第1話 呪い
俺は今日呪いをかけられた。唐突にこんな話をしても誰も信じはしないのだろうが簡単に言えば余命1年を宣告されたようなもんだ。なぜそうなったのかは今から数時間前に遡る。
『那月!! お前は何回問題を起こせば気が済むんだ?! 高校にも面子ってもんがある。これ以上は先生たちも目を瞑っていられない。けじめ、つけれるよな?』
『はいはい、分かってるよ。辞めりゃいいんだろ? 高校生活も思ったよりつまんなかったしちょうどいいや、これ、退学届』
俺の名前は坂本那月、まあ世間でいうところの悪ガキだ。ついに今日退学になった。別に特に思う事もない。親父は出張ばっかで基本家にいないから怒られる事もないし、高校に行かなくたって大人にはなれる。
「はぁ..つまんねえなぁ..なんかおもしれえ事ことでもねえかなぁ」
落ちていた空き缶を蹴飛ばしながら適当にふらついていると廃れた神社を見つけた。
「お? 神社じゃん! ボロいし誰も居なさそうだな。
俺の別荘にでもしてやろうかな」
俺はそう言って今にも崩れ落ちそうな鳥居をくぐった。するとその時、突然神社の方から謎の閃光が襲ってきた。
「おい! なんだよ! こっちに飛んでくるぞ!! 」
当然、光の速さで飛んでくる物を避けることなんて不可能だった俺はその閃光を浴びた。
「うわぁ!って、ん?体は何ともねえぞ?いったい何が起きたってんだ?」
光は浴びたものの特に変わった様子は無く、気味が悪かった俺はその神社を後にすることにした。
「なんかよく分かんねえけど、気色悪りぃなここ、呪われてんじゃねえのか」
「ああ、呪われてるぞ」
神社を後にしようと後ろを振り返るとどこからか声が聞こえてきた。
「やっぱりそうだよな!どうりで気色悪りぃわけ、、、ん?、え?、、はぁ?! 」
声のする方を見てみるとそこにいたのは見たことの無い謎の生物だった。しかも宙に浮いている。
「今の、お前が喋ってないよな? 」
「んぁ? 喋っているのはわしじゃぞ。他に誰が喋ると? 」
ツッコミどころが満載すぎてどこからツッコめばいいか分からなかったが、何とか頭を整理して謎の生物に話しかけた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て、何で言葉を話せるんだ? そもそもお前何? 猫なの?何で宙に浮いてんだよ! 」
「少し落ち着いたらどうだ。わしはこの神社の守り神じゃよ。あとわしは猫じゃない、楔という名前がある。」
「落ち着けるわけねえだろ?! はぁ?! 守り神?!バカ言うんじゃねえよ!そんなんが存在する訳ねぇ!だったら、なんか神っぽいことしてみろ! 」
「無礼者が!! 守り神だと言っておろうが!そんなに信じられないと言うのなら見せてやる。とっておきのわしの秘技をな!! 」
自称守り神はそう言うと手を合わせ祈りを始めた。
「汝、この者に鬼の天罰を!! 」
「・・・・」
「おい、何にも起きねえじゃねえか、あ?やっぱお前絶滅危惧種かなんかの動物だろ! この自称守り神!!」
「あほか! 言葉を話す動物がおるか! 確かに顔は猫みたいかもしれんが正真正銘の守り神じゃい! まあよい、お前が信じようが信じまいがお主には呪いをかけた」
「呪い? どうせまたくだらないハッタリだろ! どんな呪いをかけたんだ? ほら、言ってみろ? 」
「1年以内にこの世に未練を残し去っていった死人を100人成仏させることができなければ死ぬという呪いだ。だからお主はこうして生きていてもわしを見ることができるのだ」
「ぷっ! くだらねえ!! 何だよその呪い、成仏?笑わせんじゃ」
俺がくだらない呪いだと自称守り神を貶したその時俺の頭上から何かが降ってきた。
(ガシャーーン!!)
「ぃってえなぁ、なんなんだいったい? 」
足元を見てみるとそこに落ちていたのはタライだった。
「ほーら言わんこっちゃない、鬼の天罰じゃよ。おとなしくわしのかけた呪いを解け。さもなくばお前は1年後に死ぬことになるぞ」
タライをくらい膝をついた俺はそのまま地面を見つめ、溜まっていた不満が体から溢れ出すかのように出てきた。
「くっそ、何だってんだよ。今朝から学校は退学になるし、上からタライは降ってくるし、挙げ句の果てに呪い? ふざけんじゃねえよ。何で俺がこんな目に遭わなきゃいけねえんだよ。俺が悪ガキだからか?何だってんだよ! 守り神なら答えてくれよ!!」
「人生というのはそういうものだ、山もあれば谷もある。お前は今谷底にいるのだ。生きていればまた山にやってくる。それの繰り返しじゃよ。なぜお前に呪いかけたのか知りたいのならその呪いを解く努力をしてみろ。さすれば自ずと理由が分かってくる」
「呪いかけたくせに一丁前に。完全に信じた訳じゃねえがお前がこの世の生物じゃねえってことは確かだ。お前の呪いで死ぬのは御免だし、この呪いは解いてやる。死んだ人間を成仏させりゃいいんだろ? やってやろうじゃねえか」
「その意気じゃ。今のお前は死んだ人間を見ることが出来る。まずは死人を見つけて声をかけてみろ。」
俺はまだこの楔とかいう守り神を信じた訳じゃないが、ハッタリだったらなんか珍しい動物の研究でもしている施設に高値で売り捌くつもりで一緒に神社を後にした。
そして今に至る。
「そもそも死人なんてどうやって見つけるんだ?」
「心配するな、あいつらならそこらじゅうにおる、生きた人間との見分け方と言えばそうじゃなぁ、、匂いだ。あいつらは少し変わった匂いがする」
「死人の匂いなんか知らねえっつの、てか、これでもし死人が見えなかったらお前を縛り上げてどっかの施設に売り捌くからな?」
山を降りていると誰かが切り株に腰掛けているのが見えた。
「おいおっさん、こんな山ん中で何してんだ? 」
「......ん?君、私が見えるのかい?」
「何言ってんだ? 見えるに決まってんだろ、お化けでもあるまいし、、お化け? まさか、冗談、だろ? 」
俺は楔の方を見つめた。
「うむ、お主の思っている通りじゃ、こやつは死んでおる」
「......はぁあ?!やっぱり俺、呪われてんのかぁぁ?!」
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