおトイレ問題の前には形無しだ。

 俺も垂れ流しなんてイヤだし、「出したから『浄化』を掛けて」なんて彼女達に言わせたく無い。

 羞恥プレーの趣味は無いんだから。

 そうなると、周囲に魔物が居ないってことを明確にする方法が必要か。


 ウチのスライム達の存在は内緒にしてるしなぁ。ラビィも魔界蟲の魔力を嗅ぎ取る嗅覚を持ってたけど、ダンジョン内では期待しない方が良いだろう。


 ドラゴ○レーダーのように魔石のある位置をピコンピコンと表示するような魔道具があれば良いけど。


「安全の確保は最優先、だよね」

「勿論です」

「やっぱりタイニーハウス、使おうか」

「…賛成」

「私もです…クレストさんの家なら何とかなりそうだし」


 こうして非常識と言われようが、ダンジョン内でもタイニーハウスの使用が決まったのだ。

 そうなると、タイニーハウスの改築が完了してからのダンジョンアタックになるか。


「でも、安全確保はどうやって?」

「土で壁を作ろうか。道路整備用に覚えた硬化魔法を使えば良いし」

「でも土は…あっ『格納庫』に入れてけば済むのね」


 これならダンジョン内でも何とか快適に過ごせそうな気がする。

 でも土の壁に土の天井しかないのは殺風景だな。プラネタリウムの魔道具とか無いのかな?

 後で探すとして、他に見落としてることは無いのかな?


「現地まではどうやって行くの?」

「ダンジョン内に馬は連れて行けないから、歩きになるわ」

「一日歩くの? しんどく無い?」

「一日ぐらいなら平気よ」

「エマさんも?」

「あっ、そうね。後の事を考えたら体力の温存は必要かしら。行きは馬車を出してもらって、帰りはいつになるか分からないから歩きかしら。最寄りの村で休憩ね」


「そう言えば…サーヤとカーラ、遅いわね」

「シエルさんが隣に控えているから、何かあっても大丈夫…のぼせたのかもね」


 予想通り、長湯し過ぎてのぼせた二人が頭を掻き掻きリビングに戻って来た。


「気持ち良すぎて…意識無くしちゃった」

とサーヤさんが頭を下げる。素直に謝るとは予想外だね。

 でもその言い方はチョイとやめた方が良くない?


「一度のぼせるのを経験したら分かるから。次は大丈夫だよ、ドンマイドンマイ」


 こう言う時は煩く言わない方が良いだろうね。初めてお風呂に入ったんだから、のぼせる感覚が分からなくても仕方ないんだし。


「でもお風呂のある家なんて狡い!

 誰だって毎日来たくなる!」

と欲望に割と忠実なカーラさんがアヤノさんと同じようにような事を言う。

 今度はさっきのブリュナーさんのセリフをアヤノさんが言ったけどね。


 四人が帰宅後、ブリュナーさんと情報の遣り取りをしてから自室に戻ってタイニーハウスの案を考える。

 ダンジョンの床が真っ平らとは限らないので水平を出す仕掛けを付けるか、下に土を敷き詰めて平らに整地するかだ。魔力の節約を考えれば前者、設置が楽なのは後者だ。

 取り敢えず前者を採用するか。


 次は九人が寝られるスペースだが、前回はベッドを出したままにしていたから偉い目に遭ったので、今回はベッド無しにしよう。代わりに床にコルクでも敷いて布団を乗せよう。

 勿論仕切りは付ける。ベルさんに彼女達が抱き着くのはちょっと赦せないし。

 

 ダンジョン内だから雨は降らない筈。だから今回は屋根続きのおトイレにする必要は無いだろう。


 キッチンは必須だね。お湯が沸かせるだけでも安心感が全然違ってくる。アイテムボックスに湯を入れとけって言われそうだけど、俺が居なくなる可能性だってあるし。

 水の出る魔道具はアイテムボックスに入っているから問題無い。


 問題はおトイレの処理だな。前回は地面に穴を掘って地下に落としたけど、ダンジョンに穴が掘れないのなら…マジックバッグか。

 でもマジックバッグは一人しか使えないって制限がある。

 一般的にはそう言われてるけど、マジックバッグには大きさ以外にもランクがあることが分かったんだ。


 俺が愛用していた肩掛け鞄がいつの間にかマジックバッグに変わってしまったって話をしたと思うけど、その肩掛け鞄を何度もアイテムボックスに出し入れしてると利用者の制限が外れたんだ。

 つまり誰でも出し入れ出来るマジックバッグになったってこと。

 勿体ないけど、この肩掛け鞄を汚物入れに使えばおトイレ問題はかなり解決する。

 問題はこの仕様のバッグがまだ一つしかないことで、現在こっそり次のバッグを製作中だ。



 翌日、いつものシゴキを受けた後にガルラ親方に会いに行った。


「おう、クレストさんじゃないか。熊を飼うってな?」

「今は子熊だからね。可愛いもんだよ」


 中身はオッサンだけどね。


「小さい間は何でも可愛いもんだ。

 て、今日は何の用だ?

 最近ウチを雑貨屋扱いしとるようじゃが」

「炭化コルクボードは建材に使えるから、その実験だよ。ノウハウを他の工務店に教えて良いなら、余所に頼むけど」

「雑貨屋も悪くないな!」

「でしょ? で、今日移動式の家の改造だよ。

 裏庭借りるよ」


 勝手に店の裏に回り、空いているスペースにポンとタイニーハウスと簡易おトイレを出す。


「スキルの噂は聞いとるが…本当にこんなデカイ物が入るとはな」

「マジックバッグと違って、入れる時に魔力を使うから何でも入れる訳にもいかないんだけどね」

と嘘を言う。どうせ誰にも検証出来ないんだし。


「この小屋をなるべく早く、こんな感じで…」


 夜のうちに書いた図面を親方に渡して説明すると、

「改造するより、三人用の小屋にして現地で連結の方が良くないか? 壁が間仕切りになるだろ。収容人数に合わせてスライドさせて広げるアイデアは面白いが操作が大変だ。

 クレストさんは地面を操る魔法が使えるそうだから、出す前に整地すりゃ連結も簡単だ。

 規格を合わせてキッチンの小屋、トイレの小屋を作れば必要な時に必要な物を出せば済む」

と地面に別の案を書き始めた。


 親方の考えたイメージはまるで車輪の無い寝台列車だったので、各小屋に車輪と連結装置を追加する。


「こうしたら馬車にもなるよね?」

「移動できる家か。兵士達が喜びそうだが…士官専用だな。だが悪くないか。あらかじめ走行するルートを整備しておけば…貴族はこれに飛び付くだろうな。

 馬車工房がなんと言うかが心配だが」

「それは後の話。俺用のキャンピング馬車はボルグスとモルターズで作ってもらってる最中だし」


 道路整備が終わったらカラバッサを見に行きたい。そっちの方が楽しみなので、なるべく早く工事を終わらせるつもりだ。


「聞いたぞ、金属フレームの馬車を作っているとか。よくあの二人が仲間になったもんだと感心したが」

「誠心誠意お願いしたからね」

「木の馬車は、いずれこの馬車に取って代わられると脅したんじゃあるめぇな?」


 ドキッ! バレてる…?

 でもそう言う発想が出てくるってことは、親方もカラバッサは売れると踏んでるってことかも。


「ぃやだなあ、脅したなんて。

 機会があれば、本人達に聞いてみてょ」

と言ってこの場では躱しておこう。

 馬車工房の経営が苦しかったことは、俺から言うようなことじゃないからね。

 でも確かにかなり脅したような気がする…。


 その後、少し雑談を続けているとラファクト鋼材店のマッチョマンのグレックさんが訪ねてきた。この工務店に納品の予定があったらしい。


「おう、グレック来たか」

とリアカーを引くグレックさんにガルラ親方が挨拶する。

「まいどあり。隣の人はビステルさんの連れてきた客だったか…タイタニウムのか」


 …あの、カラバッサに使う素材は一応が付くけど機密事項なんだけど。そう軽々しく言わないで欲しい。


「タイタニウム? 加工が難しいが…ビステルと組むなら扱えんこともないか。

 何に使ったのか…知らんが、豪気なことだ」


 その顔とその間、絶対ピンと来てるよね?

 タイタニウムの特製を知ってて、かつ俺が金属フレームの馬車を作ってるとか聞いたら結び付けない訳が無い。


「もう少しタイタニウムの単価が下がりゃ、儂も使いたいが鋼の六倍だったな」

「製錬に特殊な炉と鋼の何倍もの燃料と時間が掛かる。

 設備に投資してくれるなら割引き出来るかも知れんが、親父次第だ」

「ここもそんなに儲けちゃおらんぞ。工員を食わすのに精一杯じゃ」

「どこも同じだ」


 喋りながらドサドサと荷卸しすると、納品書と請求書を親方に押し付け、

「クレストさんだっけ? 頼まれていた手押しのパイプポンプが組み上がったんだが取りに来るか?

 仕様通りに最大揚程八メトルはいけるが、チョイとシンドイぞ。普通に使うなら二、三メトルまでだ」

と商売人にしてはぶっきら棒な物言いで聞いてくる。


「いや、これから外で仕事だから、家に運んでもらえる? ガルラ親方、興味あったらグレックさんに付き合ってみたら?

 新しい商品になるかもよ」

「そうじゃな…小屋の設計は後にするか。犬小屋みたいもんじゃ、すぐ出来る」


 寝台特急の車両が犬小屋みたいか。鉄道マニアが聞いたら烈火の如く怒りそうだな。

 後のことはブリュナーさんとシエルさんに対応を任せておけば大丈夫!

 さっさと道路整備に行きますか!

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