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5.これから



〜〜〜〜〜


前回はオリジナル魔法を完成させてしまったところまで話しましたね。

その続きからお話ししましょう。



"Niente"を完成させてしまったシレンは、もちろんその魔法を作るだけでなく使おうと企みます。まあそうでないと作りませんしね。



"それ"は決められた範囲内で発動する魔法でして、アルファリーナ中を覆うにはそれなりの音の力が集まる場所で発動しなければなりませんでした。その場所というのが、アルファリーナの中心に位置するピウスの森の最深部、滅多に人が立ち入ることが出来ないような古代遺跡ナリルファ。

当時はまだ遺跡ではなく、国中を見渡せるような高さの立派な塔が建っていましたけどね。


(ちなみに、ピウスの森っていうのはナギがこの世界で最初に降り立った場所だな。もう近づきたくはないだろうが、最終的には行くことになるんだ...)


解説ありがとうございます、オルガット。

まあそういう場所にあることだけ覚えておいていただければ大丈夫です。


アルファリーナ全体を覆える場所に目星をつけたシレンはそこに赴き、"Niente"を発動しようとします。が、そこに現れたのが、事に勘づいたソルヴィアでした。しばらく行方をくらましていた彼女は、この世界の魔法を分類する6つの属性のトップ達、ティアズと呼ばれる6人に師事して魔法のスキルを極め、シレンのオリジナル魔法に対抗するべく、こちらもオリジナル魔法を創り出していました。これが後にナギさんにも習得してもらうことになる6つの属性を組み合わせた唯一無二の究極魔法になります。

ちなみに、魔法の名前は記録に残っていませんが、歴代の英雄たちが習得する際にそれぞれの名前を付けていたようですね。


その究極魔法を創り出してティアズと共に現場へ駆けつけたソルヴィアでしたが、時すでに遅く、"Niente"は発動された後でした。


"Niente"が発動されたあと、アルファリーナは一時的に混乱状態に陥りました。音の力が失われたことによって、魔法が一切使えなくなってしまったのです。それにより、ティアズたちも魔法が使えない以上何もすることは出来ませんでした。そんな中でも1人だけ魔法が使えた人がいました。

ソルヴィアです。彼女の創り出した究極魔法は、彼女特有の漆黒の色をした魔力を使うのですが、この漆黒の魔力は様々な人々の魔力を凝縮して彼女の魔力によってまとめられた、すなわち濃縮された魔力なので、シレンの白き魔力にも対抗することができたのです。


自分の魔力だけが使えることが分かったソルヴィアは、自分やたくさんの人の魔力のこもったクリスタルをティアズに渡して七人の力を結集し、究極魔法を発動しました。

その瞬間、色を失ってモノクロに見えていた景色に鮮やかな色彩が戻り、人々は再び魔法を使うことができるようになりました。"Niente"の効果がなかったかのように元に戻ったのです。


~~~~~



「実際に魔法が使えなくなって国中が混沌に陥ったのはわずか数分のことだったようですが、今まで魔法によって支えられていた国にとっては数分でも命取りになってしまうものです。人々はその時の情景を決して忘れることが無いように記憶に焼き付け、塔から降りてきたソルヴィア達を称え、白の魔王&黒の英雄の伝説として後世まで語り継ぎましたとさ。

これが"黒の英雄伝説"の全貌です。ついてこれましたか?」


やっと長かった伝説語りが終わったようだ。まあ簡単に言えば、天才が秀才に負けてその悔しさを変な風に曲げた結果暴走して、それを更に力をつけた秀才側が撃退したってことか。短期間で準備してたソルヴィア凄いな。

ん?そういえば、


「結局、そのシレンはその後どうなったんだ?」


ヴィユークは、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。それを見たオルガットは、やれやれと言いたげな顔でため息をついている。


「シレンは"Niente"を使った反動を受けて塔の頂上で死亡していたのが見つかって、広場で死体を晒された後焼かれました。

いい気味ですよ...ま、アルファリーナを危機に晒したやつなんて、その辺の道端ででも野垂れ死ねばいいんです。この世から消えてくれた方が世のため人のためってね!」


...急にヴィユークがキャラ変した!?笑顔なのが逆に恐ろしくて、少し引いてしまう。オルガットはそれを知っていてため息をついていたのだろうか。


「悪いな、ナギ...こいつ、昔からなぜかお国愛と白の魔王への怒りがすごくてさ。研究進めてるとき、いつも故人に向かって「この世から消えろ」って笑顔で言いまくってたんだ...最近やっと落ち着いたかと思えばすぐこれだ。ため込んでただけだったみたいだな。成長したんだか、してないんだか...


おい、ヴィユーク。いい加減その笑顔で毒を吐くのやめてくれ!初対面の人の前でそれ出るとお前毎回引かれてるじゃねーか!ナギもびっくりしてるじゃんよ、そろそろもうちょい成長しろ!」


...やはりこの二人は常人ではないようだ。やり取り聞いてて今完全に確定した(オルガットはまだ常人枠でもいいが)。


「はぁ...せっかく伝説について話してるときは、俺の解説もほぼいらないぐらいにわかりやすーく話せるようになったって成長を感じてたんだけどなぁ...結局まだだめか。」


気苦労が絶えなさそうなお目付け役オルガットである。確かに話は分かりやすかったんだがな。っていうか本当にこの二人の年齢差1歳なのか!?

先程、話を中断したときに結構重要そうな話も聞こえたし、今一度はっきりさせておいた方がよさそうだ。


「ヴィユーク、もうそろそろ落ち着いてくれ。さっき話してた私のやることってなんなんだ?

白の魔王への怒りはどこか別のところに置いておけ。」


オルガットでは慣れすぎていたのか、ヴィユークは私の言葉でやっと我に返った。


「はっ!?すみません、私のブラックサイドが露出していたようで...ナギさんにしていただく事についてでしたね。

ナギさんには、これから各地にいる現代のティアズのもとに赴き、各属性の魔法を極めていただきます。

まあ極めると言っても、その属性の上級魔法を習得すればいいだけですけど。ひとまずはこの王宮に滞在し、旅支度をしつつ水属性と光属性を極めていただくことになります。かなり遠いところに住む者もいますからね...」


なんかこれまた大変そうな...っていうかもう始まるのか。とりあえず誰か、私に属性に関する知識をくれ。ぱっと聞いた感じだと現代(あっちのゲームに出てくるのとそんなに変わらない気がするが、具体的にわかってもいないものを理解するのは至難の業だしな。



「属性については俺から説明しよう。」


おお、頼もしいオルガットさん。っていうか、私の心読んだのか!?


「この世界の魔法は、炎・水・風・光・闇・命の6つの属性に分類されるんだ。それらを組み合わせたりして様々な魔法を操ることになる。それぞれの属性を極めたトップのやつら、ティアズにはそれぞれそいつ特有の二つ名があってな。一つずつ解説していこう。」


どこぞの怒りが蓄積しているブラックプリンスよりも断然頼もしいじゃないかw


「まず炎だ。トップは"猛々しき炎のヒーティア"と呼ばれている、フィソール・アウギス。東の方にある火山の麓に住んでる。まあ二つ名からわかるように、火に関する魔法を司っている。こいつは遠いし、一番最後でいいだろ。俺アイツの事そんなに好きじゃないし。本当は行きたくないっていうのが俺の本音。まあでも全属性制覇しなきゃいけないし、仕方なく。ではないな、俺も()()()()()()ついていくよ...」


最後でいいんだ。ってか、オルガットの好き嫌いじゃないかwまあ火山って行くのが大変そうだからっていうことにしておこう。


「次に水。トップは"大らかなる海のウォーティア"と呼ばれている、オルガット・ジュライシー、まあ俺だ。基本王宮でヴィユークと一緒に暮らしてるし、初心者にもやりやすいってことで最初に極めることになるだろうな。水に関する魔法を司っている。風属性と相性が良くてな、組み合わせることが多いんだ。」


サラッと暴露してくれるな...目の前にそんなすごい人がいたのか。やはり多少でも知ってる人だと安心する。


「その次に、さっきちらっと言った風だ。トップは"爽やかなる海風のウィンディア"と呼ばれている、マレイ・ジュライシー。俺の妹だ。風とか、空気に関する魔法を司っている。王宮のすぐ近くの森に住んでるから、ここを出たら次に行くことになるだろうな。」


なんと、オルガットに妹がいたようだ。まあなんとなく想像はついたが。それにしても、兄妹で魔法を極めたトップってすごいな...オルガットの妹となると話しやすそうだ。同年代な気がするし、今までで一番期待できる。


「次が光だな。トップは"麗らかなる春のブライティア"と呼ばれる、ヴィユーク・エルフィ・アルファリーナ、隣で優雅に紅茶を飲んでるこいつだ。光に関する魔法を司っている。ヴィユークはこう見えて意外とすごいぞ?水を極めたら次はこいつの世話になるわけだ。」


「こう見えてとか意外とってどういうことですか!?見るからに凄くないんですか!?」


まさかこの一見ただのイケメン王子な人が極めてるのか...世の中とはわからないものだと改めて実感する。本人のツッコミはさておき。


「光ときたら次は闇だ。トップは"夜空を染めし漆黒のダークィア"と呼ばれている、ノクルムとノクルナ。双子でダークィアをやっているんだ。闇とか負の感情に関する魔法を司っている。まだ9歳と幼いが、この二人にかかれば心理操作もお手の物だ。いる場所は距離的にもそんなに離れてないから、早い段階で行けると思う。」


ここだけ二つ名と人が合っていないような気がするんだが...9歳の子供の二つ名のはずなのに思いっきり中二病感がすごい。背伸びしているような双子なのか、闇属性だからそうなっただけなのか...後者であることを望む。


「最後が命だな。トップは"万物を創りし根源のライフィア"と呼ばれている、シクリア。生命に関する魔法、まあ草とか土とかだな、そういうのを司っている。回復魔法もここだ。さっきはいろいろ言ってたけど、なんだかんだ言ってこいつが一番行きづらい場所に住んでてな。たぶんこっちが最後に行くことになるだろうな。」


命属性って聞いたことがなかったが、まあ木と土を組み合わせたようなものか。ちょっと理解できた。


「ざっと説明するとこんな感じだ。早速明日から水の特訓始めるからな!と言っても、たぶん明日は現段階でナギがどれだけ魔法を使えるか確認して終わるだろうな。」


「そんな簡単に使えるものなのか?w今まで物語の中の存在でしかなかったから実感がわかないんだが...」


さっきまでシュンとしていたヴィユークが瞳の輝きを取り戻した。


「まあ大切なのは"自分はやれる"って思うことですよ。病は気からって言うでしょう?それと同じです。心と能力は密接に結びついているのですから。」


なんか、やっとまともな王子様が戻ってきたな。さっきまでのブラックサイドはどこに吹き飛んだのやら...国民は国の第二王子がこんな一面を持っていることを知っているのだろうか...?まあいいか。私がそんなことを思うのも無駄な心配だと言えよう。その辺はお目付け役であるオルガットに任せるとして。


それよりも、今は自分の置かれている状況を考えなくては。明日いきなり、使ったこともない、ましてや使うことを想像すらしたことがなかった魔法を使わされるというのだから。自分がどのくらいできるのかさえも分からないものだし、とりあえず明日に備えなくては。


「とりあえず、明日のために備えるか。手始めに、これからしばらく生活してもらう部屋に案内しよう。

ヴィユーク、今空いてる部屋はどこだ?」


「今なら来客もないですし、どこでもいいですよ。ナギさんなら、アウィンの間とかはどうでしょうか」


おお、何という美しい響き...ただ単にアウィン(アウイナイトの別名)が好きなだけなのだが。

そんな魅力的な部屋があるのか...そういえば来たときに思ったけど、ここの部屋の名前も「パライバの間」だったな。だから家具がパライバトルマリンの色で揃ってるのか。

とまあ宝石マニアの知識は置いといて。


「確かにいいな。って俺の隣室かいw

ナギさえよければそこでいいか?」


他にどんな部屋があるのか知らないし(おそらく宝石の名前が付いた部屋ばかりだろうが)、オルガットの隣室というのもなんかちょっとボディーガードみたく思えるので、悪くない。アウィンだし。


「ありがとう。その部屋でいいよ。」


「んじゃ、さっそく案内しよう!キンバー用の猫ちぐらも用意させておくよ。」


そういえば猫がいたんだったwヴィユークの長い話に飽きたのかいつの間にか私の膝の上で眠っていたため、温かかったのも相まって、手触りの良いブランケットと勘違いしてしまっていた。

至れり尽くせり。


この場に留まるというヴィユークに別れを告げ、オルガットに続いて席を立つと、彼に案内されながら城内を歩く。部屋がいくつもあって、すぐに迷ってしまいそうだ。オルガットは迷わずその道中を歩いていき、角から二番目の部屋の前で立ち止まる。


「ここがナギの部屋、アウィンの間だ。隣の角が俺のいるサファイアの間だから、何かあったら来るといい。ま、何もないことを願うけどな。部屋の中を見たら、ちょっと出かけるから、すぐ出ておいで。俺は外で待ってる。」


そう言われて、私は恐る恐る扉を開けて中に入ると、思わず感嘆の息が漏れる。そこは一面、アウイナイトと同じような透明感のある青に包まれていた。ところどころに差し色として入っている白も青の美しさを引き立てる。そんな美しい青に包まれた部屋で寝泊まりができることの幸せをかみしめながら、部屋の外で待っているオルガットに悪いと思い、惜しみつつも部屋を出た。これからしばらくはここで暮らせるのだ。惜しむ必要もなかった。

外で待っていた彼は、長い足を絡ませ、壁にもたれかかりながら鼻歌を歌っていた。しかし私が出てきたことに気づくと、爽やかな笑顔を見せた。


「部屋はどうだった?」


「一言で言うと、最高、だな。私ごときがあんな良い部屋を使わせてもらえるなんて、申し訳ないくらいだ。」


オルガットは軽く笑った。


「っははw大層お気に召したようで、何よりだ。"私ごとき"なんて、自分をそんなに過小評価しなくていいんだぞ?まだ実感ないかもしれないが、ナギはこの国の英雄の生まれ変わりなんだからな。それを知らずに俺の妹として扱う人たちも、それなりにナギのことを評価してくれるはずだし、自信持てよ!」


英雄か...故郷ではそんな存在すらいなかったため、未だに実感はほぼないと言っていい。

もし自分にその才能が無かったら...なんて思うと考えが尽きなくなってしまう。今までにここまで私がネガティブ思考になっていたことがあっただろうか。"英雄"という今までのしかかったことのないくらいの重圧が私をそうさせているのだと思う。

まあ気持ちを切り替えていかなければ、この世界では生きていけないだろうな。そう自分に鞭を打ち、奮い立たせる。自分にとっての最大の武器である音楽がここまで生かせるところはそうそうないのだから。逆手にとって、英雄として活躍してやろう。そう思えば、なんとなくネガ思考は収まってきた。


「次は服だ。いつまでもその服装で旅をするわけにもいかないしな、動きやすい服を買いに行こう。街に降りるぞ!」


確かに、今の今まで高校の制服だったことを思い出す。この世界にこの制服を持っている人はいないと思うが、ちょっと私の気分が乗らない。いやだって、せっかく異世界来たのに服は学校の制服って、すごく雰囲気なくなりません?もし向こうに戻れた時、ボロボロだと面倒なことになりそうだし。

というわけで、私、神谷ナギは初めての町でイケメンとショッピングデート(?)である。

どんどん一話ごとの文字数が多くなっている気が...

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