第二話「俺のスキルの秘密」
俺はその後、理解が追いつかないまま、眩い光に吸収されてここにいる。
周囲の人が巨人に見えた。
そう、ここは巨人と小人のファンタジー世界なのだ!!
と、思っていたのだが多分違う。
目線が低いし、赤子のようにあやされ乳を飲まされるから。
俺は、アーナトリス家三男に生まれたようだ。
年齢は0歳。この世界での俺の名前は、アーナトリス・ヴァルカン。兄は2人いて、アーナトリス・カイラ、アーナトリス・ミイラだ。
次男の名前がひどい……
ミイラって、確か包帯のオバケ(?)でしょ……
ここの家庭は普通の家庭とは違うと思っていたが、極めて普通だった。
ミイラとつける神経はともかく、父と母は、親切だ。
父は、アーナトリス・ヴァ・ロイ
母は、アーナトリス・エリナ
「ヴァ」とついてる理由は分からないが父の名前だけ、何故かかっこいい。
ヴァルカンも悪くはないが……
どうせなら、ヴァルキリーとかがよかった。
この世界の国々は120ほどあるようだ。
俺の国は八大恐国が密集している「神魔大陸」の最南に位置しているレイリー王国だ。
このレイリー王国は強い。
否、「強い」なんてレベルではない。
レイリー王国は世界最強と言われているそうだ。
何故か自国が強いと、鼻が高い。
世界最強だと言われる由縁は、最終戦争ヴァルハラで他の神々、魔物を蹴落としたからである。
レイリー王国の主力部隊「ゲルヴォン軍団」は大部分が人間。
なのに神や魔物に勝利するってどんだけ強いの!?
レイリー王国は唯一人間がいる国だと言われているから、大元帥ゲルヴォンも人間だと勘違いしてしまったのかもしれない。
俺もいつかはそのゲルヴォン軍に入りたいわけだが、そうするには試練がある。
それは、魔法属性が1つ以上で純ステータスが全て3桁以上、もしくは1つのステータスが4桁を超えているか魔法属性が2つ以上の場合のみ加入できる。
そうそう、ゲルヴォンが独断と偏見で判断して、合格とする場合もあるようだ。
ちなみに4桁は相当な強者らしい。
冒険者ランクで言うと、Aランクに相当するとか。
加入するためには、高スキル、高ステータスであることが重要。
頼むぞ、俺のステータスとスキルよ。
今日は俺のスキル鑑定の日だ。
この世界では、生後三ヶ月でスキルが決定するらしく、その日にスキル鑑定士が来て鑑定してもらう。
「あなた、楽しみね」
「そうだな」
なんか……緊張してきた。
「八尺瓊勾玉」とやらはこの世界では強い部類に入るのだろうか?
俺は、母の腕の中で思案していた。
「では、鑑定しますね」
スキル鑑定士が約束時間の30分前にきて、鑑定を始めてくれた。
よほど、楽しみだったのだろう。
苦しゅうない。
さっさと始めたまえ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息が荒い、鑑定士の腐ったような吐息がかかり俺は盛大に顔を歪めた。
「ステータス、及びスキルを発表しますね」
「はい」
父と母は、互いに目を見合わせて影の差した表情をしていた。
これって……
まさか……
ステータス
HP 99999
MP 30
攻撃力99999
防御力1
敏捷性2
知力200
固有スキル「八尺瓊勾玉」(SSS級)
固有スキル「クズ」(F級)
魔法属性「炎」(C級)
「氷」(D級)
「雷」(S級)
「水」(E級)
「風」(A級)
適正 魔法騎士
以上が俺のステータスだ。
ちなみにこれが平均的なステータス
(0歳)
HP 2
MP3
攻撃力1
防御力1
敏捷性1
知力3
魔法属性 通常1個(平均C級)
(成人)
HP100
MP200
攻撃力120
防御力150
敏捷性80
知力300
魔法属性 通常1個(平均C級)
両親、鑑定士、カイラとミイラは、目を見張り、絶句していた。
反応から推察するに、神童という枠には収まりきれないほどの器らしい。
「あなたのお子さんは、確かに大天才です」
鑑定士の目が曇る。
ちょっと……
やめてくれよ、次は何!?
「固有スキル『クズ』を鑑定したところ、自身の知力以外の能力値を99%ダウンさせるデバフスキルです。ちなみに、私が鑑定したステータスは、デバフ効果を省いています」
はぁ!?
ちょっと待て待て
俺は生まれてきたばっかだぞ?
なのに波瀾万丈の人生確定……
デバフとかいらねぇーよ!!
「でも、そのスキルは意図的に発動しなければ大丈夫でしょ……?」
そうそう、俺はそれが言いたかった。
「どうやら特定の条件はわかりませんが不規則的に、自動的に発動するようです」
「……」
「……」
母の閉じた目から、涙が頬を伝わる。
どこの世界でもそうだ。
母は優しい。
自分のために泣いてくれて
喜んでくれて
怒ってくれて……
お母さん、教えてくれよ。
なんで「クズ」スキルを俺に?
でも、元々死んでた身なんだ。
贅沢は言えないよな……
せめて両親を励まさないと
「ち……ちうえ、ははうえ……」
「ちょっと待って、あなたこの子話したわよ」
「そんなに胸に押し付けないで、勃ったらどうするんだよ」
「何、言ってんのあなた、この子赤ちゃんなのよ? 勃つ訳ないじゃない」
「あ……」
母の頬が、燃えるように紅潮する。
どんな下品なことを言っていたか気づいたのだろう。
「あなたの……あなたのせいなんだからね!!」
母が父の耳を引っ張る。
俺は知ってしまった。
耳を引っ張るときに母が身体強化魔法を使ってることに。
いくらなんでも耳を引っ張るときにわざわざ身体を強化するとか……尋常ではないだろ。
あれ……ちょっと待て。
わざわざ強化してるのではなく、これも自動的に強化されてるのではないか?
だとしたら……今すぐ教えてあげなきゃ!!
「しん……たいきょうかしてる」
「えーー!?」
おいおい、驚きすぎだろ。
赤ん坊の俺にだってこのくらいお安い御用なのに、こんなに驚かなくても……
「あなた、この子天才よ」
え? やっぱりそうなの?
「天才」何という良い響きだ……
俺は15年間、一度も「天才」どころか、良い通り名で呼ばれたことはなかった。
「ワースト一ノ瀬、ワースト一ノ瀬」と連呼されたことは今でも鮮明に記憶に残っている。
「うむ、天から授かった肉体があり、精神がある。確かに天才だ」
ナイフのような鋭い視線が父に刺さる。
家族よりも興奮している人物がいた。
その人物は過呼吸になって家の床間に倒れ、近くの病院騎士団に運ばれた。
後日、アーナトリス家は鑑定士が運ばれた「カイナン病院騎士団」に赴いた。
「鑑定士様、体調はいかがですか?」
「大丈夫ですよ」
その鑑定士は、口の端だけで笑っていた。
「それより……貴方に話したいことがあります」
「はい?」
「アーナトリス・ヴァルカン君の固有スキルがもう進化しました」
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