表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム×3+骸骨×1≒人間です。(リメイク版)【第一部として完結】  作者: 遊豆兎
第6章 登山の前にキチンと準備を整えよう
123/199

第97話 何故か浮気疑惑

 カミュウ魔道具で引き続き実験を続け、今度は扇風機擬きを利用して魔力を発生させることに成功した。

 これなら水車や風車を利用して大規模な発…魔…が出来るだろう。

 発電に対してなんて呼べば良い?


 漢字で表現しようとすれば、発、生、産、作、造、創と魔の組合せだよね。

 意味的には作が一番当てはまるので作魔?

 でも、これはかっこ悪いから却下だな。

 湧魔だと自然に湧き出ているイメージだから違うし。だから諦めて素直に魔力発生機(マナジェネレーター)と呼ぶことにしよう。


 名前が決まると直ぐさまイルクさんとカミュウさんがこの実験装置をバッグに詰め込み、魔道具ギルドに報告しに行くことになった。

 ここから研究が進めばドンドン効率的に魔力を作ることができるようになるかもね。

 そのうちどの家も屋根に風車を設置する時代が来るかも知れないよ。


 教会でお祈りしたし、魔道具も買ったし、予定外でエメルダ雑貨店にも寄ったし、これで今日の予定は終了かな。

 今日も厨房は使えないから、屋台で何か食べ物を買い込んで帰ろうか。


 と言って真っ先に来たのはいつもの串焼き屋台だ。お隣にパンケーキの屋台も出ている。


「おっ、兄ちゃんいらっしゃい…その別嬪さんは彼女かい?」

と串おじさんが勘違いした。

 勘違いされるのは毎度のことになりつつあるので、慌てることなく訂正出来るようになった。


「クレストさん、こんにちわ。材料が明日の午前に届くので、お昼から焼きに行こうと思うのですが大丈夫です?」

とクッシュさん。


「それならお昼からお願いします。ウチに何人か居るので手分けして焼きましょう」


 約三百枚の材料ってどれだけあるんだろ?

 それに魔道コンロだけで焼いてると何時間掛かるか分からないな。それならバーベキュー用の鉄板とか一式を数セット揃えて、同時に一気に焼いてしまおうか。

 いずれ石鹸作りのメンバーを集めてバーベキュー大会をする予定だから買っても無駄にならないし。


 それならついでにお肉も焼いて皆で食べようか。改築作業中の職人さん達も居るから、良い匂いをさせといて食べさせてあげないのは拷問みたいなもんだ。

 ヨシ、そうと決まればバーベキュー大会の準備を始めようか。

 幸い我が家の庭のスペースは余ってるんだし。


「材料は明日ブリュナーさんに運んで貰いますね。細かなことは全部あの人に任せてるので」


 マジで一家に一人、ブリュナーさんだ。


 オリビアさんには適当に料理を買いながら、子供達を連れて家に戻ってもらうことにして、俺は明日の買い出しに行くことにした。


 行き先はエメルダ雑貨店に入る前に一度脚を運んだルイーズ雑貨店だ。この店なら何でも揃うらしいから。

 気が向くままにアレコレと買い込み、中には不要な物も混じっているかもしれないが気にしないことにした。

 いざ必要となったときに困るより、アイテムボックスに入れて眠らせておけば邪魔にもならないし、精神的にも良い。問題は何が入っているのか把握しきれないぐらいだし。


 大量買いに店員さんも呆れたようだが、馬に蹴られたとでも思って諦めて欲しい。


 それから家に戻ると、冒険者ギルドからライエルさんとレイドルさんの貯水池視察が終わったので、次は一緒に行こうと要請が届いていた。

 それなら明日は予定を入れてしまったので、明後日しかない。その翌日からはカンファー家の山の調査に行ってるから。


 ブリュナーさんとシエルさんに、明日のお昼ご飯は庭でバーベキュー大会にすることとパンケーキを大量に焼くことを説明し、二人が呆れていたけどこれが『クレストクオリティ』だと諦めてもらおう。


 それから先に商業ギルドに行って三階の対策本部を訪ねる。


「クレスト切り込み隊長!

 私に会いに来てくれたのですね!」

と出迎えてくれるのは雑務係のスレニアさんだ。


「そんな役職は無いし、残念だけどスレニアさんに用事じゃないから」

「そんなクレストさんもクールで素敵です!」


 この人は足元を彷徨く子犬みたいな感じの邪魔具合だと思う。本人に悪気は無いけど、ちょっとそこ退()いてってやつだね。


「スレニア、お座り」

とレイドル副部長が言うと近くの椅子にさっと座ったので、俺の感想は皆の共通認識らしい。


「家の方に連絡した件だろ?

 明日か明後日しか無いが、明日にするか?」

「いえ、明日は昼からバーベキュー大会になったので、明後日でお願いします」

「はぁ? バーベキュー大会とはなんだ?

 いや、意味は知っているが」


 そりゃそうですよね。バーベキューも勇者達が広めた文化らしいし。


「バーベキューなら焼き肉のタレが絶品のお店がありますよ」

とイスルさんが胸ポケットからメモ帳を取り出そうとするので視線を逸らす。

 同じ過ちを繰り返してはいけない。

 ビリッと破った紙に、お店の名前と住所が買いてある。流石は出来る秘書だ。


「そこまであからさまに視線を逸らすのも如何なものかと」

と小言を言われたけどね。


「イスルンずるい!

 自分の匂いを付けようとしてるのねっ!」


 そうなのか?

 あいにく俺の鼻はそんなに良くは無いのだが。スレニアさんが俺の手からメモを取ると、推定Eカップの胸に押さえ付けてから俺の手に握らせた。

 スケベな爺さんなら喜びそうな行為だが、俺にはそんな趣味は無い。


「…。」


 部屋に居た男性職員達から何か無言のメッセージが届いた気がするが、何か喋れよ。

 黙ってちゃ分からんだろうが。


「あぁ、そうだクレストさん。

 教えてくれた買い物鞄の試作が出来ましたよ!」

とスレニアさんが嬉しそうにベージュ色の革の鞄を棚から取り出し、俺に披露し始める。


「だから、まだバーベキューの話が終わって無いのだが」

と珍しくレイドルさんがペースを崩されたらしく、微妙そうな顔をしている。

 どうやらスレニアさんは対レイドル兵器になりそうな予感。

 だが恐らく彼女は諸刃の剣だ。扱いを誤ると悲惨な目に遭いそうだから気を付けねば。


 レイドル副部長の声は完全無視で、彼女が作った鞄の説明が始める。

 外装、断熱用のコルク層、内装の三層構造で、熱々のスープが冷える早さが四分の一から五分の一程度になったそうだ。

 プレゼンが不充分なのか、職員さん達は買うなら値段次第かな、と言った印象のようだ。

 五分の一なら出勤前に入れたスープがお昼ご飯の時にはまだ熱々だと思われるから十分な性能だと思う。


 もし売りに出すのなら、『お昼ご飯に熱々のスープを』みたいなキャッチフレーズを付ければ売れると思う。

 特に冬場は役に立つだろうし、屋台の料理を買っても冷える前に家に戻れる。

 後はコルク層の厚みを増やし、外装と内装に使う革をもう少し保温効果のある物に変更すれば完璧な物になるだろう。

 断熱効果は製品開発部にテストをさせれば良い。

 価格は性能に応じて変えれば良い。


 いつの間にかそんな話を真剣にしていて、レイドル副部長が目を光らせていたのに気が付かなかった。


 そのレイドル副部長が来客対応で席を外した隙に、逃げるように商業ギルドを出る。

 バーベキューの話を根掘り葉掘り聞かれても困るので、有耶無耶のうちに終わらせるに限る。


 そして急ぎ足で冒険者ギルドに向かい、ドアを開けると既に混雑する時間を迎えていたようだ。

 今日はお昼ご飯を食べてから行動を始めたんだから当然だな。


 四席ある依頼処理のカウンターには行列が出来ていたが、用事があるのはライエルさんなので並ぶ必要は無い。

 行列を迂回し、執務室に入れてもらう為に一番右側の席に座っている受付嬢に声を掛けると姉御ポジションのミランダさんだった。

 俺を見るなり受付業務を中断して手招きをする。


「どうかしましたか?」

「今日、あんたが浮気しているのを目撃したって証言が複数入ってんだわ。

 どう言うこと?」


 はい? 浮気って何?

 俺、結婚なんてしてないし、付き合ってる女性も居ないよ。


「何故浮気と言われるのか分かりませんが、今日は昼から子供達と教育係の四人で雑貨店、教会、魔道具店に行きましたけど」

「教育係? その人は若い女性? 特別な感情とかある?」

「俺と同じくらいの年齢で…と言うか、ウチで雇っているオリビアさんですよ。

 パーティーを組むので仲間として接していますが」

「なんだ、あの子か。つまんないの」


 つまんないとか言わないでよ。ミランダさんを楽しませる義務なんて無いんだし。

 それより受付業務、やらなくて良いの?

 俺がカウンター前に立ってる冒険者から凄く睨まれてるんだけど。


「とりあえずグレー判定ね。ところで、うちのエマのことはどう思う?」

「エマさんですか? 可愛いと思いますよ。

 あ、これセクハラ発言か…今の無しで」

「それくらいならセクハラなんて言わないわよ。

 貴方が子供を連れて機嫌良く別の女と歩いていたって聞いて、今日はエマが元気なかったのよ。何とかしてくれないかしら?

 今日はもう帰ってるし、明日はお休みよ。

 はい、自宅はここだから慰めに行っといで」


 小さな羊皮紙にスラスラと住所を買いて俺に握らせる。


「職員のプライバシーを勝手に漏らして大丈夫なんですか?」

「どうせそのうち行き来するようになるんだから大丈夫。

 で、ライエルさんに用事でしょ。入っていいよ」

「はぁ、良く判らないけどそうします。

 でも何かあったら責任取って下さいよ?」

「じゃあ私も嫁になってあげるわよ」

「要りませんから。それ以外で…私も?

 も、ってなんですかっ!?

 俺にハーレムルートの予定なんてありませんよ!」

「ちっ、駄目か」


 ミランダさんの意図は判らないけど、明日は良い具合にエマさんが休みだからお昼のバーベキューに誘おうか。


 ミランダさんの嫁にして発言はいつもの冗談だと思うので軽く流せば良いけど、何でエマさんが元気無くなるんだろ?

 女性の考えってやっぱりよく分からないね。


 俺を睨んでいた冒険者にゴメンねと告げて、カウンターから奥に入る。


「中々こっちに来ないから心配したよ」

と執務室に顔を見せた俺にライエルさんがそう声を掛ける。


「こちらにも都合がありまして。

 それで明日は用事があるので、明後日に貯水池に行きます。先にレイドル副部長に会って話してます」

「明後日だね、了解した。

 私達の見解としては、貯水池周辺の開発で行けると踏んでいる。明後日なら領主館から一人ぐらい文官を貸して貰えるだろうね」


 予定だけ告げて帰ろうとした俺にソファに座れて手で合図された。仕方なく腰掛けを下ろす。


「それで山に行く支度は進んでいるかい?

 二週間分の食料と水、馬の飼い葉はマジックバッグに詰めておいて欲しい。

 後はテントや夜具は当然として、薪も持っとくと雨が降った時に役に立つ。

 そうそう、君はまだ討伐依頼を受けていないから渡していなかったね」

と言って渡されたのは、体育の授業とかで使うようなホイッスルだった。


「もしはぐれたり遭難したりしたら、その笛を吹くこと。

 かなり遠くまで聞こえる魔道具だよ。他の人は皆持っているから、誰がどんな音か確認しといてね」


 個体差を付けてあるホイッスルなのか。ドレミみたいな音の違いがあるんだろうね。


「現地では毎日ミーティングを行うこと。

 行動予定は共有化出来るように羊皮紙に書き出しておくこと。報告、連絡、相談はかかさずにね」


 ずっと山にいると日にちの感覚も無くなるし、慣れや焦りも出るだろうから、ミーティングは必要だよね。


「ウチから書記を一人付けるから仲良くしてあげてね。

 毎日調査した内容を書き残しておくと、もし君達で原因が掴めなかったとしても、やったこと、やらなかった事が次に派遣された人に分かるから無駄にならない筈だよ」

「なるほど、それで書記を付けるんですね。  何故かと疑問に思ってました。まさか監視役なんじゃないかと疑っててすみません」


 完全に信用した訳では無いが、理由としては述べられた事には納得がいく。


「ところで書記ってどなたですか?」

「心配しなくても、君に敵対しない人を選んでるよ。それ以上は今は秘密」

「ブルガノさんや患部の人で無ければ気にしませんよ」

「患部とは酷い言い方だね。間違ってはいないけどさ」


 そこは認めちゃいけないヤツだと思うのだけど。政治家みたいに嘘でも適材適所だと言わないと。


「ウチも人材難でね。事務仕事が出来てバランス感覚の良い人が居ないんだよ。

 君が幹部に上がってくれれば、こちらも助かるんだけどね」

「俺にそんな堅苦しいのは無理ですよ。

 もし幹部になるぐらいなら、リミエンを離れますから」

「そんな毛嫌いしなくてもよいと思うのだけど。最近多い、管理職にはなりたくないパターンの人だね。

 上に立つ才能があるのに勿体ない」


 日本だと責任がどうとか部下を持ちたくないとかで、平社員のまま過ごしたい人も少なくないとか。この世界にもそんな人が多いのか。


「君はブルガノにはかなり嫌われているから、彼女が退職するまでは気楽に過ごして貰おうか。

 君が歳を取ってから雇ってくれと言ってくるのを期待しているよ」

「多分そうはならないと思います」

「私も若い頃は君と同じような考えだったからね。三十も半ばを過ぎると、考えは変わって来るかもね」


 そんな先のことを言われてもどうしようも無い。きっとその頃には郊外に一軒家を建てて、果樹園か小さな牧場でもやってる気がする。


「過去の調査資料の写しは半分ぐらい終わってるかな。無駄になる可能性は高いが、出来ている物を持って行くと良い」

「では遠慮なく」

「じゃあ明後日は朝の十時(七時半)に出発しよう。遅れないようにね」


 調査資料を肩掛け鞄経由でアイテムボックスに収納し、ニコニコと手を振るライエルさんに軽く頭を下げて執務室を出ると、ミランダさんがすかさず、

「エマを頼んだわね」

と冒険者の対応をしながら短く言った。

「はい、顔を出してきますょ」

と答えてギルドを出る。


 もう夕方だけど、早めに会いに行こうと思ってメモを確認し、人に聞きながら目的地に辿り着いた。

 エマさんはギルドが運営する寮に住んでいた。

 寮の造りはよくあるワンルームマンションスタイルか。オートロックなんてものは無いので、玄関まで進むとゆっくりノックする。


「はーい」


 あ、エマさんの声だ。ちゃんと住所は合ってたよ。

 ガチャリとドアが開き、髪を下ろしているエマさんが顔を出した。


「えっ、クレストさん! どうして?」

と混乱するので、ミランダさんが住所を教えて早く行けと言われた経緯を説明する。


「むー、もうミランダさんったら!」

「元気が無いって聞いたから心配してたけど、大丈夫そうで良かったよ」

「…あの、別の女性と子供達連れて歩いてたとか」

「オリビアさんだよ。心配しなくて良いから」

「オリビアさん…か。…良かった」


 微妙な間があって、良かったと思っていないように思えるんだけど。


「あ、良かったらウチに来る?

 明日のお昼ご飯は庭でバーベキュー大会するつもりなんだ」

「行きますっ!」


 エマさんは少し落ち込んでた様子だったけど、やっぱりバーベキューの効果は抜群みたい。一瞬で元気になったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ